「今年の夏も暑くて、もうバテバテ……」 「うなぎが夏バテにいいって聞くけど、本当に効果があるの?」 そんな悩みを抱えながら、毎年夏の疲れと格闘している方も多いのではないでしょうか。
うなぎは古くから夏バテ防止の食材として愛され続けてきましたが、実は薬膳の視点からも理にかなった優秀な食材なのです。ただし、体質や食べ方によっては逆効果になることもあります。
この記事では、夏バテの原因から体質別のうなぎの取り入れ方、安全に楽しむための注意点まで、薬膳と栄養学の両面から詳しくお伝えしていきます。今年の夏は、うなぎの力を正しく活用して、元気に乗り切ってみませんか!
夏バテの原因と症状|なぜ体がだるくなるのか?
夏バテを効果的に防ぐためには、まずその原因と症状をしっかり理解することが大切です。なんとなく「暑いから疲れる」のではなく、具体的なメカニズムを知ることで適切な対策が立てられます。
夏バテを引き起こす3つの主な原因(暑さ・冷房・食欲不振)
夏バテの原因は、主に3つの要因が複合的に作用して起こります。
まず「外気の暑さ」です。気温が体温に近づくと、体温調節のために大量のエネルギーを消費し、同時に汗をかくことで体内の水分やミネラルが失われていきます。この状態が続くと、体力が著しく低下してしまうのです。
次に「冷房による温度差」も大きな要因。外の暑さと室内の涼しさの温度差が5度以上になると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。体温調節機能が混乱し、疲労感や頭痛、肩こりなどの症状が現れがちです。
そして「食欲不振による栄養不足」。暑さで胃腸の働きが鈍くなり、冷たいものばかり摂取することで消化機能がさらに低下します。必要な栄養素が不足すると、体力回復が追いつかなくなってしまいます。
夏バテによくある症状チェック(だるさ・頭痛・不眠・胃腸の不調)
夏バテの症状は人それぞれですが、代表的なものをチェックしてみましょう。
全身のだるさや疲労感は最も一般的な症状です。朝起きても疲れが取れない、午後になると極端に体が重くなる、といった場合は夏バテの可能性が高いでしょう。
頭痛やめまいも頻繁に起こります。特に冷房の効いた室内から外に出たとき、または外から冷房の中に入ったときに症状が悪化しやすいです。
睡眠に関する不調も見逃せません。寝苦しくて眠れない、眠りが浅い、夜中に何度も目が覚める……これらは体温調節がうまくいかないことで起こります。
さらに、食欲不振、胃もたれ、下痢、便秘といった胃腸症状も典型的。冷たいものの摂りすぎで胃腸が冷え、消化機能が低下することが原因です。
薬膳の視点から見た「夏の不調」の捉え方(気虚・陰虚・湿邪)
薬膳では、夏バテの症状を体内のバランスの乱れとして捉えます。
「気虚」は、生命エネルギーである気が不足している状態。疲れやすい、食欲がない、汗をかきやすいといった症状が特徴で、現代の夏バテ症状とよく一致します。
「陰虚」は、体を潤し冷やす陰の気が不足した状態です。ほてり、のぼせ、口の渇き、寝汗、イライラなどの症状が現れ、クーラー病の症状にも似ています。
「湿邪」は、体内に余分な湿気が溜まった状態を指します。体が重だるい、むくみやすい、胃腸の調子が悪いといった症状で、高温多湿な日本の夏によく見られる不調パターンです。
これらの薬膳的な診断に基づいて食材を選ぶことで、より効果的に夏バテを防げるのです!
うなぎが夏バテ防止に良い理由|栄養学と薬膳の両面から解説
「土用の丑の日にうなぎ」という習慣は、実は科学的にも薬膳的にも理にかなっています。その根拠を栄養学と薬膳の両方の観点から詳しく見ていきましょう。
栄養学から見るうなぎ(ビタミンB群・A・E・D・DHA/EPA)
うなぎの栄養価の高さは、現代の栄養学でも高く評価されています。
特に注目すべきはビタミンB1の含有量。うなぎ100gあたり0.37mgものビタミンB1が含まれており、これは他の魚類と比べても群を抜いた数値です。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変える際に必要不可欠で、不足すると疲労感や食欲不振を引き起こします。
ビタミンAも豊富で、100gで成人男性の1日必要量を軽く超える量が含まれています。粘膜の健康維持や免疫力アップに欠かせない栄養素です。
さらに、抗酸化作用の強いビタミンE、骨の健康に重要なビタミンD、脳の働きを活性化するDHAやEPAも豊富に含有。これらの栄養素が相乗効果を発揮することで、夏の疲れた体を効率よく回復させてくれます。
薬膳的に見るうなぎ(五味五性・帰経・補気補血の効能)
薬膳の理論でうなぎを分析すると、その優秀さがさらによくわかります。
うなぎの性質は「温性」で、体を適度に温める働きがあります。夏場でも冷房や冷たいものの摂取で体が冷えがちな現代人には、まさにぴったりの性質です。
味は「甘味」に分類され、脾胃(消化器系)を補う作用があります。食欲不振や消化不良を改善し、栄養の吸収を高めてくれるのです。
帰経(どの臓器に作用するか)は、主に肺・脾・腎。肺は呼吸器系と皮膚、脾は消化器系、腎は生殖器系と水分代謝を司り、これらすべてに良い影響を与えます。
効能としては「補気補血」が代表的。気(エネルギー)を補い、血(栄養と酸素を運ぶ)を増やす働きがあり、まさに夏バテで不足しがちな要素を補ってくれるのです。
うな丼が理にかなう理由|糖質×ビタミンB1の相乗効果
うなぎの蒲焼きをご飯にのせた「うな丼」は、栄養学的に見ても非常に理想的な組み合わせです。
ご飯などの糖質は、体を動かすための即効性のあるエネルギー源。しかし、糖質をエネルギーに変換するためには、ビタミンB1が必要不可欠です。糖質だけを摂取してビタミンB1が不足すると、かえって疲労感が増してしまうことも。
うなぎは先述の通りビタミンB1が豊富なので、ご飯と一緒に食べることで糖質を効率よくエネルギーに変換できます。これにより、疲労回復効果が格段にアップするのです。
また、うなぎの脂質は消化にエネルギーを使うため、ご飯の糖質がゆっくりと吸収されて血糖値の急激な上昇を防いでくれます。食後の眠気も軽減され、午後の活動もスムーズに行えるでしょう!
体質別・うなぎの取り入れ方|胃もたれしやすい人への工夫も
うなぎの効果を最大限に引き出すためには、自分の体質に合わせた食べ方を知ることが重要です。薬膳では同じ食材でも、体質によって最適な取り入れ方が変わってきます。
気虚タイプ(疲れやすい・食欲不振)に合う食べ方
気虚タイプの方は、エネルギー不足で疲れやすく、胃腸の働きも弱っている傾向があります。
このタイプには、うなぎを温かい状態でゆっくり食べることをおすすめします。冷めたうなぎは消化に負担をかけるため、蒸し器で温め直したり、お茶漬けにしたりして体温に近い温度で摂取しましょう。
また、一度に大量に食べるよりも、少量ずつ数回に分けて摂るのが効果的。胃腸に負担をかけず、栄養を効率よく吸収できます。
うなぎと一緒に、山芋や大根おろしなど消化を助ける食材を組み合わせるのもよいでしょう。これらの食材は気を補う働きもあるため、相乗効果が期待できます。
陰虚タイプ(ほてり・喉の渇き)に合う食べ方
陰虚タイプは体に熱がこもりやすく、のぼせや口の渇きを感じやすい体質です。
うなぎは温性の食材なので、このタイプの方は食べ方に工夫が必要。タレを控えめにしたり、さっぱりとした酢の物や冷たい豆腐と組み合わせたりして、体を冷やす食材とバランスを取りましょう。
きゅうりの酢の物、トマトのサラダ、冷奴などを付け合わせにすると、うなぎの温める性質を和らげつつ、栄養バランスも整います。
また、食後は緑茶や麦茶など、体の熱を取る飲み物を選ぶのがおすすめ。冷たすぎない常温程度が胃腸に負担をかけません。
胃腸が弱い人におすすめの軽い調理法(茶漬け・酢の物と合わせる)
胃腸が弱い方や高齢の方は、うなぎの脂分が負担になることがあります。
そんなときは「うなぎ茶漬け」がおすすめ。うなぎを小さくほぐしてご飯にのせ、熱いお茶やだし汁をかけることで、脂分が分散されて消化しやすくなります。梅干しや海苔を加えると、さらに消化が促進されるでしょう。
また、うなぎを酢の物と一緒に食べるのも効果的。酢は脂の分解を助け、胃もたれを防いでくれます。きゅうりやわかめの酢の物を付け合わせにしてみてください。
調理法としては、蒲焼きよりも白焼きの方が脂分が少なく、胃腸に優しいです。白焼きに軽く醤油と生姜を合わせたタレをかけるだけでも、十分美味しく頂けます!
おすすめの食べ合わせと薬膳レシピ例
うなぎの効果をさらに高めるには、薬膳的に相性の良い食材と組み合わせることが大切です。消化を助け、栄養の吸収を促進する食べ合わせをご紹介していきます。
山椒や生姜で消化を助ける組み合わせ
うなぎの蒲焼きに欠かせない山椒は、実は薬膳的にも理にかなった組み合わせです。
山椒は「温性」で「辛味」を持ち、気の巡りを良くして消化を促進する働きがあります。うなぎの脂分による胃もたれを防ぎ、栄養素の吸収を助けてくれるのです。
生姜も同様に、胃腸の働きを活発にする効果があります。すりおろした生姜をうなぎのタレに少し混ぜたり、千切りにした生姜を薬味として添えたりすると、消化不良を防げます。
ネギや大葉なども気の巡りを良くする食材として活用できるでしょう。これらの薬味をうなぎと一緒に摂ることで、重たい印象のうなぎ料理も軽やかに楽しめます。
とろろ・豆腐・大葉と合わせたさっぱり薬膳小鉢
うなぎをメインにしつつ、胃腸に優しいサイドメニューを作ってみましょう。
とろろは山芋から作られ、消化酵素が豊富で胃腸の働きを助けます。薬膳的には「気を補う」食材として重宝され、うなぎとの相性も抜群です。とろろにうなぎの切り身を少し混ぜ、だし汁で伸ばしてさらっと食べられる一品にしてみてください。
絹ごし豆腐は「涼性」で体の熱を取り、うなぎの温性とバランスを取ってくれます。豆腐の上に細かくほぐしたうなぎをのせ、大葉の千切りと生姜のすりおろしを散らせば、さっぱりとした薬膳小鉢の完成です。
醤油ベースの軽いタレをかけると、夏でも食べやすい一品になります。
夏にぴったり!薬膳うなぎ茶漬け・冷汁レシピ
暑い夏でもうなぎを美味しく食べられる、さっぱりレシピをご紹介します。
薬膳うなぎ茶漬け:うなぎの蒲焼きを一口大にほぐし、ご飯の上にのせます。そこに昆布だしベースのお茶(煎茶や玄米茶)を注ぎ、梅干し、海苔、白ごまを散らします。梅干しの酸味が消化を促し、海苔のミネラルが夏バテを防いでくれるでしょう。
うなぎ入り冷汁:だし汁に味噌を溶き、すりごまと生姜のすりおろしを加えます。きゅうりの薄切り、豆腐の角切り、うなぎの細切りを加えて冷蔵庫で冷やし、ご飯にかけて頂きます。宮崎の郷土料理をアレンジしたもので、暑い日でもさらりと食べられて栄養満点です。
どちらも15分程度で作れる手軽さも魅力的!
食べすぎ注意!うなぎを安全に楽しむためのポイント
体に良いうなぎですが、食べすぎや間違った摂取方法では逆効果になることもあります。安全に楽しむための注意点をしっかり確認していきましょう。
摂取量と頻度の目安(週1回程度が理想)
うなぎは高カロリー・高脂質の食材なので、適量を守ることが重要です。
一般的な成人の場合、一回の摂取量は100g程度(市販のうなぎ蒲焼き1尾分)が適量とされています。これは約300kcalに相当し、ご飯と合わせると一食で500-600kcal程度になります。
頻度については、週に1回程度が理想的。毎日食べると脂質の摂りすぎになり、かえって胃腸に負担をかけてしまいます。また、ビタミンAは脂溶性ビタミンのため体内に蓄積されやすく、過剰摂取は肝機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
「土用の丑の日」のように、特別な日に適量を楽しむというのが、昔の人の知恵だったのかもしれません。
タレの糖分・塩分を抑える工夫
うなぎの蒲焼きのタレは美味しいですが、糖分と塩分が高めです。
タレを減らすには、うなぎを湯通しして余分なタレを落としたり、白焼きを選んで自分でタレの量を調整したりする方法があります。手作りタレなら、みりんの量を減らして酒や昆布だしで薄めることで、糖分を控えめにできるでしょう。
また、タレの代わりに醤油と生姜、わさび醤油、ポン酢などであっさりと味付けするのもおすすめ。うなぎ本来の味を楽しめるうえ、塩分や糖分も大幅にカットできます。
レモンや酢などの酸味を加えると、少ない調味料でも満足感が得られて、消化も促進されます。
胃もたれ・アレルギー・妊娠中に注意すべき点
うなぎを食べる際には、いくつかの注意点があります。
胃もたれしやすい方は、一度に大量に食べず、よく噛んでゆっくり摂取することが大切です。食前に大根おろしを少し食べておくと、消化酵素が胃の準備を整えてくれます。
魚介類アレルギーの方は注意が必要。特に、うなぎアレルギーは稀ですが存在するため、初めて食べる際は少量から試してみてください。
妊娠中の方は、ビタミンAの過剰摂取に注意が必要です。妊娠初期(特に妊娠3ヶ月まで)は、胎児の発育に影響を与える可能性があるため、頻繁な摂取は控えるようにしましょう。
また、生や半生のうなぎには寄生虫のリスクがあるため、必ずしっかりと加熱調理されたものを選んでください!
うなぎが苦手・高いときの代替食材と薬膳的な選び方
うなぎが苦手だったり、価格的に頻繁には食べられなかったりする場合でも、薬膳的に似た効果を得られる代替食材があります。賢く活用して夏バテ対策をしていきましょう。
サバ・イワシ・豚ヒレなどの代替例
うなぎと同様に「補気補血」の効果がある食材をご紹介します。
サバは「温性」でDHAやEPAが豊富、ビタミンB群も含まれているため、うなぎに近い効果が期待できます。塩焼きや味噌煮にして、生姜や大葉と組み合わせるとより薬膳的な効果がアップします。
イワシも優秀な代替食材。カルシウムやビタミンD、ビタミンB12が豊富で、血を補い骨を強くする働きがあります。梅干しと煮込んだり、つみれ汁にしたりすると消化にも良いでしょう。
意外かもしれませんが、豚ヒレ肉も薬膳的にはうなぎと似た効果があります。「平性」で脾胃を補い、ビタミンB1が豊富。疲労回復効果も高く、価格的にも手頃なので日常的に取り入れやすい食材です。
代替食材でも薬膳的に”補気・補血”を意識する
代替食材を選ぶ際は、薬膳的な効能を意識することが重要です。
「補気」(エネルギーを補う)効果のある食材:穀類(米、麦、とうもろこし)、豆類(大豆、黒豆、あずき)、根菜類(山芋、じゃがいも、人参)、鶏肉、牛肉など。
「補血」(栄養を運ぶ血を増やす)効果のある食材:レバー、赤身肉、カツオ、マグロ、ほうれん草、黒きくらげ、ナツメ、クコの実など。
これらの食材を組み合わせることで、うなぎに近い薬膳効果を得られます。たとえば、豚ヒレ肉の生姜焼きにほうれん草の胡麻和えを添えるだけでも、立派な薬膳メニューになるのです。
缶詰や惣菜を使った簡単アレンジ法
忙しい日常では、缶詰や惣菜を上手に活用することも大切です。
サバの水煮缶は、そのまま食べても十分薬膳効果がありますが、大根おろしと生姜を加えて温めると、より消化に良くなります。トマトと玉ねぎを加えて洋風にアレンジしても美味しく、夏バテで食欲のないときでも食べやすいでしょう。
イワシの蒲焼き缶は、うなぎの代用として丼ものにしたり、お茶漬けの具材にしたりできます。山椒や七味唐辛子を振りかけることで、本格的な薬膳風味が楽しめます。
コンビニの焼き魚や惣菜コーナーのサバの塩焼きも、薬味を工夫することで立派な薬膳メニューに。大葉、生姜、レモンなどを組み合わせて、夏にぴったりのさっぱり薬膳を作ってみてください!
まとめ
うなぎが夏バテ防止に効果的なのは、豊富なビタミンB群や薬膳的な補気補血の働きがあるからです。ただし、体質に合わせた食べ方や適切な摂取量を守ることが、その効果を最大限に引き出すポイントになります。
気虚タイプなら消化に配慮した温かい食べ方を、陰虚タイプなら体を冷やす食材との組み合わせを意識してみてください。また、山椒や生姜などの薬味を上手に活用すれば、胃もたれを防ぎながらうなぎの栄養を効率よく吸収できます。
うなぎが苦手だったり高価で手が出なかったりする場合でも、サバやイワシ、豚ヒレ肉などの代替食材で同様の薬膳効果が得られることも覚えておきましょう。大切なのは、自分の体質と体調に合わせて、無理のない範囲で夏バテ対策を続けることです。今年の夏は、薬膳の知恵を活かして元気に乗り切ってくださいね!