「たんぱく質が大事なのは分かるけど、どう摂ればいいか分からない……」 そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

たんぱく質は体をつくる基礎となる栄養素ですが、ただ量を摂ればいいわけではありません。薬膳では、体質や季節に合わせて「質」と「量」と「摂り方」を整えることで、体に負担をかけずに必要な栄養を取り込めると考えられています。

この記事では、薬膳の視点からたんぱく質の上手な摂り方を解説していきます。体重や年齢に応じた適量、体質別の食材選び、胃腸に優しい調理法から、忙しい日常でも続けられる実践的な方法まで、幅広くお伝えしていくので、ぜひ最後まで読んでみてください!

タンパク質って何?薬膳で考える”体をつくる基礎”

たんぱく質は、筋肉や臓器、皮膚、髪など、体のあらゆる部分を構成する重要な栄養素です。

現代栄養学では三大栄養素の一つとして知られていますが、薬膳ではさらに「気・血・津液」という生命活動の基盤を生み出す材料として位置づけられています。ここでは、たんぱく質が体の中でどんな働きをしているのか、薬膳ならではの視点から詳しく見ていきましょう。

たんぱく質を正しく理解することで、自分の体に必要な摂り方が明確になってくるはずです。

タンパク質の役割と、薬膳での位置づけ(気・血・津液のもと)

たんぱく質は、単に筋肉をつくるだけの栄養素ではありません。

現代栄養学では、たんぱく質は体の構成成分であり、酵素やホルモンの材料にもなる重要な物質とされています。一方、薬膳では、たんぱく質を含む食材が「気・血・津液」という生命エネルギーの源を生み出す材料になると考えられているのです。

「気」とは、体を動かすエネルギーのこと。たんぱく質が不足すると気が作られず、疲れやすくなったり免疫力が低下したりします。

「血」は、全身に栄養を運ぶ役割を担う物質です。たんぱく質は血液の主要成分であるため、不足すると貧血や冷え、肌のくすみなどが現れます。

「津液」は、体内の水分や体液の総称。たんぱく質は細胞の保水機能にも関わるため、不足すると乾燥や潤い不足の原因になるのです。

このように、薬膳ではたんぱく質を「気・血・津液をつくる基礎材料」として捉え、単に量を摂るだけでなく、これらのバランスを整える食べ方を重視しています。

薬膳で見る「不足するとどうなる?」「摂りすぎるとどうなる?」

たんぱく質は不足しても摂りすぎても、体に不調をもたらします。

まず、不足した場合の影響から見ていきましょう。たんぱく質が足りないと、気虚(気の不足)や血虚(血の不足)の状態に陥りやすくなります。具体的には、疲れやすい、風邪をひきやすい、傷の治りが遅い、髪や爪がもろくなる、顔色が悪い、冷えやすいといった症状が現れるのです。

特に高齢者やダイエット中の方、食が細い方は、たんぱく質不足に陥りやすいため注意が必要とされています。筋肉量が減少すると代謝も落ち、さらに疲れやすくなるという悪循環に陥ることもあります。

一方、摂りすぎた場合はどうでしょうか。薬膳では、過剰なたんぱく質摂取は「脾胃に負担をかける」と考えられています。消化に時間がかかるたんぱく質を大量に摂ると、胃もたれや膨満感、便秘といった消化器症状が出やすくなるのです。

さらに、動物性たんぱく質を摂りすぎると体内に「湿熱」がこもり、ニキビや口内炎、体のだるさなどが生じることもあります。現代栄養学でも、過剰なたんぱく質は腎臓に負担をかけるとされており、東洋医学と共通する認識と言えるでしょう。

つまり、大切なのは「適量」を守ることなのです。

現代栄養学との共通点と違い ― “栄養+巡り”で考える視点

現代栄養学と薬膳には、たんぱく質に対する考え方に共通点と相違点があります。

共通点としては、どちらもたんぱく質を「体をつくる基礎材料」として重視していること。必須アミノ酸をバランスよく摂取する重要性や、動物性と植物性を組み合わせることの有用性なども、両者で一致しています。

しかし、大きな違いもあります。現代栄養学が「何をどれだけ摂るか」という量と成分に重点を置くのに対し、薬膳では「体質に合っているか」「ちゃんと消化・吸収されているか」という”巡り”の視点を加えるのです。

たとえば、同じ鶏肉でも、体が冷えている人には温める作用がある鶏肉が適していますが、体に熱がこもっている人には逆効果になることもあります。また、どんなに良質なたんぱく質を摂っても、胃腸が弱くて消化できなければ、栄養として体に取り込まれません。

薬膳では「食べたものが、きちんと気・血・津液に変わって全身を巡っているか」まで含めて考えます。つまり、「栄養価」だけでなく「体との相性」と「消化力」を総合的に見る視点が、薬膳ならではの特徴なのです。

この視点を持つことで、自分に合ったたんぱく質の摂り方が見えてくるでしょう。

量がカギ!体重・年齢別に見る「1日・1食の目安量」

たんぱく質は、多すぎても少なすぎても体に負担がかかります。

では、実際にどのくらいの量を摂れば良いのでしょうか。ここでは、体重や年齢、活動量に応じた具体的な目安量をご紹介していきます。さらに、1食あたりの適量や、朝・昼・夜の理想的な配分についても詳しく解説していくので、日々の食事に役立ててみてください。

数字だけでなく、実際の食材の量に置き換えて考えることで、より実践しやすくなるはずです!

成人・高齢者・運動量別の”1日あたりのタンパク質量”

1日に必要なたんぱく質量は、年齢や体重、活動量によって変わります。

一般的な成人の場合、体重1kgあたり1.0〜1.2gが目安とされています。たとえば体重60kgの人なら、1日に60〜72g程度が適量です。

デスクワーク中心で運動量が少ない方は、体重×1.0gでも十分。逆に、日常的に運動している方や肉体労働をしている方は、体重×1.2〜1.5gを目指すと良いでしょう。

高齢者の場合は、筋肉量の維持がより重要になるため、体重×1.0〜1.2gは最低限確保したいところです。食が細くなりがちな高齢期こそ、意識的にたんぱく質を摂ることが健康維持につながります。

一方、成長期の子どもや、妊娠・授乳中の女性は、さらに多くのたんぱく質が必要です。成長期なら体重×1.5〜2.0g、妊娠中は通常より+10〜20g程度を目安にしましょう。

薬膳的には、これらの数値を基本としながらも、消化力や体質に合わせて微調整することが大切とされています。胃腸が弱い方は、一度に大量に摂るよりも、少量ずつ分けて摂るほうが体に優しいのです。

1食あたりどれくらい?「20g」「30g」ってどのくらいの量?

「1日60g」と言われても、実際の食材でどのくらいなのかピンとこない方も多いでしょう。

ここでは、たんぱく質20gと30gが、具体的にどんな食材の量に相当するのかをご紹介していきます。まず、たんぱく質20gに相当する食材を見てみましょう。

鶏むね肉(皮なし)なら約90g、鮭の切り身なら1切れ(約100g)、卵なら3個、木綿豆腐なら1丁弱(約300g)、納豆なら3パック(約150g)が目安です。意外と少なく感じるかもしれませんが、これが20gの実際の量なのです。

次に、たんぱく質30gに相当する食材はどうでしょうか。鶏むね肉なら約135g、鮭なら大きめの切り身1.5切れ、卵なら4〜5個、木綿豆腐なら1丁半(約450g)、納豆なら4〜5パックとなります。

このように見ると、1食で30gのたんぱく質を摂るには、メイン料理にしっかりと肉・魚・卵・豆腐などを取り入れる必要があることが分かるでしょう。朝食でトーストとコーヒーだけ、昼食でおにぎりだけ、といった食事では、明らかにたんぱく質が不足してしまいます。

薬膳では「主菜をしっかり摂る」ことを基本としつつ、副菜や汁物にも豆類やナッツを加えることで、無理なく必要量を確保することが推奨されています。

朝・昼・夜の分配バランスで吸収効率を高める

たんぱく質は、1食でまとめて大量に摂るよりも、3食に分けて摂るほうが効率的です。

なぜなら、人の体が一度に吸収できるたんぱく質の量には限界があるからです。現代栄養学の研究でも、1食あたり20〜30g程度が吸収効率の良い範囲とされています。

理想的な配分は、朝:昼:夜=1:1:1、もしくは1:1.5:1.5くらいのバランス。たとえば1日60gを目標とするなら、朝20g、昼20g、夜20g、または朝15g、昼22.5g、夜22.5gといった配分になります。

多くの人が陥りがちなのが、朝食でたんぱく質をほとんど摂らず、夕食で一気に摂るパターンです。しかし、これでは朝のエネルギー不足を招き、夜は消化に負担がかかってしまいます。

薬膳的にも、朝は「脾胃を目覚めさせる」大切な時間帯。朝食でしっかりたんぱく質を摂ることで、1日の気血の生成がスムーズになると考えられています。

また、夜遅い時間に大量のたんぱく質を摂ると、消化に時間がかかり睡眠の質を下げることもあります。夕食は就寝の3時間前までに済ませ、消化に優しいたんぱく源を選ぶことも大切です。

3食バランスよく配分することで、体は無理なくたんぱく質を吸収し、気血の生成に活かせるようになるでしょう。

薬膳的に”朝にたんぱく質を入れるべき理由”

薬膳では、朝食でのたんぱく質摂取が特に重視されています。

その理由は、朝が「脾胃を目覚めさせ、1日の気血生成をスタートさせる」重要な時間帯だからです。中医学では、午前7〜9時は「胃経」が最も活発に働く時間とされ、この時間に良質な食事を摂ることで、栄養の吸収効率が高まると考えられています。

朝食を抜いたり、パンとコーヒーだけで済ませたりすると、脾胃が十分に目覚めず、1日を通して消化機能が低下してしまうのです。その結果、昼食や夕食で栄養を摂っても、うまく気血に変換されず、疲れやすさや集中力の低下につながります。

さらに、朝にたんぱく質を摂ることで、血糖値の急上昇を防ぎ、午前中のエネルギーを安定させる効果も期待できます。これは現代栄養学でも認められている事実で、朝食でのたんぱく質摂取は、日中のパフォーマンス向上に直結するのです。

おすすめの朝食は、卵料理・納豆・豆腐の味噌汁・焼き魚など、消化に優しいたんぱく源を組み合わせたメニュー。温かいスープや粥に卵や鶏肉を加えるのも、胃腸に負担をかけずにたんぱく質を摂る良い方法です。

朝からしっかりたんぱく質を摂る習慣をつければ、1日を通して体調が整い、疲れにくい体がつくられていくでしょう。

質で選ぶ!動物性・植物性タンパク質の薬膳的使い分け

たんぱく質には、動物性と植物性の2種類があります。

どちらも体に必要な栄養素ですが、薬膳では、それぞれが持つ性質や働きが異なると考えられているのです。ここでは、動物性と植物性それぞれの特徴を、五性・五味・帰経という薬膳の視点から詳しく見ていきます。

自分の体質や体調に合わせて、適切なたんぱく源を選べるようになれば、より効果的に栄養を取り込めるはずです!

動物性タンパク質 ― 「補陽・補血」の力を持つ食材一覧(鶏・魚・卵・乳)

動物性たんぱく質は、薬膳において「補陽・補血」の作用が強いとされています。

「補陽」とは、体を温めて活力を高めること。「補血」とは、血を増やして全身に栄養を届けることです。つまり、動物性たんぱく質は、冷えやすい人、貧血気味の人、疲れやすい人に特に適しているのです。

まず「鶏肉」は、温性で甘味を持ち、脾・胃に作用します。気を補い、胃腸を温める働きがあるため、体力が落ちているときや食欲がないときにおすすめ。特に鶏むね肉は脂肪が少なく、消化にも優しい食材です。

「魚」は種類によって性質が異なります。鮭は温性で血を補う作用があり、冷え性や貧血の改善に効果的。鯛は平性で気を補い、消化にも優しいため、胃腸が弱い方にも適しています。青魚(サバ・イワシ)は気血を補いながら、血行を促進する働きもあるとされているのです。

「卵」は平性で甘味を持ち、心・脾・胃に作用。気血を補い、体を滋養する万能食材として、薬膳では非常に重視されています。消化吸収も良く、どんな体質の方にも合いやすいのが特徴です。

「乳製品」は、牛乳は微涼性で津液を補う作用があり、乾燥対策に適しています。ただし、消化しにくい方もいるため、ヨーグルトやチーズのように発酵させた形で摂ると、胃腸への負担が軽減されるでしょう。

これらの動物性たんぱく質は、体を温め、血を補い、気力を高める力が強いため、虚弱体質や冷え性、貧血気味の方には積極的に取り入れたい食材です。

植物性タンパク質 ― 「脾を整え、巡りを助ける」豆類・雑穀・ナッツ類

植物性たんぱく質は、動物性に比べて「脾を整え、気の巡りを助ける」作用が穏やかです。

体を強く温めたり補ったりする力は動物性より弱いものの、消化に負担をかけず、体内の湿や熱を溜めにくいという利点があります。そのため、胃腸が弱い方や、体に熱がこもりやすい方には、植物性たんぱく質のほうが適している場合もあるのです。

「大豆・豆腐・納豆」は、平性で甘味を持ち、脾・胃・大腸に作用します。気を補い、脾胃の働きを整える作用があり、消化吸収も良好。特に納豆は発酵食品なので、さらに消化がしやすく、腸内環境を整える効果も期待できます。

「小豆」は平性で甘酸味を持ち、利水作用があります。つまり、体内の余分な水分を排出する働きがあるため、むくみやすい方におすすめです。

「雑穀(キヌア・アマランサスなど)」は、気を補い、脾胃を強化する作用があります。白米に混ぜて炊くだけで手軽にたんぱく質を増やせるため、日常的に取り入れやすい食材です。

「ナッツ類(アーモンド・くるみ・松の実)」は、多くが温性で、肺や腎を補う働きがあります。特にくるみは補腎作用が強く、老化防止や脳の活性化にも良いとされているのです。ただし脂質も多いため、食べ過ぎには注意しましょう。

植物性たんぱく質は、動物性ほどの温め効果や補血作用はありませんが、穏やかに体を整え、余分なものを溜めにくいという特徴があります。普段から胃もたれしやすい方や、ニキビができやすい方には、植物性を中心にするのも一つの方法です。

五性・五味・帰経で見る「自分の体質に合うタンパク源」

薬膳では、食材の五性・五味・帰経を見ることで、自分に合ったたんぱく源を選べます。

まず「冷え性・疲れやすい・顔色が悪い」といった陽虚・気虚・血虚タイプの方には、温性の動物性たんぱく質が適しています。鶏肉・鮭・羊肉・卵などを中心に摂ると、体が温まり気血が補われるでしょう。

逆に「暑がり・のぼせやすい・ニキビができやすい」といった陰虚・湿熱タイプの方には、平性〜涼性のたんぱく源がおすすめです。豆腐・白身魚(タイ・ヒラメ)・卵白・牛乳などが、体に熱をこもらせずに栄養を補ってくれます。

「胃もたれしやすい・食欲がない・消化不良」といった脾胃虚弱タイプの方には、平性で消化に優しいたんぱく質を選びましょう。鶏肉(特にささみ)・白身魚・卵・豆腐・山芋などが適しています。

「むくみやすい・体が重だるい」といった痰湿タイプの方には、利水作用のある小豆や、気を巡らせる納豆などの発酵食品が効果的です。脂肪分の多い肉類は湿を増やすため、控えめにすると良いでしょう。

このように、自分の体質に合わせてたんぱく源を選ぶことで、同じたんぱく質でも体への作用が大きく変わります。「何を食べるか」だけでなく「自分に合っているか」を意識することが、薬膳の基本なのです。

動物性×植物性を組み合わせる”薬膳バランスプレート”例

理想的なのは、動物性と植物性のたんぱく質を組み合わせて摂ることです。

それぞれの長所を活かしながら、短所を補い合うことができるからです。ここでは、1食で両方をバランスよく摂れる「薬膳バランスプレート」の例をご紹介していきます。

例①:鶏肉と豆腐の生姜スープ定食

メイン:鶏むね肉と豆腐の生姜スープ(たんぱく質約25g)、副菜:ほうれん草の胡麻和え、主食:雑穀ご飯、汁物:わかめの味噌汁。鶏肉で気を補い、豆腐で脾胃を整え、生姜で消化を促進。雑穀ご飯でさらにたんぱく質を補強する組み合わせです。

例②:鮭と納豆の和定食

メイン:鮭の塩焼き(たんぱく質約20g)、副菜:納豆(たんぱく質約8g)、副菜:小松菜のお浸し、主食:玄米ご飯、汁物:豆腐とねぎの味噌汁。鮭で血を補い、納豆で腸を整え、豆腐でさらにたんぱく質を追加。動物性と植物性がバランスよく摂れる理想的な定食です。

例③:豚肉と黒豆のスープ定食

メイン:豚肉と黒豆のスープ(たんぱく質約28g)、副菜:蒸しブロッコリー、主食:白米、汁物:卵スープ。豚肉で潤いを補い、黒豆で腎を強化し、卵でさらに気血を補う組み合わせ。秋冬の乾燥対策にも適したプレートです。

このように、1食の中で動物性と植物性を組み合わせることで、たんぱく質の量を確保しながらも、体質に合わせたバランスが取れます。毎食このような完璧な組み合わせを目指す必要はありませんが、1日を通して両方を取り入れる意識を持つと良いでしょう。

脾胃をいたわる補給法 ― 胃が弱い人でも”軽く食べられる”調理と食べ合わせ

たんぱく質は重要ですが、胃腸が弱い方には消化の負担になることもあります。

薬膳では「食べたものが消化されて初めて栄養になる」と考えるため、どんなに良質なたんぱく質でも、消化できなければ意味がありません。ここでは、胃腸に優しくたんぱく質を摂る方法を詳しくご紹介していきます。

脾胃虚弱タイプの方でも無理なく栄養補給できる調理法と食べ合わせを知れば、体が楽になるはずです!

たんぱく質を”吸収しやすく”する調理法(蒸す・煮る・発酵させる)

たんぱく質を消化しやすくするには、調理法が重要です。

最も胃に優しいのは「蒸す」調理法。蒸し料理は油を使わず、食材の水分を保ちながら柔らかく仕上がるため、消化に負担がかかりません。蒸し鶏・茶碗蒸し・蒸し魚などは、胃腸が弱い方にも安心して食べられます。

次におすすめなのが「煮る」調理法です。スープや煮物にすることで、たんぱく質が柔らかくなり、水分も一緒に摂れるため消化吸収がスムーズになります。特に、鶏肉や魚を長時間煮込むと、たんぱく質が分解されてさらに消化しやすくなるのです。

「発酵させる」のも優れた方法。納豆・味噌・ヨーグルトなどの発酵食品は、すでに微生物によってたんぱく質が分解されているため、胃腸への負担が軽く、消化酵素の働きも助けてくれます。

逆に、避けたいのは「揚げる」「強火で焼く」といった調理法。油を多く使うと消化に時間がかかり、胃もたれの原因になります。また、焦げた部分は胃を刺激しやすいため、胃腸が弱い方は控えめにしましょう。

このように、同じたんぱく源でも調理法を変えるだけで、消化のしやすさが大きく変わります。胃腸に不安がある方は、まず蒸し料理やスープから始めてみてください。

冷え性・胃もたれを防ぐ香味・スパイス(生姜・ねぎ・黒胡椒など)

たんぱく質の消化を助けるには、香味野菜やスパイスを活用するのも効果的です。

薬膳では、これらを「理気」の食材と呼び、気の巡りを整えて消化機能を高める働きがあるとされています。特にたんぱく質のような重い食材と組み合わせることで、胃もたれを防ぎながら栄養をしっかり吸収できるようになるのです。

「生姜」は温性で辛味を持ち、胃を温めて消化液の分泌を促進します。吐き気や胃もたれを和らげる作用もあるため、肉や魚の臭み消しとしてだけでなく、消化促進のために積極的に使いましょう。鶏肉のスープや魚の煮付けに生姜を加えるのは、薬膳的にも理にかなった調理法です。

「ねぎ」も温性で辛味があり、気を巡らせて消化を助けます。特に白い部分には体を温める作用が強く、冷えからくる胃の不調に効果的。薬味として刻んで加えるだけで、たんぱく質の消化がスムーズになります。

「黒胡椒」は温性で辛味が強く、胃腸を温めて食欲を増進させる働きがあります。たんぱく質料理の仕上げにひと振りすることで、消化が促進され、栄養の吸収率も高まるとされているのです。

「にんにく」は温性で、気を巡らせながら胃腸を温める作用があります。ただし刺激が強いため、胃腸が極端に弱い方は少量から試すと良いでしょう。

「山椒」や「陳皮(みかんの皮)」も、気を巡らせて消化を助けるスパイスです。特に陳皮は胃もたれや膨満感の改善に優れた効果があるため、脂っこい肉料理と相性抜群。

このように、たんぱく質料理に香味やスパイスを加えることで、消化不良を防ぎながら栄養をしっかり取り込めるようになります。胃腸が弱い方こそ、これらの食材を上手に活用してみてください。

“脾胃虚弱タイプ”におすすめのスープ・粥・鍋レシピ

胃腸が弱い方には、スープ・粥・鍋といった水分の多い料理が最適です。

なぜなら、これらの調理法はたんぱく質を柔らかくし、温かい状態で摂取できるため、消化の負担が最小限になるからです。ここでは、脾胃虚弱タイプの方でも食べやすいレシピをご紹介していきます。

鶏肉と山芋の生姜スープ

鶏むね肉を一口大に切り、山芋も角切りにします。鍋に水と鶏肉、生姜スライスを入れて中火で煮込み、アクを取りましょう。鶏肉が柔らかくなったら山芋を加え、さらに10分煮込みます。

塩で味を調え、最後にねぎを散らせば完成です。鶏肉で気を補い、山芋で脾胃を強化し、生姜で消化を促進する、胃腸に優しいスープ。体が温まり、消化もスムーズになります。

卵と豆腐の雑炊

炊いたご飯を鍋に入れ、だし汁を加えて弱火で煮ます。ご飯が柔らかくなったら、角切りにした豆腐を加え、溶き卵を回し入れましょう。

卵が半熟状になったら火を止め、醤油で味を調えます。仕上げに刻んだねぎと黒胡椒を振れば完成。卵と豆腐で気血を補いながら、消化に優しい雑炊は、食欲がないときにも食べやすい一品です。

白身魚と大根の鍋

土鍋に昆布だしを入れ、大根を薄切りにして加えます。大根が柔らかくなったら、白身魚(タイやヒラメ)を入れ、さっと火を通しましょう。

豆腐やえのき、春菊なども加えて、ポン酢や生姜醤油でいただきます。白身魚は消化に優しく、大根には消化酵素が含まれているため、たんぱく質の分解を助けてくれるのです。

小豆と鶏肉の薬膳粥

米と小豆を1:1の割合で用意し、水を多めに加えて弱火でコトコト煮ます。途中で細かく刻んだ鶏むね肉を加え、柔らかくなるまで煮込みましょう。

塩と生姜で味を調え、最後にごま油を数滴垂らします。小豆の利水作用でむくみを改善しながら、鶏肉でたんぱく質を補給。体が重だるいときにおすすめの粥です。

これらのレシピは、どれも消化に優しく、胃腸への負担が少ないのが特徴。体調が優れないときや、食欲がないときでも無理なく食べられるので、ぜひ試してみてください。

逆に避けたい”胃に負担をかける”NG食材・調理法

胃腸が弱い方は、たんぱく質の種類や調理法によっては体調を崩すこともあります。

ここでは、脾胃虚弱タイプの方が避けるべきNG食材と調理法をご紹介していきましょう。まず食材面では、「脂肪の多い肉」に注意が必要です。

豚バラ肉・牛カルビ・鶏皮などは、脂肪分が多く消化に時間がかかるため、胃もたれの原因になります。たんぱく質を摂りたい場合は、脂身の少ない部位(鶏むね肉・ささみ・豚ヒレ肉など)を選びましょう。

「生の魚介類」も、胃腸が弱い方には負担になることがあります。刺身や生牡蠣などは、冷たく生のままなので、脾胃を冷やして消化機能を低下させるのです。どうしても食べたい場合は、生姜やわさびを多めに添えて、冷えを和らげる工夫をしてください。

「冷たい乳製品」も要注意。牛乳やヨーグルトは栄養価が高いものの、冷蔵庫から出したばかりの冷たい状態で飲むと、胃を冷やして消化不良を起こしやすくなります。常温に戻すか、温めてから摂ると良いでしょう。

調理法では、「揚げ物」が最も胃に負担をかけます。唐揚げ・とんかつ・天ぷらなどは、油を大量に使うため消化に時間がかかり、胃もたれや膨満感の原因に。どうしても食べたい場合は、大根おろしやレモンと一緒に食べることで、消化を助けることができます。

「強火で焦げるまで焼く」のも避けたい調理法です。焦げた部分は胃粘膜を刺激し、消化不良を引き起こしやすくなります。中火でじっくり火を通すほうが、胃に優しく仕上がるでしょう。

また、「冷凍食品をそのまま」食べるのもNG。冷たいままでは脾胃を冷やすため、必ずしっかり加熱してから食べるようにしてください。

このように、胃腸が弱い方は「脂肪が多い・冷たい・揚げた・焦げた」ものを避け、「脂肪が少ない・温かい・蒸した・煮た」ものを選ぶことが大切です。

作り置き・時短・習慣化!タンパク質補給を”続けられる”仕組み

たんぱく質の重要性は分かっていても、忙しい毎日の中で実践するのは簡単ではありません。

しかし、ちょっとした工夫で、無理なく続けられる仕組みをつくることができます。ここでは、時短調理や作り置き、外食での選び方など、実践的なテクニックをご紹介していきます。

完璧を目指すのではなく、「できる範囲で続ける」ことが、体質改善への近道なのです!

忙しい朝でも10分でできる「たんぱく質朝食」3選

朝は時間がないという方でも、10分あればたんぱく質をしっかり摂れる朝食が作れます。

①卵かけご飯+納豆+味噌汁セット

炊きたてのご飯に卵を割り入れ、醤油を垂らします。納豆を添え、インスタント味噌汁にお湯を注げば完成。調理時間3分で、たんぱく質約20gが摂れる最強の時短朝食です。

卵で気血を補い、納豆で腸を整え、味噌汁で体を温める——薬膳的にもバランスの良い組み合わせ。味噌汁に乾燥わかめや豆腐を加えれば、さらにたんぱく質がアップします。

②スクランブルエッグ+トースト+ヨーグルト

卵2個を溶いてフライパンで炒め、塩胡椒で味付け。全粒粉のトーストに乗せ、ヨーグルトを添えれば完成です。調理時間5分で、たんぱく質約22gが摂れます。

ヨーグルトには刻んだナッツやドライフルーツを混ぜると、さらに栄養価がアップ。卵は平性なので、どんな体質の方にも合いやすい万能食材です。

③鮭おにぎり+豆乳+ゆで卵

鮭フレークを混ぜたおにぎりを握り、ゆで卵(前日に作り置き)と豆乳を添えます。調理時間3分で、たんぱく質約25gが確保できるのです。

鮭で血を補い、豆乳で脾胃を整え、卵で気を補う——この組み合わせなら、忙しい朝でも栄養バランスが整います。おにぎりは冷凍しておけば、さらに時短になるでしょう。

これらの朝食は、特別な調理技術がなくても誰でも作れる簡単メニュー。朝食を抜く習慣がある方は、まずこの3つのうちどれか一つから始めてみてください。

2日分まとめ調理!薬膳式”下味冷凍”アイデア

週末や時間のあるときに、2〜3食分をまとめて下味冷凍しておくと便利です。

薬膳の考え方を取り入れた下味冷凍なら、解凍して焼くだけで体に優しいたんぱく質料理が完成します。ここでは、おすすめの下味冷凍レシピをご紹介していきましょう。

鶏むね肉の生姜醤油漬け

鶏むね肉を一口大に切り、ジップロックに入れます。醤油・酒・みりん・すりおろし生姜を加えて揉み込み、冷凍庫へ。食べるときは前日に冷蔵庫に移して自然解凍し、フライパンで焼くだけです。

生姜の温め効果で、気虚タイプの方にもおすすめ。そのままご飯に乗せて丼にしても、サラダに添えても美味しくいただけます。

鮭の味噌漬け

鮭の切り身を味噌・みりん・酒を混ぜたタレに漬け込み、1切れずつラップで包んで冷凍します。解凍後、味噌を軽く拭き取ってグリルで焼けば完成。

味噌の発酵パワーで消化が良くなり、鮭の補血作用との相乗効果が期待できます。血虚タイプの方に特におすすめの下味冷凍です。

豚肉のクミン塩麹漬け

豚薄切り肉を塩麹・クミンパウダー・にんにくすりおろしで揉み込み、冷凍保存。解凍後、野菜と一緒に炒めるだけで、薬膳炒めが完成します。

塩麹の酵素でたんぱく質が分解され、消化しやすくなります。クミンの温め効果もプラスされ、冷え性の方にぴったりです。

白身魚のレモン塩漬け

白身魚(タラやタイ)を一口大に切り、塩・レモン汁・オリーブオイルで下味をつけて冷凍。解凍後、蒸すかホイル焼きにすれば、脾胃に優しい一品に。

レモンの酸味が消化を助け、白身魚の平性な性質が胃腸への負担を軽減してくれます。胃腸が弱い方でも安心して食べられる下味冷凍です。

これらの下味冷凍を3〜4種類ストックしておけば、平日の夕食準備が格段に楽になります。週末の30分で仕込めるので、ぜひ試してみてください。

コンビニ・外食でできる”薬膳的たんぱく質チョイス”

自炊が難しい日は、コンビニや外食を上手に活用しましょう。

薬膳の視点を持っていれば、コンビニや外食でも体に優しいたんぱく質を選べます。ここでは、選び方のポイントをご紹介していきます。

コンビニでのおすすめチョイス

サラダチキン(鶏むね肉)は、たんぱく質約20gが手軽に摂れる優秀な食材。ただし冷たいままだと脾胃を冷やすため、可能なら温めるか、常温に戻してから食べましょう。

ゆで卵は、平性で気血を補う万能食材。2個食べれば約12gのたんぱく質が摂れます。

納豆巻きや納豆パックは、発酵食品で消化に優しく、腸内環境も整えてくれます。おにぎりと組み合わせれば、バランスの良い食事になるでしょう。

豆腐入り味噌汁や豚汁は、温かく消化に優しいため、胃腸が弱い方にもおすすめ。特に豚汁なら、たんぱく質と野菜が一緒に摂れるため栄養バランスも良好です。

外食でのおすすめチョイス

定食屋では、焼き魚定食・鶏の照り焼き定食・豆腐ハンバーグ定食などがおすすめ。揚げ物よりも、焼く・煮る調理法のメニューを選ぶことで、胃への負担が軽減されます。

ラーメン店では、チャーシュー麺よりも「煮卵トッピング」や「ワンタン麺」を選ぶと良いでしょう。卵やワンタン(豚肉)は消化しやすく、スープと一緒に摂ることで体も温まります。

鍋料理店は、薬膳的に非常におすすめ。鶏肉・魚・豆腐など、複数のたんぱく源を温かいスープで摂れるため、消化も良く栄養バランスも最高です。

ファストフード店では、グリルチキンサンドやフィッシュバーガーなど、揚げ物以外の選択肢を探しましょう。サイドメニューにヨーグルトやサラダを追加すると、さらにバランスが良くなります。

このように、外食やコンビニでも、薬膳の視点を持てば体に優しい選択ができます。「温かい・蒸した・煮た・発酵した」ものを意識して選んでみてください。

食べすぎずに続ける ― 「1〜2日単位」で整える考え方

たんぱく質摂取で大切なのは、毎食完璧を目指すことではありません。

薬膳では「1〜2日単位でバランスを取る」という柔軟な考え方が推奨されています。たとえば、朝食でたんぱく質が少なかったなら、昼や夜で補えば良いのです。

また、1日の合計が少なかった場合も、翌日にしっかり摂れば問題ありません。人の体は、1食や1日単位で急激に変化するわけではなく、数日間のトータルで栄養状態が決まるからです。

この考え方を持つことで、「今日はたんぱく質が足りなかった」と罪悪感を感じる必要がなくなります。大切なのは、長期的に見てバランスが取れているかどうか。

たとえば、忙しくて外食が続いた週は、週末に鍋料理や薬膳スープでリセットする。旅行で食生活が乱れたら、帰宅後の2〜3日で整える——このように、「ゆらぎながら整える」ことが、無理なく続けるコツなのです。

完璧主義になりすぎると、かえってストレスになり、長続きしません。1〜2日単位で「だいたいバランスが取れていればOK」という気持ちで、気楽に取り組んでみてください。

次のステップ ― 季節と体質に合わせた”タンパク質薬膳”へ

たんぱく質の基本的な摂り方が身についたら、次は季節や体質に合わせた応用編です。

薬膳では、季節ごとに体が必要とする栄養や働きが変わると考えられています。春は解毒、夏は気を補う、秋は潤いチャージ、冬は温めと補腎——このように、季節に合わせてたんぱく源を選ぶことで、より効果的に体調を整えられるのです。

ここでは、四季それぞれに適したたんぱく質の選び方と食べ方をご紹介していきます!

春は「解毒×代謝」― 豆・白身魚でスッキリ補う

春は冬の間に溜め込んだ老廃物を排出し、新陳代謝を高める季節です。

薬膳では、春は「肝」の働きが活発になる時期とされ、気の巡りを整えることが重視されます。そのため、重たい動物性たんぱく質よりも、軽やかな植物性たんぱく質や白身魚が適しているのです。

「大豆・豆腐・納豆」は、脾胃を整えながら気を巡らせる作用があります。冬に疲れた胃腸を回復させ、春の活動に備えるために最適な食材。豆腐サラダや納豆巻きなど、さっぱりとした食べ方がおすすめです。

「えんどう豆・そら豆」などの春豆も、利水作用があり、冬のむくみを解消してくれます。さやえんどうを炒め物に加えたり、そら豆を塩茹でにしたりして、旬の恵みを楽しみましょう。

「白身魚(タイ・ヒラメ・カレイ)」は平性で、気を補いながらも体に熱をこもらせません。春の上昇する陽気とバランスを取るのにぴったりです。蒸し魚やホイル焼きなど、軽い調理法で楽しんでください。

また、春は「香りのある野菜」と組み合わせると、さらに気の巡りが良くなります。三つ葉・せり・春菊・菜の花などと一緒に、豆や白身魚を調理してみましょう。

春のたんぱく質は「軽く・さっぱり・巡らせる」がキーワードです。

夏は「気を補う」― 鶏むね・枝豆・卵が主役

夏は暑さで気が消耗しやすく、食欲も落ちる季節です。

そのため、消化に優しく、気を補う力のあるたんぱく源を選ぶことが大切。重たい肉よりも、あっさりとした鶏肉や豆類が適しています。

「鶏むね肉・ささみ」は、温性で気を補いながらも、脂肪が少なく消化に優しい食材。夏バテで食欲がないときでも食べやすく、体力回復に役立ちます。蒸し鶏にして、トマトやきゅうりと一緒にサラダにすると、夏らしい爽やかな一品に。

「枝豆」は平性で気を補い、利水作用もあるため、夏のむくみ対策にも最適です。ビールのおつまみとしてだけでなく、ご飯に混ぜたり、サラダに加えたりして積極的に摂りましょう。

「卵」は、夏でも安定して気血を補ってくれる万能食材。冷やし中華に乗せたり、卵スープにしたりと、アレンジの幅も広いため、夏の栄養補給に欠かせません。

ただし、夏は冷たいものを摂りすぎると脾胃を冷やしてしまいます。刺身や冷製料理を食べる際は、生姜やわさび、ねぎなどの温性の薬味を添えて、冷えを和らげる工夫をしてください。

夏のたんぱく質は「軽く・消化しやすく・気を補う」がポイントです。

秋は「潤いチャージ」― 豚肉・豆乳・黒豆で乾燥対策

秋は空気が乾燥し、肺や皮膚が潤い不足になりやすい季節です。

薬膳では、秋は「肺」を養う時期とされ、津液(体内の潤い)を補う食材が推奨されます。たんぱく源としては、潤いを補う作用のある食材を選びましょう。

「豚肉」は平性で甘鹹味を持ち、陰液(潤い)を補う代表的な食材です。特に豚ヒレ肉や豚もも肉は脂肪が少なく、乾燥対策に最適。生姜やねぎと一緒に煮込めば、潤いを補いながら消化もスムーズになります。

「豆乳」は平性で、肺を潤し、腸を整える作用があります。そのまま飲むのも良いですが、豆乳鍋やシチューにすると、温かく体に優しい秋の料理に。豆乳に鶏肉や白身魚を加えれば、たんぱく質もしっかり摂れます。

「黒豆」は腎を補い、血を養い、潤いを増す三拍子揃った食材。黒豆煮を作り置きしておけば、毎日少しずつ食べることで、秋の乾燥対策になります。

また、秋は「白い食材」も潤いを補うとされています。白きくらげ・百合根・山芋などと、たんぱく源を組み合わせると、より効果的に潤いをチャージできるでしょう。

秋のたんぱく質は「潤い・補陰・肺を養う」がテーマです。

冬は「温め×補腎」― 羊肉・鮭・黒ごまで巡りを強化

冬は寒さで体が冷え、生命エネルギーの源である「腎」が弱りやすい季節です。

そのため、体を強力に温め、腎を補う作用のあるたんぱく源を選ぶことが重要。冬こそ、温性の動物性たんぱく質をしっかり摂る時期なのです。

「羊肉」は熱性で、体を芯から温める最強の食材。気血を補い、腎を強化する作用もあるため、冷え性や腰痛、疲労感が強い方に特におすすめです。クミンや生姜と一緒に調理すれば、温め効果がさらにアップします。

「鮭」は温性で、血を補い体を温める作用があります。冬の寒さで血行が悪くなりがちな時期に、鮭の補血作用は非常に有効。焼き鮭や鮭鍋など、温かい調理法で楽しみましょう。

「黒ごま」は腎を補い、血を養う食材。黒い食材は一般的に腎を強化するとされており、冬の養生に欠かせません。たんぱく質料理の仕上げに黒ごまを振りかけたり、黒ごまペーストを使ったスープを作ったりすると良いでしょう。

また、冬は「黒い食材」全般が推奨されます。黒豆・黒きくらげ・黒米なども、たんぱく源と一緒に摂ることで、腎を強化し、冷えに負けない体をつくれるのです。

さらに、冬は鍋料理が薬膳的に最適。羊肉鍋・鮭鍋・鶏鍋など、たんぱく質と野菜を温かいスープで摂ることで、体が芯から温まり、消化も良くなります。

冬のたんぱく質は「温める・補腎・血を養う」がポイントです。

まとめ

たんぱく質は、体をつくる基礎であり、気・血・津液の源となる重要な栄養素です。

薬膳では、ただ量を摂るだけでなく、自分の体質に合った「質」を選び、消化しやすい「調理法」で摂り、季節に応じた「食材」を組み合わせることが大切とされています。体重や年齢に応じた適量を知り、朝・昼・夜にバランスよく分配することで、無理なく必要な栄養を取り込めるのです。

動物性と植物性のたんぱく質を上手に組み合わせ、香味やスパイスを活用すれば、胃腸が弱い方でも負担なく栄養補給ができます。また、下味冷凍や時短レシピを活用することで、忙しい日常の中でも続けられる仕組みをつくることが可能です。

大切なのは、完璧を目指すことではなく、1〜2日単位でバランスを整えながら、長く続けること。季節ごとに適したたんぱく源を選び、春は解毒、夏は気を補う、秋は潤いチャージ、冬は温めと補腎——このように、自然のリズムに合わせた食べ方をすることで、体は自然と整っていきます。

たんぱく質は「食べたら終わり」ではなく、「消化されて初めて栄養になる」もの。自分の体と対話しながら、今の自分に合った摂り方を見つけてみてください。この記事を参考に、体に優しいたんぱく質補給を今日から始めてみましょう!