「手足が冷たくて辛い」「胃が冷えて調子が悪い」「ストレスで食欲が湧かない」そんな悩みを抱えていませんか。薬膳では、シナモンは「温めと癒しを両立する香りのスパイス」として古くから重宝されてきました。体を温め、気を巡らせ、心を落ち着かせる働きがあります。
この記事では、シナモンがなぜ体を温めるのかを薬膳理論と科学的根拠の両面から解説し、香りの効果、種類と使い分け、体質別の取り入れ方、簡単なレシピ、安全性と保存方法まで、シナモンを使いこなすための知識を完全網羅してお届けします。
シナモンはなぜ体を温める?薬膳でいう「温性」の意味
薬膳の五性(寒・涼・平・温・熱)とは?シナモンが”温”に分類される理由
薬膳では、すべての食材を「五性(ごせい)」という5つの性質に分類します。
五性とは
- 寒性:体を冷やす性質。熱がこもりやすい人に適しています。例:西瓜、緑豆、昆布
- 涼性:体を穏やかに冷やす性質。ほてりやすい人に適しています。例:きゅうり、白菜、豆腐
- 平性:体を温めも冷やしもしない中立の性質。誰にでも適しています。例:米、じゃがいも、卵
- 温性:体を穏やかに温める性質。冷えやすい人に適しています。例:生姜、ねぎ、羊肉
- 熱性:体を強く温める性質。強い冷えがある人に適しています。例:唐辛子、胡椒、にんにく
シナモンは、「熱性」に分類されます。つまり、体を強く温める性質を持つスパイスです。
シナモンが”熱”に分類される理由
1. 体温上昇効果
- シナモンを摂取すると、体内の代謝が活性化し、熱が産生されます
- 血管が拡張し、血流が増加し、体全体が温まります
2. 冷えの根本改善
- 表面的に温めるだけでなく、体の深部から温めます
- 特に胃腸を温めることで、全身の冷えを改善します
3. 持続的な温め効果
- 一時的ではなく、長時間体を温め続けます
- 代謝が上がることで、冷えにくい体質に変わります
シナモンの熱性は、冷え性の人にとって最適な性質です。
脾胃を温めて”巡り”を良くする―シナモンの薬膳的はたらき
薬膳では、シナモンは次のように分類されます。
性味:熱性・甘味・辛味
- 熱性:体を強く温めます
- 甘味:脾に働きかけ、体を養います
- 辛味:発散作用があり、気を巡らせます
帰経:心・肝・脾・腎
- 心:血液循環を司り、精神活動を保ちます。シナモンは心を温め、血流を良くします
- 肝:気の巡りを司り、感情を調整します。シナモンは肝を温め、気の滞りを解消します
- 脾:消化吸収を司ります。シナモンは脾を温め、消化を助けます
- 腎:生命力の源である精を蓄えます。シナモンは腎を温め、冷えを根本から改善します
シナモンの主な働きは、「温中散寒(おんちゅうさんかん)」「温経通脈(おんけいつうみゃく)」「温腎助陽(おんじんじょよう)」です。
温中散寒
- 体の中心(胃腸)を温め、冷えを追い出します
- 冷えによる腹痛、下痢、吐き気、食欲不振を改善します
温経通脈
- 血管(経脈)を温め、血の巡りを良くします
- 冷えによる生理痛、生理不順、手足の冷えを改善します
温腎助陽
- 腎の陽気を助け、生命力を高めます
- 慢性的な冷え、疲労、老化を改善します
シナモンは、体の中心から全身を温め、巡りを良くする、温めの最強スパイスです。
冷え性・胃の冷え・手足の冷たさにどう働く?
シナモンは、次のような冷えの症状に効果的です。
全身の冷え性
- 手足が冷たい
- 寒がり、温かいものを好む
- 顔色が青白い
- 疲れやすい
シナモンの熱性が、体全体を温めます。血流が良くなり、手足の末端まで温かくなります。
胃の冷え
- お腹が冷える
- 冷たいものを食べると胃が痛くなる
- 食欲がない
- 下痢しやすい
シナモンの温中作用が、胃腸を温めます。消化が良くなり、食欲が回復します。
手足の冷え
- 手足の先が氷のように冷たい
- 冬になると霜焼けができる
- 夏でも冷房で手足が冷える
シナモンの温経通脈作用が、血管を拡張し、手足への血流を増やします。末梢の血行が改善され、手足が温かくなります。
生理痛・生理不順
- 冷えによる生理痛がひどい
- 経血が暗い色、塊が多い
- 生理不順
シナモンの温経作用が、子宮を温めます。血の巡りが良くなり、生理痛が和らぎ、生理が整います。
シナモンは、冷えのあらゆる症状に対応する、万能の温めスパイスです。
香りの力で体と心を整える―シナモンの芳香健胃とリラックス効果
香り成分シンナムアルデヒド・リモネン・オイゲノールの働き
シナモンの香りには、体と心を整える力があります。
シンナムアルデヒド(桂皮アルデヒド)
- シナモンの主要香気成分で、甘くスパイシーな香りの元です
- 全体の60〜80%を占めます
- 血管を拡張し、血流を増加させます
- 体温を上昇させ、冷えを改善します
- インスリン感受性を高め、血糖値を安定させます
- 抗菌・抗ウイルス作用があります
- 胃液の分泌を促進し、消化を助けます
リモネン(精油成分)
- 柑橘系の爽やかな香りの成分です
- リラックス効果があり、副交感神経を活性化します
- 血流を改善し、ストレスを和らげます
- 抗酸化作用があり、細胞の老化を防ぎます
オイゲノール(精油成分)
- クローブにも含まれる、甘くスパイシーな香りの成分です
- 鎮痛作用があり、痛みを和らげます
- 抗炎症作用があり、胃腸の炎症を抑えます
- 抗菌作用があり、食品の保存に役立ちます
その他の成分
- クーマリン:血液をサラサラにします(カシアに多く含まれる)
- カルシウム:骨を強くします
- 食物繊維:腸内環境を整えます
これらの成分が協力して働くことで、体を温め、心を癒やす効果が実現します。
香りが自律神経を整え、胃腸を動かす仕組み
シナモンの香りを嗅ぐだけでも、体に良い変化が起こります。
嗅覚刺激のメカニズム
- シナモンの香り成分(シンナムアルデヒドなど)が、鼻から脳の嗅覚中枢(嗅球)に届きます
- 嗅球から大脳辺縁系(感情や記憶を司る部分)に信号が送られます
- 視床下部が刺激され、自律神経系やホルモン分泌が調整されます
- 副交感神経(リラックスモード)が活性化されます
- 血管が拡張し、血流が増加します
- 心拍数が安定し、血圧が適正に保たれます
- 胃腸の蠕動運動が促進され、消化液の分泌が増えます
香りによる効果の実感
- 体が温かくなる
- 気分が落ち着く
- お腹が温かくなる
- 食欲が湧く
- 集中力が高まる
現代人の不調の多くは、ストレスによる自律神経の乱れが原因です。交感神経(緊張モード)が優位になりすぎると、血管が収縮し、胃腸の働きが低下します。シナモンの香りは、副交感神経を活性化し、体をリラックス状態に導きます。
薬膳での「香り=気を巡らせる」考え方
薬膳では、「香り」は気を巡らせる重要な要素です。
香りと気の関係
- 気が滞ると、お腹の張り、ゲップ、イライラ、ため息といった症状が現れます
- 香りの良い食材やスパイスは、滞った気を動かします
- シナモンの香りは、気の巡りを良くし、これらの症状を解消します
芳香健胃(ほうこうけんい)
- 香りで胃を健やかにすることです
- 香りが胃液の分泌を促し、消化を助けます
- シナモンは、芳香健胃の代表的なスパイスです
理気解鬱(りきげうつ)
- 気を巡らせ、憂鬱を解消することです
- シナモンの香りは、心を落ち着かせ、ストレスを和らげます
- イライラ、不安、落ち込みに効果的です
香りを活用することで、食べなくても体調を整えることができます。
シナモンの種類と使い分け―カシア・セイロン・桂皮・桂枝の違い
カシア(Cassia)とセイロン(Ceylon)の香り・効能比較
シナモンには、主に2つの種類があります。
カシア(Cassia Cinnamon)
- 学名:Cinnamomum cassia
- 中国原産で、「桂皮(けいひ)」とも呼ばれます
- 日本の薬膳や漢方で使われるのは、主にこのタイプです
特徴
- 香りが強く、甘くスパイシーです
- 辛味が強く、体を強く温めます
- 厚みがあり、硬いです
- 色は濃い茶褐色です
- クーマリン含有量が多いです(後述)
効能
- 体を強く温める効果が高いです
- 冷え性、胃腸の冷え、生理痛に効果的です
- 血糖値を下げる効果が高いです
セイロン(Ceylon Cinnamon)
- 学名:Cinnamomum verum
- スリランカ原産で、「真のシナモン」と呼ばれます
- ヨーロッパで主に使われます
特徴
- 香りが上品で、甘く繊細です
- 辛味が弱く、マイルドです
- 薄く、巻きが細かく、柔らかいです
- 色は明るい茶色です
- クーマリン含有量が少ないです
効能
- 体を穏やかに温めます
- 香りが強いため、リラックス効果が高いです
- 長期的に摂取しても安全性が高いです
使い分けの目安
- 強い冷えがある人、体を強く温めたい人:カシア
- 香りを楽しみたい人、毎日摂取したい人:セイロン
- 薬膳や漢方の効果を求める人:カシア
- お菓子作り、デザートに使いたい人:セイロン
桂皮と桂枝―薬膳的にはどう違う?
薬膳や漢方では、シナモンは「桂皮(けいひ)」と「桂枝(けいし)」の2種類に分けられます。
桂皮(けいひ)
- シナモンの樹皮を乾燥させたものです
- 厚みがあり、硬いです
- 体を強く温める効果が高いです
主な働き
- 温中散寒:胃腸を温め、冷えを追い出します
- 温経通脈:血管を温め、血の巡りを良くします
- 温腎助陽:腎を温め、生命力を高めます
適している症状
- 強い冷え性
- 胃腸の冷え、腹痛、下痢
- 手足の冷え
- 生理痛、生理不順
桂枝(けいし)
- シナモンの若い枝を乾燥させたものです
- 細く、軽いです
- 体を穏やかに温める効果があります
主な働き
- 発汗解表:汗を出して、風邪の初期症状を改善します
- 温経通陽:経絡を温め、気血の巡りを良くします
- 助陽化気:陽気を助け、気化作用を促します
適している症状
- 風邪の初期症状(寒気、頭痛、肩こり)
- 冷えによる痛み(肩こり、腰痛、関節痛)
- むくみ
使い分けの目安
- 胃腸の冷え、強い冷え性、生理痛:桂皮
- 風邪の初期症状、冷えによる痛み、むくみ:桂枝
- 一般的な温め目的:桂皮
一般的に「シナモン」として売られているものは、桂皮(カシア)です。
香りを最大限に引き出す粉末・スティックの使い方
シナモンには、粉末とスティック(ホール)の2つの形状があります。
粉末シナモン
特徴
- 香りが立ちやすく、使いやすいです
- 料理やお菓子に混ぜやすいです
- 開封後は香りが飛びやすいです
使い方
- お菓子作り(シナモンロール、アップルパイ)
- トーストに振りかける
- コーヒー、紅茶、ココアに混ぜる
- ヨーグルトに混ぜる
- カレーやスープに入れる
保存
- 密閉容器に入れ、冷暗所または冷蔵庫で保存します
- 開封後は約6ヶ月で使い切ります
シナモンスティック(ホール)
特徴
- 香りが長持ちします
- 煮出すことで、香りが十分に抽出されます
- 見た目が美しく、おしゃれです
使い方
- お茶、ホットワイン、チャイに入れる
- 煮込み料理、シチュー、カレーに入れる
- ピクルス、コンポートに入れる
- ミルで挽いて、粉末にする
保存
- 密閉容器に入れ、冷暗所で保存します
- 約2年保存できます
香りを引き出すコツ
1. 炒る(ロースト)
- フライパンで弱火で1〜2分炒ります
- 香りが立ち、効果が高まります
2. 砕く
- スティックを砕くか、ミルで挽くことで、香りが立ちます
- 使う直前に挽くと、最も香りが良いです
3. 煮出す
- お茶や煮込み料理に入れて、じっくり煮出します
- 香り成分が十分に抽出されます
4. 仕上げに加える
- 粉末シナモンは、料理の仕上げに振りかけます
- 長時間加熱すると、香りが飛びます
香りを活かす工夫をすることで、シナモンの効果が最大化されます。
冷え・胃の不調・ストレス別!体質に合わせたシナモンの取り入れ方
【冷え体質】→シナモン×生姜×黒糖:温中散寒の定番ブレンド
このタイプの特徴
- 手足が冷たい
- お腹が冷える
- 寒がり、温かいものを好む
- 顔色が青白い
- 疲れやすい
- 下痢しやすい
シナモン×生姜×黒糖の効果
- シナモン:温中散寒、温経通脈(体を強く温め、血の巡りを良くする)
- 生姜:温中散寒、発汗解表(体を温め、冷えを追い出す)
- 黒糖:温補、益気(体を温め、気を補う)
この3つの温性が協力して、体を芯から温めます。手足の冷え、胃腸の冷え、疲労感が改善されます。
おすすめレシピ
シナモン生姜黒糖茶
- シナモンパウダー小さじ1/4、生姜3片(薄切り)、黒糖小さじ1、熱湯200ml
- 5分蒸らして、温かいうちに飲みます
シナモン生姜黒糖ミルク
- 牛乳200ml、シナモンパウダー小さじ1/4、生姜汁小さじ1/2、黒糖小さじ1
- 温めて飲みます
【胃の弱り】→シナモン×陳皮×ナツメ:香りで健胃・補気
このタイプの特徴
- 食欲がない
- 胃もたれしやすい
- 疲れやすい
- 顔色が悪い
- 軟便
シナモン×陳皮×ナツメの効果
- シナモン:温中散寒、芳香健胃(胃を温め、香りで食欲を増進させる)
- 陳皮:理気健脾、燥湿(気を巡らせ、胃腸を整え、湿を取り除く)
- ナツメ:補気養血、健脾(気血を補い、胃腸を整える)
この組み合わせは、胃腸を温めながら、気を補います。食欲が回復し、消化が良くなり、疲労感が軽減されます。
おすすめレシピ
シナモン陳皮ナツメ茶
- シナモンスティック1本、陳皮2片、ナツメ3個、熱湯300ml
- 10分蒸らして、温かいうちに飲みます
シナモンナツメ粥
- 米1/2カップ、水4カップ、ナツメ5個、シナモンスティック1本
- 弱火で40分煮て、シナモンを取り出します
【ストレス胃】→シナモン×リンゴ×はちみつ:気の滞りをほどく甘い香り
このタイプの特徴
- ストレスで胃が痛くなる
- お腹が張る
- イライラしやすい
- 食欲がない
- 不安、落ち込み
シナモン×リンゴ×はちみつの効果
- シナモン:理気解鬱、芳香健胃(気を巡らせ、憂鬱を解消し、香りで胃を整える)
- リンゴ:生津止渇、健脾(体を潤し、胃腸を整える)
- はちみつ:補中益気、潤燥(気を補い、体を潤す)
この組み合わせは、甘い香りでストレスを和らげます。気の巡りが良くなり、胃腸が整い、心が落ち着きます。
おすすめレシピ
シナモンリンゴコンポート
- リンゴ2個(くし切り)、水200ml、はちみつ大さじ2、シナモンスティック1本、レモン汁大さじ1
- 弱火で15分煮ます。温かいまま、または冷やして食べます
シナモンリンゴはちみつティー
- リンゴ1/4個(薄切り)、シナモンパウダー小さじ1/4、はちみつ小さじ1、熱湯200ml
- 5分蒸らして、温かいうちに飲みます
今日から試せる!シナモンの薬膳レシピ3選
① 朝のシナモン白湯―体を温めて代謝をON
材料
- シナモンパウダー:小さじ1/4
- 熱湯:200ml
- はちみつ:小さじ1/2(お好みで)
- レモン汁:小さじ1/2(お好みで)
作り方
- カップに熱湯を注ぎます
- シナモンパウダーを加えて、よく混ぜます
- お好みではちみつとレモン汁を加えます
- 温かいうちに飲みます
効果
- 体を温め、代謝を上げます
- 朝の冷えを解消します
- 胃腸を整え、食欲を増進させます
- 血糖値を安定させます
おすすめのタイミング
- 朝起きてすぐ
- 朝食の30分前
- 冷えを感じるとき
② 昼のシナモン香味油―巡りを促して消化を助ける
材料
- シナモンスティック:3本
- ごま油:100ml
- 生姜:2片(薄切り)
- 八角:2個(お好みで)
作り方
- フライパンにごま油、シナモンスティック、生姜、八角を入れます
- 弱火で10〜15分、香りが出るまで温めます(温度は60〜80℃を保ちます)
- 焦がさないように注意しながら、香りを油に移します
- 火を止めて完全に冷まします
- スパイスを濾して、油を保存容器に入れます
効果
- 料理の仕上げに数滴垂らすだけで、体が温まります
- 消化を助け、気血の巡りを良くします
- 冷え性、肩こり、腰痛に効果的です
使い方
- 炒め物の仕上げに
- スープや麺類にトッピング
- サラダのドレッシングに
- 温野菜にかける
保存
- 冷蔵庫で約1ヶ月保存できます
③ 夜のシナモンミルクティー―リラックスして冷えを整える
材料
- 牛乳または豆乳:200ml
- シナモンパウダー:小さじ1/4
- 紅茶(ティーバッグ):1個
- はちみつ:小さじ1
- バニラエッセンス:2滴(お好みで)
作り方
- 鍋に牛乳を入れ、弱火で温めます
- 紅茶を入れて、3分蒸らします
- 紅茶を取り出します
- シナモンパウダーとはちみつを加えて、よく混ぜます
- お好みでバニラエッセンスを加えます
- カップに注ぎ、温かいうちに飲みます
効果
- 体を温め、冷えを解消します
- 心を落ち着かせ、リラックスします
- 睡眠の質を高めます
- 牛乳のトリプトファンとシナモンの香りが、安眠を促します
おすすめのタイミング
- 寝る1時間前
- リラックスしたいとき
- 体が冷えているとき
シナモンを安心して使うために―安全性・摂取量・保存のポイント
クーマリン含有量と摂取上限(カシアは注意)
シナモン、特にカシア(桂皮)には、クーマリンという成分が含まれています。
クーマリンとは
- 自然界に広く存在する芳香成分です
- 適量であれば、抗酸化作用、抗炎症作用があります
- しかし、大量摂取すると、肝臓に負担をかける可能性があります
シナモンの種類別クーマリン含有量
- カシア(桂皮):1gあたり約5〜10mg
- セイロン:1gあたり約0.004mg
カシアは、セイロンの約1000倍以上のクーマリンを含みます。
安全な摂取量
欧州食品安全機関(EFSA)は、クーマリンの耐容一日摂取量(TDI)を体重1kgあたり0.1mgと設定しています。
体重別の目安
- 体重50kgの人:クーマリン5mg/日まで
- 体重60kgの人:クーマリン6mg/日まで
- 体重70kgの人:クーマリン7mg/日まで
シナモン(カシア)の安全な摂取量
- 体重50kgの人:1日約0.5
〜1g(小さじ1/4程度)
- 体重60kgの人:1日約0.6〜1.2g(小さじ1/4〜1/2程度)
- 体重70kgの人:1日約0.7〜1.4g(小さじ1/4〜1/2程度)
注意点
- 毎日大量に摂取し続けることは避けましょう
- 料理の香り付け程度(1日小さじ1/4〜1/2)であれば、問題ありません
- 長期的に毎日摂取したい場合は、セイロンシナモンを選びましょう
- 肝機能に不安がある人は、医師に相談してください
セイロンシナモンの安全性
- クーマリン含有量が非常に少ないため、毎日摂取しても安全です
- 1日小さじ1〜2杯程度なら、問題ありません
妊娠・授乳中・薬服用中の注意点
妊娠中
- シナモンには子宮収縮作用があるため、妊娠中は控えめにします
- 料理の香り付け程度(1日小さじ1/4未満)なら、問題ないとされています
- 大量摂取は避けてください
- 心配な場合は、医師に相談してください
授乳中
- 適量であれば問題ありません
- ただし、シナモンの成分が母乳に移行する可能性があるため、控えめにします
- 1日小さじ1/4程度なら、問題ないとされています
薬服用中
血糖降下薬
- シナモンには血糖値を下げる効果があります
- 血糖降下薬と併用すると、低血糖になる可能性があります
- 医師に相談してから使用してください
抗凝固薬(ワルファリンなど)
- シナモンには血液をサラサラにする効果があります
- 抗凝固薬と併用すると、出血しやすくなる可能性があります
- 医師に相談してから使用してください
肝臓の薬
- カシアに含まれるクーマリンは、肝臓で代謝されます
- 肝機能に影響を与える可能性があるため、医師に相談してください
その他の注意
- アレルギーがある人は、少量から試してください
- 胃炎や胃潰瘍がある人は、シナモンの辛味が刺激になることがあるため、控えめにします
- 何か異常を感じたら、すぐに使用を中止し、医師に相談してください
香りと効能を保つ保存方法(湿気・光・温度対策)
シナモンの香りと効能を保つためには、適切な保存が重要です。
保存の3大敵
- 湿気:香りが弱くなり、カビが生えます
- 光(特に直射日光):成分が分解され、効能が低下します
- 高温:香り成分が揮発し、品質が劣化します
保存方法
粉末シナモン
- 密閉容器に入れます(ガラス瓶、密閉できるプラスチック容器)
- 冷暗所または冷蔵庫で保存します
- 直射日光を避けます
- 湿気を防ぐため、乾燥剤を入れると良いです
- 開封後は約6ヶ月で使い切ります
- 香りが弱くなったら、新しいものに交換します
シナモンスティック(ホール)
- 密閉容器に入れます
- 冷暗所で保存します(常温でも可)
- 直射日光と湿気を避けます
- 約2年保存できます
- 香りが弱くなったら、炒ることで香りが復活することがあります
シナモン香味油
- ガラス瓶など、密閉容器に入れます
- 冷蔵庫で保存します
- 直射日光を避けます
- 約1ヶ月保存できます
鮮度チェック
- 香りを嗅いで確認します
- 甘くスパイシーな香りが強ければ、新鮮です
- 香りが弱い、または変な臭いがする場合は、古くなっています
- 色が変わっている(白っぽくなる、黒ずむ)場合は、劣化しています
使用のコツ
- 少量ずつ購入し、新鮮なうちに使い切ります
- 使う前に香りを確認します
- スティックの場合、使う直前に砕くか挽くと、香りが立ちます
適切な保存をすることで、シナモンの香りと効能を最大限に活かせます。
まとめ:季節と体質に合わせて香りを使い分けよう
シナモンは”温め+香り”で巡りを整える万能スパイス
シナモンは、薬膳で「温めと癒しを両立する香りのスパイス」として古くから重宝されてきました。熱性の性質で体を強く温め、温中散寒・温経通脈・温腎助陽の働きがあり、冷え性、胃腸の冷え、手足の冷え、生理痛、疲労に効果的です。
シンナムアルデヒドやリモネンといった香り成分が、科学的にも血流改善・リラックス効果を裏付けています。香りを嗅ぐだけでも、自律神経が整い、胃腸が動き、心が落ち着きます。
季節別の使い方(冬=温性強調/春秋=香り中心)
冬(12〜2月)
- 体が冷えやすい季節です
- シナモンの温性を最大限に活用します
- おすすめ:シナモン生姜黒糖茶、シナモンミルクティー、シナモン入り鍋
- 1日小さじ1/2〜1程度、積極的に摂取します
春(3〜5月)
- 気の巡りが滞りやすい季節です
- シナモンの香りで気を巡らせます
- おすすめ:シナモン陳皮茶、シナモンリンゴコンポート
- 1日小さじ1/4程度、香りを中心に活用します
夏(6〜8月)
- 体に熱がこもりやすい季節です
- シナモンは控えめにします
- おすすめ:アイスティーにシナモンスティックを少し入れる程度
- 1日小さじ1/8程度、ごく少量のみ使用します
秋(9〜11月)
- 体が乾燥しやすい季節です
- シナモンの温めを活かしつつ、潤い食材と組み合わせます
- おすすめ:シナモンリンゴはちみつティー、シナモン白きくらげスープ
- 1日小さじ1/4〜1/2程度、バランスよく摂取します
体質別の使い方
冷え体質(陽虚タイプ)
- シナモンが最適です
- カシア(桂皮)を選び、1日小さじ1/2〜1程度摂取します
- 生姜、黒糖と組み合わせます
胃腸が弱い体質(脾虚タイプ)
- シナモンで胃腸を温めます
- 陳皮、ナツメと組み合わせます
- 1日小さじ1/4〜1/2程度摂取します
ストレスが多い体質(気滞タイプ)
- シナモンの香りで気を巡らせます
- リンゴ、はちみつと組み合わせます
- 1日小さじ1/4程度、香りを重視します
のぼせやすい体質(陰虚タイプ)
- シナモンは控えめにします
- セイロンシナモンを選び、1日小さじ1/8〜1/4程度、ごく少量のみ使用します
- 白きくらげやはちみつなど、潤い食材と組み合わせます
シナモンと相性の良い食材
- 生姜:温め効果倍増
- 陳皮:気を巡らせる
- ナツメ:気血を補う
- 黒糖:温補効果
- はちみつ:潤いと甘味
- リンゴ:ストレスケア
- 牛乳:安眠効果
- 紅茶:香りの相乗効果
今日から始める”シナモン習慣”
朝:シナモン白湯で体を目覚めさせる 昼:シナモン香味油で料理にアクセント 夜:シナモンミルクティーでリラックス
この3つの習慣を続けることで、体が温まり、巡りが良くなり、心が落ち着きます。
シナモンは、カシアとセイロンで効能と安全性が異なります。強い冷えがある人、短期間の使用にはカシア、毎日摂取したい人、香りを楽しみたい人にはセイロンを選びましょう。
1日小さじ1/4〜1/2の適量を守り、香りを活かす調理法を工夫することで、シナモンの力を最大限に引き出せます。妊娠中や薬服用中の人は、医師に相談してから使用してください。
今日から、シナモンを日常に取り入れて、香りで体と心を整え、温かく穏やかな毎日を手に入れてみてください。
