「魚介の出汁を使ったスープって、薬膳的にはどんな効果があるの?」 そんな疑問を持ちながら、なんとなく魚介出汁を使っている方も多いのではないでしょうか。
魚介の出汁は薬膳において「気血を補い、脾胃を整える」優れた食材として重視されてきました。その深い旨味は単なるおいしさだけでなく、体に栄養を届け、消化を助け、疲労を回復させる働きがあるとされています。さらに、季節や体質に合わせて魚介を選ぶことで、より効果的に体調を整えることができるのです。
この記事では薬膳の視点から魚介出汁の効能を詳しく解説し、失敗しない出汁の作り方や、体調別のスープレシピまでお伝えしていきます。 魚介出汁の薬膳パワーを最大限に活かして、毎日の食卓から体を整えていきましょう!
薬膳の視点で見る「魚介出汁」──体を整えるうま味のチカラ
魚介の出汁は日本料理の基本であり、私たちの食生活に欠かせない存在です。薬膳の観点から見ると、この出汁には体を整える様々な働きがあるとされています。
ここでは、魚介出汁が持つ薬膳的な効能と、その理論的な背景をお話ししていきます。
魚介出汁は「気血を補う」「脾胃を整える」食材
薬膳において、魚介出汁は「補益類」に分類される食材です。
気血を補うとは、体のエネルギーである「気」と、栄養を運ぶ「血」を増やすこと。魚介に含まれる良質なたんぱく質やアミノ酸が、気血の材料となります。特に出汁として抽出することで、これらの栄養素が水溶性の形で吸収されやすくなるのです。
慢性的な疲労感、顔色の悪さ、集中力の低下などは、気血不足のサイン。魚介出汁を使ったスープを継続的に飲むことで、徐々にこれらの症状が改善されていきます。
脾胃を整えるとは、消化吸収の機能を高めること。薬膳では「脾胃は後天の本」とされ、健康の基礎となる臓器です。魚介出汁の旨味成分が食欲を増進し、消化液の分泌を促すことで、脾胃の働きをサポート。胃腸が弱い方でも飲みやすく、栄養を効率的に吸収できるでしょう。
薬膳で見る魚介の五性・五味・帰経とは
魚介類は種類によって異なる性質を持ちますが、共通する特徴もあります。
五性:多くの魚介は平性〜温性。極端に体を冷やしたり熱くしたりせず、バランスの取れた性質を持っています。ただし、貝類の一部(あさり、しじみ)は涼性で、体の余分な熱を冷ます働きがあるのです。
五味:甘味・鹹味が中心。甘味は気血を補い、鹹味は硬いものを柔らかくし、巡りを促進します。この2つの味が組み合わさることで、「補いながら巡らせる」理想的な働きをするのです。
帰経:脾・胃・腎に作用するものが多く、消化吸収と生命力の根源を同時にサポート。特に青魚(鯖、鰯、あじ)は腎にも作用し、精力増強や老化防止の効果があるとされています。
これらの性質により、魚介出汁は「穏やかに補う」食材として、毎日の食養生に最適なのです。
うま味=栄養循環のサポート。薬膳の”食養生”との相性
魚介出汁の旨味成分は、薬膳の「食養生」と深い関わりがあります。
イノシン酸(かつお節、煮干し、魚類)やグルタミン酸(昆布)などの旨味成分は、舌の味覚受容体を刺激し、脳に「おいしい」という信号を送ります。これにより食欲が増進し、消化液の分泌が促進されるのです。
薬膳では「脾胃が弱ると気血が作れない」と考えられているため、食欲を刺激する旨味成分は、間接的に気血を補う働きがあります。また、旨味成分自体が細胞のエネルギー代謝を助ける作用もあり、疲労回復に直接的な効果も期待できるでしょう。
さらに、出汁として抽出することで、固形の魚介を食べるよりも消化の負担が少なく、栄養を効率的に吸収できます。病後や高齢者、胃腸が弱い方にとって、魚介出汁は理想的な栄養補給法なのです。
「薬食同源」の考え方に基づけば、毎日の魚介出汁スープは、食べる薬として機能します。
薬膳的におすすめの魚介とは?──体質や季節に合わせた選び方
魚介出汁と一口に言っても、使う魚介によって薬膳的な効能は大きく異なります。自分の体質や季節に合わせて選ぶことで、より効果的に体を整えることができるのです。
ここでは、季節別・体質別のおすすめ魚介をご紹介していきます。
春夏は貝・白身魚で”巡り”を促す
春から夏にかけては、気の巡りを重視し、体の余分な熱を冷ます食材が適しています。
あさり・しじみ:涼性・鹹味を持ち、肝の解毒機能を高めます。春は肝の働きが活発になる季節のため、あさりやしじみの出汁が特におすすめ。利水作用もあるため、むくみの解消にも効果的です。二日酔いの朝には、しじみの味噌汁が理想的でしょう。
白身魚(鯛、ヒラメ、カレイ):平性・甘味を持ち、脾胃を補いながら体に負担をかけません。夏バテで食欲がない時でも飲みやすく、栄養を効率的に吸収できます。白身魚の出汁は上品な味わいで、どんな食材とも相性が良いのが特徴です。
桜えび:平性・甘味で、気を補いながら血を巡らせます。春の季節食材として、旬のエネルギーも同時に取り込めるでしょう。カルシウムも豊富なため、骨の健康維持にも役立ちます。
これらの魚介は体を極端に温めたり冷やしたりしないため、春夏の気温変化にも対応しやすいのです。
秋冬は青魚・あご・いりこで”温補”する
秋から冬にかけては、体を温めながら気血を補う食材が適しています。
青魚(鯖、鰯、あじ):温性・甘味を持ち、気血を補いながら体を温めます。特に鯖は補気作用が強く、疲労回復に優れた魚介。DHA・EPAも豊富で、血液をサラサラにする効果も期待できます。骨ごと煮込むことで、カルシウムも摂取できるでしょう。
あご(飛魚):温性・甘味で、脾胃と腎を補う優秀な食材。九州地方では「あごだし」として古くから親しまれており、深いコクと旨味が特徴です。体を芯から温める作用があるため、冷え性の方に特におすすめ。
いりこ(煮干し):平性〜温性・甘味で、気を補い、骨を丈夫にします。カタクチイワシを乾燥させたもので、手軽に使える万能出汁。カルシウムが豊富なため、成長期の子どもや高齢者にも適しています。
牡蠣:平性・甘味・鹹味で、滋陰養血の効果があります。秋冬に旬を迎え、体を潤しながら血を補う作用が強い食材。ただし、生食ではなく出汁として使う場合は、しっかり加熱することが重要です。
これらの魚介は冬の寒さに負けない体作りに最適な選択肢です。
体質別おすすめ早見表(冷え・疲れ・むくみ・乾燥)
あなたの体質や悩みに合わせて、魚介を選びましょう。
冷え性タイプ:
- おすすめ:あご、鯖、鰯、いりこ
- 組み合わせ:生姜、ねぎ、黒胡椒などの温める薬味をたっぷり
- 避けたい:貝類(あさり、しじみ)の大量摂取
疲労タイプ:
- おすすめ:かつお節、あご、鯖、いりこ
- 組み合わせ:ナツメ、クコの実、山芋などの補気食材
- ポイント:毎朝の習慣として魚介出汁スープを飲む
むくみタイプ:
- おすすめ:あさり、しじみ、白身魚
- 組み合わせ:はと麦、冬瓜、小豆などの利水食材
- ポイント:塩分控えめで、夕方までに飲む
乾燥タイプ(肌の乾燥、のどの渇き、空咳):
- おすすめ:牡蠣、白身魚、貝類
- 組み合わせ:白きくらげ、豆腐、梨などの潤す食材
- ポイント:温かいスープでゆっくり飲む
この早見表を参考に、自分に合った魚介出汁を選んでみてください。
基本の薬膳魚介出汁の作り方──失敗しない黄金バランス
魚介出汁の作り方にはコツがあります。適切な分量と手順を守ることで、臭みのない美味しい出汁が作れるのです。
ここでは、失敗しない基本の魚介出汁の作り方をご紹介していきます。
材料と分量(例:いりこ15g+昆布5g+水800ml)
基本の魚介出汁の黄金比率は以下の通りです。
いりこ出汁:
- いりこ(煮干し):15g(約10〜15尾)
- 昆布:5g(5cm角1枚)
- 水:800ml
この比率で作ると、程よい濃さの出汁ができます。もっと濃い出汁が好みの場合は、いりこを20gまで増やしても良いでしょう。
あご出汁:
- あご(焼きあご):20g
- 昆布:5g
- 水:1000ml
あごは旨味が強いため、水の量を少し多めにしても十分な味が出ます。焼きあごを使うことで、香ばしさもプラスされるのです。
白身魚出汁:
- 白身魚のアラ(鯛、ヒラメなど):200g
- 昆布:5g
- 水:1000ml
- 酒:大さじ2
- 生姜:1片(薄切り)
アラを使う場合は、臭み取りのために酒と生姜を加えることがポイント。新鮮なアラを使うことで、上品な出汁が取れます。
臭みを防ぐ下処理(湯引き・酒・生姜)
魚介出汁の最大の敵は「臭み」です。適切な下処理で臭みを防ぎましょう。
いりこ・煮干しの下処理:
- 頭とはらわたを取り除く(苦味と臭みの原因)
- 軽く乾煎りする(香ばしさが増し、臭みが減る)
- 水に30分〜1時間浸けておく(旨味が出やすくなる)
頭とはらわたを取る作業は面倒ですが、これをするかしないかで味が大きく変わります。特に、はらわたの黒い部分は苦味が強いため、必ず除去してください。
魚のアラの下処理:
- 流水でよく洗い、血合いを取り除く
- 熱湯をかけて霜降りにする(表面のたんぱく質を固める)
- 冷水で洗い、ぬめりを取る
この「湯引き」の工程が、臭みを防ぐ最重要ポイント。表面のたんぱく質を固めることで、余分な臭みや雑味が出にくくなるのです。
薬味の活用:
- 生姜:薄切りにして出汁と一緒に煮る
- ねぎの青い部分:臭み消しに効果的
- 酒:大さじ2程度加えることで臭みが和らぐ
これらの下処理を丁寧に行うことで、澄んだ美味しい出汁が完成します。
弱火抽出がポイント──アクを取るタイミング
出汁を美味しく取るには、火加減とアク取りが重要です。
基本の手順:
- 鍋に水と昆布を入れ、30分ほど浸けておく
- 下処理した魚介を加え、弱火でゆっくり加熱
- 沸騰直前(80〜85℃)で昆布を取り出す
- ごく弱火を保ち、アクが出たら丁寧に取り除く
- 10〜15分煮出したら、ザルやキッチンペーパーで濾す
重要なポイント:
- 強火で沸騰させない(雑味や臭みが出る)
- グツグツ煮立てない(出汁が濁る)
- アクはこまめに取る(最初の5分間は特に注意)
弱火でじっくり抽出することで、旨味成分だけが溶け出し、雑味の少ない澄んだ出汁になります。時間に余裕がある場合は、水から入れて火にかけ、30分〜1時間かけてゆっくり抽出する方法もおすすめです。
味を重ねる薬膳香味(陳皮・長ねぎ・ナツメ)
基本の魚介出汁に、薬膳食材を加えることで効能がアップします。
陳皮(みかんの皮を乾燥させたもの):気の巡りを良くし、消化を助けます。魚介の臭みも和らげるため、一石二鳥。出汁を取る際に2〜3片加えるだけで、さわやかな香りがプラスされるのです。
長ねぎの白い部分:体を温め、気の巡りを促進します。出汁に入れることで、ねぎの甘みと旨味も加わり、味に深みが出るでしょう。
ナツメ(乾燥なつめ):気血を補い、脾胃を整えます。2〜3個を出汁と一緒に煮込むことで、ほんのりとした甘みが加わり、疲労回復効果もアップ。
クコの実:補血・養肝の効果があり、目の疲れにも良い食材。出汁の仕上げに加えることで、彩りも美しくなります。
生姜:体を温め、消化を助ける万能薬味。千切りにして出汁に加えることで、温補効果が高まります。
これらの薬膳香味を組み合わせることで、ただの魚介出汁が「薬膳スープの素」に変身するのです。
薬膳スープレシピ4選──体調に合わせて作る魚介スープ
基本の魚介出汁ができたら、体調に合わせたスープを作りましょう。ここでは、4つの代表的な悩みに対応したスープレシピをご紹介していきます。
どれも簡単に作れて、継続しやすいものばかりです。
冷え性に/白身魚と生姜の温補スープ
手足が冷えやすい方におすすめの、体を芯から温めるスープです。
材料(2人分):
- 白身魚の出汁:600ml
- 白身魚の切り身:100g
- 生姜:1片(千切り)
- 長ねぎ:1/2本(斜め切り)
- 豆腐:1/2丁
- 酒:大さじ1
- 塩:小さじ1/4
- 醤油:小さじ1
- 黒胡椒:少々
- ごま油:小さじ1
作り方:
- 白身魚の出汁を鍋で温め、生姜を加えます
- 白身魚の切り身と豆腐を一口大に切って加える
- 弱火で5分ほど煮込み、ねぎを加える
- 酒・塩・醤油で味を調え、最後に黒胡椒とごま油を垂らして完成
薬膳ポイント:生姜の温性と白身魚の平性がバランスを取り、体を温めすぎずに冷えを改善します。朝食に飲むことで、1日の代謝が上がるでしょう。
疲労に/あご出汁と根菜の滋養スープ
慢性的な疲労感に悩む方におすすめの、気を補うスープです。
材料(2人分):
- あご出汁:600ml
- にんじん:1/2本(乱切り)
- 大根:100g(いちょう切り)
- ごぼう:1/4本(ささがき)
- 鶏もも肉:80g(一口大)
- ナツメ:3個
- クコの実:大さじ1
- 生姜:1/2片(千切り)
- 醤油:小さじ2
- 塩:少々
作り方:
- あご出汁を鍋で温め、根菜類を加えて弱火で10分煮込む
- 鶏肉、ナツメ、生姜を加えてさらに10分煮込む
- 根菜が柔らかくなったら、醤油と塩で味を調える
- 最後にクコの実を加えて2分煮て完成
薬膳ポイント:あごの温補効果と根菜の気を補う作用、ナツメとクコの実の補血効果が合わさり、疲労回復に最適。週に2〜3回飲むことで、体力が徐々に回復していきます。
むくみに/いりこ出汁×大根・はと麦の利水スープ
むくみやすい方におすすめの、余分な水分を排出するスープです。
材料(2人分):
- いりこ出汁:600ml
- 大根:150g(いちょう切り)
- はと麦:大さじ2(水で戻しておく)
- 白菜:2枚(ざく切り)
- しめじ:1/2パック
- 生姜:1/2片(千切り)
- 塩:小さじ1/4
- 醤油:小さじ1
作り方:
- いりこ出汁を鍋で温め、戻したはと麦を加えて10分煮込む
- 大根、白菜、しめじ、生姜を加えてさらに10分煮込む
- 野菜が柔らかくなったら、塩と醤油で味を調えて完成
薬膳ポイント:はと麦の強力な利水作用と、大根の消化を助ける働きが組み合わさり、むくみ解消に効果的。夕食に飲むことで、翌朝のむくみが軽減されるでしょう。
乾燥に/貝出汁×豆腐の潤肺スープ
肌の乾燥やのどの渇きが気になる方におすすめの、体を潤すスープです。
材料(2人分):
- あさり出汁:600ml(あさり200gから取る)
- 絹ごし豆腐:1丁
- 白きくらげ:5g(水で戻す)
- 長ねぎ:1/2本(斜め切り)
- 卵:1個
- 酒:大さじ1
- 塩:小さじ1/4
- ごま油:小さじ1
作り方:
- あさりを砂抜きし、水から煮て出汁を取る(あさりの身は取り出しておく)
- 出汁を温め、戻した白きくらげと豆腐を加える
- 弱火で5分煮込み、ねぎと取り出しておいたあさりの身を加える
- 溶き卵を回し入れ、酒と塩で味を調え、最後にごま油を垂らして完成
薬膳ポイント:あさりの滋陰作用、豆腐と白きくらげの潤す効果が組み合わさり、乾燥対策に最適。秋から冬にかけての乾燥する季節に特におすすめです。
魚介出汁スープの注意点と保存のコツ──薬膳的にNGな組み合わせも
魚介出汁スープは健康的ですが、いくつか注意すべき点があります。安全においしく楽しむための知識を身につけましょう。
ここでは、出汁作りの注意点と保存方法をお伝えしていきます。
出汁を濁らせない3つのポイント
澄んだ美しい出汁を作るには、以下の3点に注意してください。
1. 沸騰させない: グツグツと沸騰させると、たんぱく質が急激に固まり、出汁が白く濁ります。80〜85℃程度の温度を保ち、表面がゆらゆらと揺れる程度の弱火で抽出してください。
2. 長時間煮込みすぎない: 魚介出汁は10〜15分程度で十分。長時間煮込むと、旨味だけでなく雑味や臭みも出てしまいます。昆布も煮込みすぎるとぬめりが出るため、沸騰直前に取り出すことが重要です。
3. アクを丁寧に取る: 最初の5分間は、こまめにアクを取り除いてください。アクには余分なたんぱく質や脂が含まれており、これが出汁を濁らせる原因になります。お玉やアク取りシートを使って、丁寧に除去しましょう。
これらのポイントを守ることで、透き通った美しい出汁が完成します。
塩分・プリン体・アレルギーへの配慮
魚介出汁スープを飲む際の健康面での注意点も押さえておきましょう。
塩分: 魚介出汁自体の塩分は少なめですが、味付けの際に塩や醤油を入れすぎないよう注意してください。高血圧や腎臓病の方は、塩分を控えめにし、薬味や出汁の旨味で満足感を得る工夫をしましょう。1食あたりの塩分は1.5g以下が理想的です。
プリン体: 魚介、特に煮干しや鰹節にはプリン体が含まれています。痛風や高尿酸血症の方は、魚介出汁の摂取頻度を週に2〜3回程度に抑えてください。また、出汁を取った後の煮干しは食べずに捨てることで、プリン体の摂取量を減らせます。
アレルギー: 甲殻類や貝類のアレルギーがある方は、該当する食材を避けてください。また、初めて食べる魚介を使う際は、少量から試すことをおすすめします。特に子どもに与える場合は、慎重に様子を見ながら進めましょう。
冷蔵3日・冷凍2週間の保存ガイドライン
作った魚介出汁は、適切に保存することで無駄なく使えます。
冷蔵保存:
- 粗熱を取ってから密閉容器に入れ、冷蔵庫で保存
- 保存期間は3日以内
- 使う前に一度沸騰させて殺菌する
冷凍保存:
- 製氷皿や小分け容器に入れて冷凍すると便利
- 保存期間は2週間程度
- 使う分だけ解凍し、沸騰させてから使用
保存時の注意点:
- 出汁を濾した後、できるだけ早く冷やす(菌の繁殖を防ぐ)
- 冷蔵庫の温度は5℃以下を保つ
- 異臭がしたら使用しない
- 冷凍する際は空気に触れないようラップで密封
魚介出汁は鮮度が命。作り置きする場合も、できるだけ早めに使い切ることをおすすめします。
NG組み合わせ(例:魚介+牛乳/魚介+高温長時間煮込み)
薬膳的に避けたい組み合わせや調理法もあります。
魚介×牛乳・乳製品: 薬膳では、魚介と乳製品の組み合わせは消化に負担がかかるとされています。クリームスープにする際は、豆乳や白味噌を使う方が胃腸に優しい仕上がりに。どうしても牛乳を使いたい場合は、生姜をたっぷり加えることで消化を助けましょう。
高温長時間煮込み: 魚介出汁を強火で長時間煮込むと、たんぱく質が変性し、栄養価が落ちます。また、雑味や臭みも出やすくなるため、弱火で短時間抽出が基本です。
魚介×冷たい飲み物: 温かい魚介スープを飲んだ直後に、冷たい水やお茶を飲むと胃腸を冷やします。薬膳では「温かいものは温かいまま」が基本。食事中の飲み物も常温または温かいものを選んでください。
古い魚介の使用: 鮮度が落ちた魚介は、出汁に使っても臭みが強く出ます。煮干しは開封後1ヶ月以内、生の魚介は当日〜翌日に使うことが理想的。保存する際は密閉容器に入れ、冷暗所または冷蔵庫で保管しましょう。
これらのNG組み合わせを避けることで、より安全においしく魚介出汁スープを楽しめます。
応用編:季節ごとの「薬膳出汁スープ」アイデア集
基本のスープをマスターしたら、季節に合わせたアレンジを楽しみましょう。薬膳では、季節の変化に合わせて食材を選ぶことが健康維持の基本です。
ここでは、四季それぞれのおすすめスープをご紹介していきます。
春=巡りとデトックス「桜えび×三つ葉」スープ
春は気の巡りを重視し、冬に溜まった老廃物をデトックスする季節です。
材料(2人分):
- 桜えび出汁:600ml(桜えび15g)
- 三つ葉:1束
- 筍(茹でたもの):80g
- 菜の花:3本
- 卵:1個
- 酒:大さじ1
- 塩:小さじ1/4
- 柚子の皮:少々
作り方:
- 桜えびを軽く乾煎りし、水を加えて弱火で10分煮出す
- 筍と菜の花を加えて5分煮込む
- 三つ葉と溶き卵を加え、酒と塩で味を調える
- 最後に柚子の皮を散らして完成
薬膳ポイント:桜えびの気を補う作用、三つ葉と菜の花の気を巡らせる作用、筍のデトックス効果が組み合わさり、春の養生に最適。柚子の香りが肝の気を巡らせ、ストレス解消にも役立ちます。
夏=冷え対策「いりこ×陳皮×生姜」スープ
夏はクーラーで体が冷えやすい季節。内臓を温めながら、余分な湿気を取り除くことが重要です。
材料(2人分):
- いりこ出汁:600ml
- 陳皮:3片
- 生姜:1片(千切り)
- 冬瓜:150g(一口大)
- 鶏むね肉:80g(一口大)
- ねぎ:1/2本(斜め切り)
- 醤油:小さじ2
- 塩:少々
- ごま油:小さじ1
作り方:
- いりこ出汁に陳皮と生姜を加えて温める
- 冬瓜と鶏肉を加えて弱火で10分煮込む
- ねぎを加え、醤油と塩で味を調える
- 最後にごま油を垂らして完成
薬膳ポイント:いりこの温性、陳皮の気を巡らせる作用、生姜の温中効果が合わさり、クーラーによる冷えを防ぎます。冬瓜の利水作用で、夏のむくみも解消できるでしょう。
秋=潤い補給「白身魚×ナツメ×クコ」スープ
秋は空気が乾燥し、肺や肌が乾きやすい季節。体を潤す食材を中心に選びましょう。
材料(2人分):
- 白身魚出汁:600ml
- 白身魚の切り身:100g
- ナツメ:4個
- クコの実:大さじ1
- 白きくらげ:5g(水で戻す)
- 長芋:100g(輪切り)
- 生姜:1/2片(千切り)
- 塩:小さじ1/4
- 醤油:小さじ1
作り方:
- 白身魚出汁にナツメと生姜を加えて温める
- 白身魚、戻した白きくらげ、長芋を加えて10分煮込む
- クコの実を加え、塩と醤油で味を調えて完成
薬膳ポイント:白身魚の滋陰作用、白きくらげと長芋の潤す効果、ナツメとクコの実の補血作用が組み合わさり、秋の乾燥対策に最適。肌の乾燥や空咳にも効果的です。
冬=温養強化「あご出汁×ごぼう×黒胡椒」スープ
冬は体を温めながら、気血を補うことを最優先にします。
材料(2人分):
- あご出汁:600ml
- ごぼう:1/2本(ささがき)
- にんじん:1/2本(乱切り)
- 大根:100g(いちょう切り)
- 豚バラ肉:80g(一口大)
- 生姜:1片(千切り)
- にんにく:1片(薄切り)
- 醤油:大さじ1
- 味噌:小さじ2
- 黒胡椒:適量
- ごま油:小さじ1
作り方:
- あご出汁に生姜とにんにくを加えて温める
- 根菜類と豚肉を加えて弱火で15分煮込む
- 醤油と味噌で味を調え、黒胡椒を多めに振る
- 最後にごま油を垂らして完成
薬膳ポイント:あごの温補効果、根菜の気を補う作用、黒胡椒の強力な温め効果が組み合わさり、冬の寒さに負けない体を作ります。豚肉が体を潤しながら、根菜が腸を整えてくれるでしょう。
まとめ
魚介の出汁は薬膳において「気血を補い、脾胃を整える」優れた食材であり、毎日の食養生に最適です。
種類によって効能は異なり、春夏は貝類や白身魚で巡りを促し、秋冬は青魚やあごで温補することが理想的。体質別には、冷え性の方はあごや鯖を、疲労タイプの方はかつお節やいりこを、むくみタイプの方はあさりやしじみを選ぶと良いでしょう。出汁を取る際は弱火で丁寧に抽出し、アクをこまめに取り除くことが澄んだ出汁を作るコツです。
生姜・陳皮・ナツメなどの薬膳香味を加えることで、効能がさらに高まります。作った出汁は冷蔵で3日、冷凍で2週間保存可能ですが、できるだけ早めに使い切ることが理想的。塩分やプリン体に注意しながら、週に3〜4回を目安に魚介出汁スープを取り入れてください。
季節や体調に合わせてアレンジしながら、魚介出汁の薬膳パワーを活用していきましょう!
