「体が冷えて辛い」「疲れやすくて元気が出ない」「胃が冷えて食欲がない」そんな悩みを抱えていませんか。薬膳では、クローブは「陽気を高める温めスパイス」として古くから重宝されてきました。体を芯から温め、生命力を高め、胃腸を整える働きがあります。
この記事では、クローブがなぜ陽気を高めるのかを薬膳理論と科学的根拠の両面から解説し、体質チェック、簡単なレシピ、相性の良い食材、摂取量と注意点、香りと成分の秘密まで、クローブを使いこなすための知識を完全網羅してお届けします。
まずは知っておきたい|クローブ=陽気を高めるスパイスとは
クローブ(丁香)ってどんなスパイス?
クローブは、フトモモ科の常緑樹「チョウジノキ(丁子の木)」の花蕾を乾燥させたスパイスです。英語では「Clove(クローブ)」、中国語では「丁香(ていこう、ディンシャン)」と呼ばれます。
形状と香り
- 釘のような形をしています(「丁」は釘を意味します)
- 長さは約1〜2cm、茶褐色です
- 甘くスパイシーで、濃厚な香りがします
- 香りは非常に強く、少量でも効果的です
原産地と歴史
- インドネシアのモルッカ諸島(香料諸島)原産です
- 古代から貴重な香辛料として取引されてきました
- 中国では紀元前から薬用として使われています
- ヨーロッパには中世に伝わり、高級香辛料として珍重されました
主な用途
- 料理:カレー、シチュー、ピクルス、焼き菓子、ホットワイン
- 薬用:胃腸薬、歯痛止め、消臭剤
- 芳香:ポプリ、アロマテラピー
クローブは、その強い香りと温め効果で、世界中で愛されているスパイスです。
薬膳で見るクローブの性質(四気五味・帰経・効能)
薬膳では、クローブは次のように分類されます。
四気:温性
- 体を穏やかに温める性質です
- 冷えによる不調を改善します
- シナモンほど熱性ではなく、穏やかに温めます
五味:辛味
- 発散作用があり、気を巡らせます
- 温め効果を強化します
- 痛みを和らげます
帰経:脾・胃・腎
- 脾・胃:消化器系に働きかけ、消化を助けます。胃腸を温め、食欲を増進させます
- 腎:生命力の源である精を蓄え、陽気を高めます。冷えを根本から改善します
主な効能
温中降逆(おんちゅうこうぎゃく)
- 胃腸を温め、気の逆上を抑えます
- 冷えによる吐き気、しゃっくり、嘔吐を改善します
温腎助陽(おんじんじょよう)
- 腎の陽気を助け、生命力を高めます
- 慢性的な冷え、疲労、インポテンツを改善します
散寒止痛(さんかんしつう)
- 冷えを追い出し、痛みを止めます
- 冷えによる腹痛、胃痛、歯痛を和らげます
クローブは、胃腸を温めながら陽気を高める、冷え対策に最適なスパイスです。
“陽気を高める”とは?——体を内側から温める仕組み
薬膳では、体のエネルギーを「陰」と「陽」に分けます。
陽気とは
- 体を温める、動かす、活性化するエネルギーです
- 代謝、免疫、活力の源です
- 太陽のように明るく、温かく、動的なエネルギーです
陰気とは
- 体を冷やす、潤す、落ち着かせるエネルギーです
- 体液、睡眠、安静の源です
- 月のように静かで、冷たく、静的なエネルギーです
健康な状態では、陰と陽がバランスよく保たれています。しかし、現代人の多くは、ストレス、睡眠不足、冷たいもののとりすぎ、運動不足などで、陽気が不足しがちです。
陽気が不足すると起こる症状
- 冷え性(手足、お腹が冷える)
- 疲れやすい、だるい
- 食欲がない
- 下痢しやすい
- 顔色が青白い
- 寒がり、温かいものを好む
- やる気が出ない、憂鬱
クローブが陽気を高める仕組み
1. 体内で熱を産生する
- クローブの成分が、体内の代謝を活性化します
- エネルギーが作られ、体温が上昇します
2. 血流を改善する
- 血管が拡張し、血液が全身に行き渡ります
- 手足の末端まで温かくなります
3. 胃腸の働きを活性化する
- 胃腸が温まり、消化吸収が良くなります
- 栄養がしっかり吸収され、エネルギーが作られます
4. 腎の陽気を補う
- 腎は生命力の源です
- 腎の陽気が高まることで、全身の陽気が底上げされます
クローブは、体の深部から陽気を高め、冷えを根本から改善します。
どんなときに使うと効果的?(冷え・倦怠感・食欲不振など)
クローブは、次のような症状に効果的です。
冷えによる胃腸の不調
- 胃が冷えて痛い
- 冷たいものを食べると下痢する
- 吐き気、嘔吐
- しゃっくりが止まらない
慢性的な冷え性
- 手足が冷たい
- お腹が冷える
- 寒がり、常に厚着をしている
- 体温が低い(36℃以下)
倦怠感・疲労
- 疲れやすい、だるい
- 朝起きられない
- やる気が出ない
- 体が重い
食欲不振
- 食欲がない
- 食べても美味しく感じない
- 胃が重い
歯痛
- 虫歯による歯痛
- 冷えによる歯痛
- クローブの精油成分(オイゲノール)に鎮痛作用があります
生理痛・生理不順
- 冷えによる生理痛
- 経血が暗い色、塊が多い
- 生理が遅れる
これらの症状がある人は、クローブを日常に取り入れることで、改善が期待できます。
あなたに合ってる?陽気が不足しているサイン&クローブが効く体質
陽気不足(陽虚)のサインをセルフチェック
以下の項目に、いくつ当てはまるかチェックしてみましょう。
体の症状
- □ 手足が冷たい、特に冬がつらい
- □ お腹が冷える、お腹を触ると冷たい
- □ 寒がり、常に厚着をしている、暖房が手放せない
- □ 体温が低い(36℃以下)
- □ 顔色が青白い、唇の色が薄い
エネルギーと気分
- □ 疲れやすい、だるい、体が重い
- □ 朝起きられない、昼間も眠い
- □ やる気が出ない、憂鬱
- □ 集中力が続かない
消化器系
- □ 食欲がない、食べても美味しく感じない
- □ 冷たいものを食べると下痢する
- □ 軟便、下痢しやすい
- □ お腹が張る、ゲップが多い
その他
- □ 頻尿、特に夜間トイレに何度も起きる
- □ むくみやすい
- □ 腰痛、膝痛(冷えによる)
- □ 生理痛がひどい、生理が遅れる
判定
- 10個以上:陽虚体質の可能性が高いです。クローブが最適です
- 5〜9個:陽気がやや不足しています。クローブを適度に取り入れましょう
- 4個以下:陽気は比較的足りています。必要に応じてクローブを使いましょう
クローブが合う人の特徴(冷え・胃の冷え・疲れやすい)
クローブが特に合う人
冷え性タイプ(陽虚体質)
- 手足が常に冷たい
- お腹が冷える
- 寒がり、温かいものを好む
- 顔色が青白い
- 体温が低い
胃腸が弱いタイプ(脾胃虚寒)
- 食欲がない
- 冷たいものを食べると胃が痛くなる
- 吐き気、嘔吐しやすい
- 下痢しやすい
- しゃっくりが出やすい
疲れやすいタイプ(気虚+陽虚)
- 疲れやすい、だるい
- 朝起きられない
- やる気が出ない
- 免疫力が低く、風邪をひきやすい
冷えによる痛みがあるタイプ
- 歯痛(虫歯、冷え)
- 腹痛(冷えによる)
- 生理痛(冷えによる)
- 腰痛、関節痛(冷えによる)
これらのタイプの人は、クローブを積極的に取り入れることで、体質改善が期待できます。
逆に避けたい人(熱証・のぼせ・口渇がある人)
クローブを避けるべき人(陰虚・熱証タイプ)
以下の症状がある人は、クローブを摂りすぎると、体に熱がこもり、症状が悪化する可能性があります。
のぼせ・ほてりタイプ(陰虚)
- 体がほてる、のぼせる
- 顔が赤い、ほてる
- 暑がり、冷たいものを好む
- 手のひら、足の裏がほてる
- 寝汗をかく
口渇・乾燥タイプ(陰虚)
- 口が渇く、喉が渇く
- 肌が乾燥する、カサカサする
- 便秘(乾燥による)
- 尿の色が濃い、量が少ない
イライラ・不眠タイプ(肝火上炎)
- イライラしやすい
- 怒りっぽい
- 眠れない、夢が多い
- 目が充血する
炎症があるタイプ(実熱)
- 胃炎、胃潰瘍
- 口内炎、歯肉炎
- ニキビ、吹き出物が多い
- 発熱している
これらの症状がある人は、クローブを控えめにするか、使用を避けましょう。代わりに、白きくらげ、はちみつ、梨など、体を潤す食材を摂りましょう。
季節で変わる”陽気のバランス”——冬に特におすすめの理由
季節と陽気の関係
薬膳では、季節によって体の陽気のバランスが変わると考えます。
春(3〜5月)
- 陽気が上昇し始める季節です
- 気の巡りが滞りやすいです
- クローブ:少量使用、香りで気を巡らせる
夏(6〜8月)
- 陽気が最も盛んな季節です
- 体に熱がこもりやすいです
- クローブ:ほとんど使わない、または極少量
秋(9〜11月)
- 陽気が下降し始める季節です
- 体が乾燥しやすいです
- クローブ:少量〜中量使用、潤い食材と組み合わせる
冬(12〜2月)
- 陽気が最も不足する季節です
- 体が冷えやすいです
- クローブ:積極的に使用、温め効果を最大化
冬にクローブが特におすすめの理由
1. 寒さから体を守る
- 外気温が低く、体温が下がりやすい季節です
- クローブの温性が、体を芯から温めます
2. 陽気を補充する
- 冬は陽気が自然と不足します
- クローブが陽気を補い、エネルギーを高めます
3. 免疫力を高める
- 冬は風邪やインフルエンザが流行します
- クローブの温め効果と抗菌作用が、免疫力を高めます
4. 代謝を上げる
- 寒さで代謝が下がりやすいです
- クローブが代謝を活性化し、エネルギーを作ります
冬こそ、クローブを積極的に取り入れる最適な季節です。
クローブを使った簡単レシピ3選|ホットドリンク・スープ・お粥
クローブ×紅茶|香りで巡りを促す”温活チャイ”
材料(1杯分)
- 水:100ml
- 牛乳または豆乳:100ml
- 紅茶葉(またはティーバッグ):小さじ1(またはティーバッグ1個)
- クローブ:3粒
- シナモンスティック:1本
- 生姜:2片(薄切り)
- カルダモン:2粒(潰す、お好みで)
- 黒糖またははちみつ:小さじ1〜2
作り方
- 鍋に水、クローブ、シナモン、生姜、カルダモンを入れて、弱火で5分煮出します
- 紅茶葉を加えて、さらに2分煮出します
- 牛乳を加えて、沸騰直前まで温めます
- 茶こしで濾してカップに注ぎます
- 黒糖またははちみつを加えて、よく混ぜます
効果
- 体を芯から温め、陽気を高めます
- 香りで気を巡らせ、ストレスを和らげます
- 消化を助け、胃腸を整えます
- 免疫力を高めます
おすすめのタイミング
- 朝起きてすぐ
- 午後のリラックスタイム
- 冷えを感じるとき
- 風邪の引き始め
クローブ×スープ|胃の冷えを癒す”温腎スープ”
材料(2人分)
- 鶏手羽元:4本
- 大根:150g
- にんじん:1本
- 長ねぎ:1本
- 生姜:3片(薄切り)
- クローブ:5粒
- ナツメ:3個
- クコの実:大さじ1
- 水:600ml
- 塩:小さじ1/2
- 醤油:小さじ1
作り方
- 鶏手羽元は熱湯でさっと茹でて、臭みを取ります
- 大根、にんじんは乱切り、長ねぎは3cm幅に切ります
- 鍋に水、鶏手羽元、大根、にんじん、生姜、クローブ、ナツメを入れて、強火にかけます
- 沸騰したら弱火にして、蓋をして30分煮込みます
- 長ねぎとクコの実を加えて、さらに5分煮ます
- 塩と醤油で味を整えます
効果
- 胃腸を温め、消化を助けます
- 陽気を補い、疲労を回復します
- 免疫力を高め、風邪を予防します
- 腎の陽気を高め、冷えを根本から改善します
おすすめのタイミング
- 夕食に
- 体が冷えているとき
- 疲れているとき
- 冬の寒い日
クローブ×お粥|朝のエネルギーを整える”薬膳クローブ粥”
材料(2人分)
- 米:1/2カップ
- 水:4カップ
- クローブ:3粒
- 生姜:2片(薄切り)
- ナツメ:3個
- 陳皮:2片
- 塩:少々
作り方
- 米は洗って、30分水に浸します
- 鍋に米、水、クローブ、生姜、ナツメ、陳皮を入れます
- 強火で沸騰させ、その後弱火にして蓋をします
- 40〜50分、時々かき混ぜながら煮ます
- 米が柔らかくなり、とろみが出たら完成です
- 塩で味を整えます(クローブは取り出してもそのままでも可)
効果
- 胃腸を温め、消化を助けます
- 陽気を補い、一日のエネルギーを整えます
- 食欲を増進させます
- 体を優しく温めます
おすすめのタイミング
- 朝食に
- 胃腸が弱っているとき
- 食欲がないとき
- 体調が悪いとき
スパイスが苦手な人でも飲みやすくするコツ
クローブは香りが強いため、苦手な人もいます。以下の工夫で、飲みやすくなります。
1. 量を減らす
- 最初は少量(1〜2粒)から始めます
- 慣れてきたら、徐々に増やします
2. 甘味を加える
- はちみつ、黒糖、メープルシロップを加えると、飲みやすくなります
- 甘味がクローブの強い香りを和らげます
3. 牛乳や豆乳と組み合わせる
- 牛乳や豆乳のまろやかさが、クローブの香りを包み込みます
- チャイやミルクティーがおすすめです
4. 柑橘類と組み合わせる
- レモン、オレンジ、陳皮などの柑橘類が、爽やかさを加えます
- クローブの重さが軽減されます
5. 他のスパイスと組み合わせる
- シナモン、生姜、カルダモンなどと組み合わせると、香りが多層的になります
- クローブだけの強い香りが緩和されます
6. 煮出し時間を短くする
- 煮出し時間を短くすると、香りが穏やかになります
- 3〜5分の煮出しから始めます
これらの工夫で、クローブが苦手な人でも、美味しく楽しめます。
陽気を高めるための+α:クローブ×他の温め食材の組み合わせ術
相乗効果を生む”温性食材コンビ”とは
クローブは、他の温性食材と組み合わせることで、効果が倍増します。
温性食材の協力関係
- クローブ:陽気を高め、胃腸を温める
- 生姜:体表を温め、発汗を促す
- シナモン:血管を温め、血流を良くする
- 黒糖:気を補い、温める
これらを組み合わせることで、体の異なる部分に働きかけ、全身が温まります。
相乗効果のメカニズム
- 胃腸から温める(クローブ、生姜)
- 血流を良くする(シナモン、黒糖)
- 陽気を高める(クローブ、シナモン、黒糖)
- 気を巡らせる(生姜、クローブ)
全方位から体を温めることで、冷えが根本から改善されます。
生姜・桂皮(シナモン)・黒糖・ねぎの使い分け
生姜
- 性味:温性・辛味
- 働き:発汗解表、温中止嘔
- 適している症状:風邪の初期症状、吐き気、胃の冷え
- クローブとの組み合わせ:胃の冷え、吐き気、しゃっくりに最適
桂皮(シナモン)
- 性味:熱性・甘味・辛味
- 働き:温中散寒、温経通脈
- 適している症状:強い冷え、生理痛、手足の冷え
- クローブとの組み合わせ:慢性的な冷え、陽気の大幅な底上げに最適
黒糖
- 性味:温性・甘味
- 働き:温補、益気、活血
- 適している症状:疲労、貧血、生理痛
- クローブとの組み合わせ:疲労回復、陽気を補うのに最適
ねぎ
- 性味:温性・辛味
- 働き:発汗解表、通陽
- 適している症状:風邪の初期症状、冷えによる腹痛
- クローブとの組み合わせ:風邪の予防、気の巡りを良くするのに最適
使い分けの目安
- 胃の冷え、吐き気:クローブ+生姜
- 強い冷え性:クローブ+シナモン+黒糖
- 疲労、貧血:クローブ+黒糖+ナツメ
- 風邪の予防:クローブ+ねぎ+生姜
陽気を底上げする1日の取り入れ方(朝・昼・夜)
朝(陽気を目覚めさせる)
クローブチャイ
- クローブ3粒、シナモン1本、生姜2片、紅茶、牛乳、黒糖
- 体を目覚めさせ、一日のエネルギーを整えます
クローブ粥
- 米、クローブ3粒、生姜、ナツメ、陳皮
- 胃腸を温め、消化を助けます
昼(陽気を維持する)
クローブ香味油を使った料理
- 炒め物、スープに数滴垂らします
- 消化を助け、午後のエネルギーを補います
クローブ入りカレー
- カレーにクローブを加えます
- 体を温め、食欲を増進させます
夜(陽気を補充する)
クローブスープ
- 鶏肉、根菜、クローブ、生姜、ナツメ
- 疲労を回復し、翌日のエネルギーを蓄えます
クローブミルク
- 牛乳、クローブ2粒、シナモン、はちみつ
- 体を温め、リラックスし、よく眠れます
入浴後
- クローブチャイやクローブミルクを飲みます
- 体が温まっている状態で飲むと、効果が高まります
“陽気が巡る食卓”を作るシンプルルール
ルール1:温性食材を中心にする
- クローブ、生姜、シナモン、ねぎ、にんにく、羊肉、鶏肉、黒糖を積極的に使います
ルール2:冷たいものを避ける
- 冷たい飲み物、アイス、生野菜サラダは控えめにします
- 温かい料理、温かい飲み物を選びます
ルール3:香りを活かす
- クローブなどのスパイスの香りを楽しみます
- 香りが気を巡らせ、陽気を高めます
ルール4:よく噛んで食べる
- よく噛むことで、胃腸の負担が減り、陽気が節約されます
ルール5:腹八分目を守る
- 食べすぎは、胃腸に負担をかけ、陽気を消耗します
- 腹八分目で満足します
ルール6:季節に合わせる
- 冬は温性食材を多く、夏は控えめにします
- 季節の食材を取り入れます
これらのルールを守ることで、陽気が巡る食卓が実現します。
摂り方と注意点:量・タイミング・避けたほうがいい体質
1日の目安量と安全な摂取頻度(ホール/粉末)
ホール(粒)の場合
- 1日の目安量:3〜5粒
- 料理やお茶に入れて使います
- 煮出して使う場合は、香りが強いため、3粒程度から始めます
粉末の場合
- 1日の目安量:小さじ1/4〜1/2(約0.5〜1g)
- 料理に混ぜたり、ドリンクに加えたりします
- 粉末は香りが強いため、少量から始めます
摂取頻度
- 毎日摂取しても問題ありませんが、体調に合わせて調整します
- 陽虚体質の人:毎日摂取しても良いです
- 普通の体質の人:週3〜4回程度が適量です
- のぼせやすい人:週1〜2回、または摂取を控えます
注意点
- 過剰摂取は避けましょう(1日10粒以上、または粉末小さじ1以上)
- 香りが強いため、少量から始めて、体の反応を見ながら調整します
- 長期的に大量摂取すると、体に熱がこもる可能性があります
摂るベストタイミング(冷える夜・入浴後・冬場)
時間帯別のベストタイミング
朝(6〜10時)
- 陽気を目覚めさせるのに最適な時間帯です
- クローブチャイやクローブ粥を摂ります
- 体を温め、一日のエネルギーを整えます
昼(12〜14時)
- 消化を助けるのに適した時間帯です
- 食事にクローブを加えた料理を摂ります
- 胃腸を温め、消化を促進します
夕方〜夜(17〜21時)
- 体が冷え始める時間帯です
- クローブスープやクローブミルクを摂ります
- 疲労を回復し、体を温めます
シチュエーション別のベストタイミング
冷えを感じたとき
- すぐにクローブチャイを飲みます
- 体が速やかに温まります
入浴後
- 入浴で体が温まっている状態で、クローブドリンクを飲みます
- 温め効果が持続し、よく眠れます
食前30分
- 胃腸を温め、食欲を増進させます
- 消化の準備が整います
寝る1〜2時間前
- クローブミルクを飲みます
- 体を温め、リラックスし、睡眠の質が高まります
季節別のベストタイミング
冬(12〜2月)
- 毎日、朝・昼・夜に摂ります
- 陽気が最も不足する季節なので、積極的に摂取します
春・秋(3〜5月、9〜11月)
- 週3〜4回、朝または夜に摂ります
- 季節の変わり目で体調を崩しやすいため、適度に摂取します
夏(6〜8月)
- 摂取を控えます
- どうしても摂る場合は、週1回程度、ごく少量にします
妊娠中・授乳中・胃が弱い人の注意点
妊娠中
- クローブには子宮収縮作用がある可能性があるため、妊娠中は控えめにします
- 料理の香り付け程度(1〜2粒)なら、問題ないとされています
- 大量摂取は避けてください
- 心配な場合は、医師に相談してください
授乳中
- 適量であれば問題ありません
- ただし、クローブの成分が母乳に移行する可能性があるため、控えめにします
- 1日3粒程度なら、問題ないとされています
- 赤ちゃんの様子を観察しながら使用してください
胃が弱い人(胃炎・胃潰瘍)
- クローブの辛味と温性が、胃の粘膜を刺激することがあります
- 胃炎や胃潰瘍がある人は、控えめにするか、使用を避けます
- 使用する場合は、少量から始め、症状が悪化しないか確認します
- 胃が痛くなったら、すぐに使用を中止します
- 医師に相談してから使用してください
その他の注意が必要な人
出血傾向がある人
- クローブには抗凝固作用(血液をサラサラにする)があります
- 出血しやすい人、抗凝固薬を服用している人は、医師に相談してください
手術予定がある人
- 手術の2週間前からクローブの摂取を控えます
- 出血リスクが高まる可能性があります
アレルギー
- まれにアレルギー反応を起こすことがあります
- 初めて使う場合は、少量から試してください
- 発疹、かゆみ、呼吸困難などの症状が出たら、すぐに使用を中止し、医師に相談してください
子ども
- 2歳未満の子どもには使用を避けます
- 2歳以上の子どもには、大人の1/4〜1/2の量から始めます
- 香りが強いため、嫌がる場合は無理に与えないでください
“熱証タイプ”は逆効果になることも
熱証タイプの特徴
- 体に熱がこもっている状態です
- のぼせ、ほてり、顔が赤い
- 暑がり、冷たいものを好む
- 口渇、喉の渇き
- 便秘、尿の色が濃い
- イライラしやすい
- 不眠、夢が多い
熱証タイプがクローブを摂ると起こること
- 体の熱がさらに増します
- のぼせ、ほてりが悪化します
- 口渇、便秘が悪化します
- イライラ、不眠が悪化します
- ニキビ、吹き出物が増えます
熱証タイプにおすすめの食材
- 冷やす食材:きゅうり、トマト、豆腐、緑豆
- 潤す食材:白きくらげ、はちみつ、梨、ゆり根
- 熱を冷ます食材:菊花、ミント、緑茶
判断に迷う場合
- 専門家(中医師、薬膳師)に相談してください
- 少量から試して、体の反応を観察してください
- 何か異常を感じたら、すぐに使用を中止してください
さらに深めたい方へ:クローブの香り・成分・薬膳理論から見る温め力
クローブの主成分”オイゲノール”が持つ温めメカニズム
クローブの主要成分は、オイゲノール(Eugenol)です。
オイゲノールの含有量
- クローブの精油成分の70〜90%を占めます
- 香りの主成分で、甘くスパイシーな香りの元です
オイゲノールの働き
1. 血管拡張作用
- 血管を拡張し、血流を増加させます
- 手足の末端まで血液が行き渡り、温かくなります
2. 体温上昇作用
- 体内の代謝を活性化し、熱を産生します
- 基礎体温が上昇し、冷えにくい体質になります
3. 鎮痛作用
- 歯痛、頭痛、関節痛などの痛みを和らげます
- 古くから歯痛止めとして使われてきました
4. 抗菌・抗ウイルス作用
- 細菌やウイルスの増殖を抑えます
- 風邪やインフルエンザの予防に効果的です
5. 抗酸化作用
- 活性酸素を除去し、細胞の老化を防ぎます
- アンチエイジング効果があります
6. 消化促進作用
- 胃液の分泌を促進し、消化を助けます
- 食欲を増進させます
7. 抗炎症作用
- 炎症を抑え、腫れや痛みを和らげます
- 関節炎、筋肉痛に効果的です
温めメカニズムの詳細
- オイゲノールが、体内のTRPV1受容体(温度感知受容体)を刺激します
- 温感が生じ、体が温かく感じます
- 血管が拡張し、血流が増加します
- 代謝が活性化され、熱が産生されます
- 体温が上昇し、全身が温まります
オイゲノールは、科学的にも温め効果が証明されている成分です。
古典の処方「丁香柿蔕湯」に学ぶ、胃を温める知恵
「丁香柿蔕湯(ちょうこうしていとう)」は、中国の古典医学書に記載されている漢方処方です。
構成
- 丁香(クローブ):温中降逆、散寒止痛
- 柿蔕(柿のへた):降逆止噦(気の逆上を抑え、しゃっくりを止める)
- 生姜:温中散寒、止嘔
- 人参:補気健脾(気を補い、胃腸を整える)
主治
- 胃寒(胃の冷え)によるしゃっくり、吐き気、嘔吐
- 冷えによる胃痛、食欲不振
効能
- 胃を温め、気の逆上を抑えます
- しゃっくりを止め、吐き気を和らげます
- 胃腸の働きを正常に戻します
現代的な応用 この処方から学べることは、クローブと生姜の組み合わせが、胃の冷えに非常に効果的だということです。
家庭でできる応用レシピ
- クローブ生姜茶:クローブ3粒、生姜3片、熱湯200ml、はちみつ小さじ1
- 5分蒸らして飲みます
- しゃっくり、吐き気、胃の冷えに効果的です
香りの効能:気を巡らせ、集中力を高める
クローブの香りには、気を巡らせる力があります。
香りと気の関係
- 薬膳では、「香り」は気を巡らせる重要な要素です
- 気が滞ると、お腹の張り、ゲップ、イライラ、ため息といった症状が現れます
- クローブの香りは、滞った気を動かし、これらの症状を解消します
香りによる効果
1. 気を巡らせる(理気)
- お腹の張り、ゲップが解消されます
- 胸のつかえが取れます
2. ストレスを和らげる(解鬱)
- イライラ、不安が軽減されます
- 心が落ち着きます
3. 集中力を高める
- 頭がすっきりします
- 仕事や勉強に集中できます
4. 記憶力を向上させる
- 嗅覚は、記憶と強く結びついています
- クローブの香りが、記憶の定着を助けます
香りの活用法
アロマディフューザー
- クローブの精油を数滴垂らします
- 部屋全体に香りが広がり、気が巡ります
ポプリ
- クローブとオレンジの皮を組み合わせて、ポプリを作ります
- 玄関やリビングに置きます
香り袋(サシェ)
- クローブ10粒を小さな布袋に入れます
- デスクや枕元に置きます
- 香りを嗅ぐだけで、気が巡り、集中力が高まります
他スパイスとの比較(シナモン・花椒・山椒との違い)
温め効果の比較
| スパイス | 性味 | 主な働き | 温め効果 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| クローブ | 温性・辛味 | 温中降逆、温腎助陽 | 強い | 陽気を高める、しゃっくりを止める |
| シナモン | 熱性・甘味・辛味 | 温中散寒、温経通脈 | 非常に強い | 最も温め効果が強い、血の巡りを良くする |
| 花椒 | 温性・辛味 | 温中止痛、殺虫 | 中程度 | しびれる辛味、痛みを和らげる |
| 山椒 | 温性・辛味 | 温中散寒、行気止痛 | 中程度 | 和のスパイス、消化を助ける |
使い分けの目安
クローブ
- 適している症状:胃の冷え、しゃっくり、吐き気、陽気不足
- 特徴:陽気を高める効果が最も高い
- おすすめの人:慢性的な冷え、疲れやすい人
シナモン
- 適している症状:強い冷え、手足の冷え、生理痛、生理不順
- 特徴:温め効果が最も強い、血の巡りを良くする
- おすすめの人:冷え性がひどい人、血の巡りが悪い人
花椒
- 適している症状:冷えによる腹痛、歯痛、寄生虫
- 特徴:しびれる辛味、痛みを強く和らげる
- おすすめの人:痛みがある人、四川料理が好きな人
山椒
- 適している症状:冷えによる消化不良、食欲不振、お腹の張り
- 特徴:和の香り、消化を助ける
- おすすめの人:和食が好きな人、胃腸が弱い人
組み合わせの効果
- クローブ+シナモン:最強の温め効果、陽気を大幅に高める
- クローブ+生姜:胃の冷え、吐き気、しゃっくりに最適
- クローブ+山椒:消化促進、気の巡りを良くする
複数のスパイスを組み合わせることで、効果がさらに高まります。
まとめ
クローブは、薬膳で「陽気を高める温めスパイス」として古くから重宝されてきました。温中降逆・温腎助陽・散寒止痛の働きがあり、冷え性、胃の冷え、疲労、しゃっくり、吐き気に効果的です。
オイゲノールという成分が、科学的にも血管拡張・体温上昇・鎮痛効果を裏付けています。クローブチャイ、クローブスープ、クローブ粥など、簡単に日常に取り入れられます。
生姜、シナモン、黒糖といった相性の良い食材と組み合わせることで、効果がさらに高まります。1日3〜5粒(または粉末小さじ1/4〜1/2)の適量を守り、朝・昼・夜のタイミングで摂取することで、陽気が高まり、体が温まります。
ただし、のぼせやすい人、口渇がある人、妊娠中の人は控えめにし、医師に相談してから使用してください。冬は特に積極的に摂取し、夏は控えめにするなど、季節に合わせた使い方が重要です。
今日から、クローブを日常に取り入れて、陽気を高め、体を芯から温め、元気に満ちた毎日を手に入れてみてください。
