「薬膳に興味はあるけど、陰陽とか五行とか、難しい言葉ばかりで何から学べばいいのか分からない……」
そんな風に感じている方も多いのではないでしょうか。
薬膳理論には独特の用語が数多く登場するため、最初は戸惑ってしまうのも無理はありません。しかし、基礎用語の意味と関係性さえ理解できれば、薬膳の考え方は驚くほどシンプルに整理できます。
この記事では、薬膳理論の土台となる「陰陽」「五行」「気血水」をはじめ、食材選びに必要な「四気五味」「帰経」まで、体系的にお伝えしていきます。
用語の暗記ではなく、実生活で使える”考え方の地図”として活用できるようになりましょう!
薬膳理論とは何か?基礎用語を学ぶ前に知っておくべき全体像

薬膳を学び始めるにあたって、まず押さえておきたいのが「薬膳理論の全体像」です。
というのも、陰陽や五行といった個別の用語を学ぶ前に、それらがどのような目的で使われているのかを理解しておくことで、学習がスムーズに進むから。
ここでは、薬膳理論の本質と、基礎用語を学ぶ意義について整理していきます。
薬膳は「特別な料理」ではなく「考え方」である
薬膳とは、中国医学(中医学)の理論に基づいて、食材の性質や体質に合わせて食事を組み立てる考え方のこと。
漢方薬のような特別な材料を使う料理だと思われがちですが、実際にはスーパーで買える普通の食材を、体調や季節に合わせて選ぶという日常的な実践です。
たとえば、体が冷えているときに生姜や羊肉を選ぶ、夏の暑さで疲れたときに豆腐やきゅうりを食べる、といった選択が薬膳の基本。つまり、薬膳理論とは「何を、なぜ、どう食べるか」を判断するための知識体系といえます。
このように、薬膳は特別な料理法ではなく、食材と体の関係を読み解く”ものさし”なのです!
薬膳理論を理解すると何ができるようになるのか
薬膳理論を学ぶと、自分や家族の体調に合わせた食事選びができるようになります。
なぜなら、薬膳理論には「体のどこが弱っているか」「どんな食材がその状態に適しているか」を判断する基準が含まれているから。
具体的には、次のようなことが可能になります。まず、疲れやすい、冷える、むくむといった「なんとなく不調」の原因を気血水の視点で整理できること。そして、季節や体質に応じて、温める食材・冷やす食材を使い分けられること。さらに、レシピではなく「考え方」を理解することで、応用がきく食事作りができるようになることです。
したがって、薬膳理論は単なる知識ではなく、日々の健康管理に活かせる実践的なスキルといえます!
基礎用語は暗記ではなく”地図”として使う
薬膳理論の基礎用語は、覚えるものではなく、体と食材の関係を整理するための”地図”として使うものです。
というのも、陰陽や五行といった概念は、複雑な体の状態をシンプルに分類し、適切な対処法を導き出すための枠組みだから。
たとえば、「最近イライラしやすい」という症状があったとき、五行説では「肝」の不調と関連づけて考えます。すると、肝を整える食材として酸味のあるものや緑色の野菜が候補に挙がり、具体的な食事選びへとつながっていくのです。このように、用語を知っていることで、漠然とした体調不良が整理され、対処法が見えてきます。
ですから、基礎用語は暗記するのではなく、実際の体調や食材選びと結びつけながら理解していくことが大切です!
陰陽論|薬膳理論の土台となる「偏り」の考え方

薬膳理論の最も根本にあるのが、「陰陽論」という考え方です。
陰陽論は、すべての現象を「陰」と「陽」の2つの性質に分類し、そのバランスによって健康や不調を説明する理論。
ここでは、陰陽とは何か、体調にどう関わるのか、そして偏りが起こるパターンについて見ていきます。
陰と陽とは何か?シンプルな基本定義
陰陽論における「陰」と「陽」とは、相対する2つの性質を表す概念のこと。
たとえば、陽は温かい・明るい・動く・上昇する・活発といった性質を持ち、陰は冷たい・暗い・静か・下降する・鎮静といった性質を持ちます。
この分類は絶対的なものではなく、あくまで比較によって決まるのが特徴です。たとえば、水は火に比べれば陰ですが、氷に比べれば陽といえます。また、昼は陽、夜は陰、夏は陽、冬は陰といった具合に、あらゆる現象が陰陽で整理されるのです。
このように、陰陽とは「対になる性質を通じて世界を理解する」ための枠組みといえます!
体調を陰陽で見ると何が分かるのか
体調を陰陽の視点で見ることで、今の体がどちらに偏っているかが分かります。
なぜなら、健康とは陰陽のバランスが取れている状態であり、不調とはどちらかに偏っている状態だと考えるから。
具体的には、陽が過剰になると、のぼせ・ほてり・イライラ・口の渇き・便秘といった症状が現れます。一方、陰が過剰(または陽の不足)になると、冷え・倦怠感・むくみ・下痢・無気力といった症状が出やすくなるのです。
したがって、体調を陰陽で分類することで、温めるべきか冷やすべきか、補うべきか巡らせるべきかといった方向性が見えてきます!
陰陽の偏りが起こる典型パターン
陰陽の偏りは、主に「過剰」「不足」「停滞」の3つのパターンで起こります。
まず、陽が過剰になるケースでは、ストレス・睡眠不足・辛い物や刺激物の摂りすぎなどが原因となり、体に熱がこもった状態になります。次に、陰が不足するケースでは、過労・夜更かし・水分不足などによって体を冷やす力が弱まり、結果として相対的に陽が強まるのです。そして、陰が過剰(陽の不足)になるケースでは、冷たいものの摂りすぎ・運動不足・体を温める力の低下などが引き金となります。
このように、陰陽の偏りは生活習慣や食事内容と密接に関わっているため、日常の選択を見直すことでバランスを整えられます!
五行説と五臓の関係|季節・感情・食材がつながる理由

陰陽論と並んで薬膳理論の柱となるのが、「五行説」です。
五行説とは、自然界のあらゆる現象を「木・火・土・金・水」の5つの要素に分類し、それぞれの関係性を通じて変化を説明する理論。
ここでは、五行の基本構造と、五臓との対応関係、そして季節や感情がどうつながるのかを整理していきます。
五行説(木・火・土・金・水)の基本構造
五行説における「木・火・土・金・水」とは、自然界の基本的なエネルギーの形を表す5つのカテゴリーのこと。
それぞれの要素には「相生(そうせい)」と「相克(そうこく)」という関係性があります。
相生とは、ある要素が次の要素を生み出す関係です。たとえば、木は燃えて火を生み、火は燃え尽きて土(灰)を生み、土は金属を生み、金属は水を生み、水は木を育てるという循環が成り立ちます。一方、相克とは、ある要素が別の要素を抑制する関係のこと。木は土を固定し、土は水を堰き止め、水は火を消し、火は金属を溶かし、金属は木を切るという関係です。
このように、五行説は単なる分類ではなく、要素同士の影響関係を通じて、体や自然のバランスを理解するための仕組みといえます!
五行と五臓の対応関係
中医学では、五行それぞれに対応する「五臓」があり、体の機能を5つのグループに分けて考えます。
具体的には、木は「肝」、火は「心」、土は「脾」、金は「肺」、水は「腎」に対応しているのです。
ここでいう五臓は、西洋医学の臓器とは少し異なり、より広い機能や役割を指します。たとえば、肝は血液の貯蔵や気の流れをスムーズにする働き、心は血液循環と精神活動を担う働き、脾は消化吸収とエネルギー生成の働き、肺は呼吸と水分代謝の働き、腎は生命エネルギー(精)の貯蔵と成長・老化に関わる働きを持つとされています。
したがって、五行と五臓を結びつけることで、体のどの機能が弱っているかを整理しやすくなるのです!
季節・感情・体調が五行で説明できる理由
五行説では、季節・感情・味・色・体の部位など、あらゆる要素が5つのカテゴリーに対応づけられています。
なぜなら、中医学では人間も自然の一部であり、季節の変化や環境の影響を受けて体調が変化すると考えるから。
たとえば、春は「木」に対応し、肝が活発になる時期です。そのため、春にイライラしやすくなったり、目の不調が出やすくなったりするのは、肝の働きが高まることと関係しています。また、夏は「火」に対応し心が活発になるため、動悸や不眠が起こりやすく、梅雨から夏の終わりは「土」に対応し脾が影響を受けやすいため、消化不良やむくみが出やすいのです。
このように、五行説を使うことで、季節ごとの体調変化を予測し、適切な食材選びや生活習慣の調整ができるようになります!
気・血・水(津液)とは?不調を見抜くための基本要素

薬膳理論において、体を支える3つの基本要素が「気・血・水(津液)」です。
この3つは、体の中を巡り、生命活動を維持するために欠かせないもの。
ここでは、それぞれの役割と違い、そして不足や停滞がどんな不調を引き起こすのかを見ていきます。
気・血・水それぞれの役割と違い
気・血・水とは、体内を循環しながら健康を支える3つの要素のこと。
まず「気」は、エネルギーや生命力そのものを指し、体を動かす・温める・守るといった働きを担います。次に「血」は、栄養を全身に運び、臓器や組織を滋養する役割を持つものです。そして「水(津液)」は、体液全般を指し、体を潤す・冷やす・老廃物を排出するといった働きをします。
これら3つは互いに影響し合いながら体内を巡っており、どれか1つでも不足したり停滞したりすると、さまざまな不調が現れるのです。
したがって、気・血・水のバランスと巡りを整えることが、薬膳における健康管理の基本といえます!
気虚・血虚・水滞とはどういう状態か
気・血・水にはそれぞれ「不足」と「停滞」という2つの不調パターンがあります。
まず「気虚」とは、気が不足している状態のこと。疲れやすい・だるい・風邪をひきやすい・食欲がないといった症状が現れます。次に「血虚」とは、血が不足している状態で、めまい・貧血・肌の乾燥・髪のパサつき・不眠などが特徴です。そして「水滞(津液不足も含む)」とは、水の巡りが悪く体内に余分な水分が溜まった状態を指し、むくみ・重だるさ・頭痛・めまいなどが起こります。
このように、気・血・水のどれが不足しているか、あるいは停滞しているかを見極めることで、適切な食材や生活習慣の選択ができるようになるのです!
「なんとなく不調」を気血水で言語化する
気血水の考え方を使うと、「なんとなく調子が悪い」という漠然とした不調を、具体的な言葉で整理できます。
というのも、病院に行くほどではないけれど気になる症状の多くは、気血水のバランスの乱れとして説明できるから。
たとえば、「疲れやすくて朝起きられない」という症状は気虚、「顔色が悪くて爪が割れやすい」という症状は血虚、「足がむくんで体が重い」という症状は水滞と考えられます。このように分類することで、単に「疲れている」で終わらせず、「気を補う食材を摂ろう」といった具体的なアクションにつながるのです。
ですから、気血水は不調を言語化し、セルフケアの方向性を明確にするための便利なツールといえます!
四気(五性)・五味・帰経|食材をどう選ぶかの判断基準

薬膳では、食材そのものにも性質があり、それを理解することで適切な選択ができるようになります。
その性質を表すのが「四気(五性)」「五味」「帰経」という3つの概念です。
ここでは、それぞれの意味と、食材選びにどう活かすのかを整理していきます。
四気(五性)とは?温める・冷やすの考え方
四気(五性)とは、食材が体を温めるか冷やすかを表す性質のこと。
具体的には、「熱・温・平・涼・寒」の5段階に分類されます。
「熱」と「温」は体を温める性質を持ち、冷え性や寒がりの人に適しています。たとえば、生姜・にんにく・羊肉・唐辛子などが該当するのです。一方、「寒」と「涼」は体を冷やす性質を持ち、ほてりや暑がりの人に向いています。きゅうり・トマト・豆腐・緑茶などがこれに当たります。そして「平」は、温めも冷やしもしない穏やかな性質で、米・芋類・卵など日常的に食べやすい食材が多いのです。
このように、四気を知ることで、自分の体質や季節に合わせた食材選びができるようになります!
五味とは「味」ではなく「働き」である
五味とは、「酸・苦・甘・辛・鹹(かん)」という5つの味覚に基づく分類ですが、実際には味そのものよりも「体への働き」を表す概念です。
たとえば、「酸」には収れん作用があり、汗や尿を引き締める働きがあります。梅干しやレモンが該当し、寝汗や頻尿の改善に役立つのです。次に「苦」には、熱を冷まし、余分な水分を排出する働きがあり、ゴーヤやお茶などが代表例。そして「甘」には、エネルギーを補い、緊張を緩める働きがあり、米・芋・蜂蜜などが含まれます。また「辛」には、気や血の巡りを良くし、発散させる働きがあり、生姜・ネギ・大葉などが該当します。最後に「鹹(塩辛い)」には、硬いものを柔らかくし、下へ導く働きがあり、海藻類や貝類が代表的です。
したがって、五味は単なる味覚ではなく、体にどう作用するかを示す指標として使われます!
帰経とは何か?食材が体のどこに作用するか
帰経とは、その食材がどの臓腑(五臓)に作用しやすいかを示す概念のこと。
たとえば、セロリは「肝」に帰経するとされ、イライラや目の疲れに良いとされます。また、山芋は「脾・肺・腎」に帰経するため、消化機能の強化や滋養強壮に役立つのです。
この帰経を知ることで、単に「体にいい」という漠然とした理解ではなく、「今の自分のどこに効くのか」を具体的に判断できるようになります。たとえば、咳が気になるときは肺に帰経する食材(梨・白キクラゲなど)を、消化不良が気になるときは脾に帰経する食材(山芋・かぼちゃなど)を選ぶといった具合です。
このように、帰経は食材の作用部位を明確にし、より的確な食事選びを可能にします!
体質別に薬膳理論をどう使い分けるのか【次に知りたくなる視点】

ここまで、薬膳理論の基礎用語を一通り整理してきました。
しかし、実際に薬膳を日常に取り入れるには、「自分の体質に合わせてどう使い分けるか」という視点が欠かせません。
ここでは、体質を見る重要性と、薬膳理論を実生活に落とし込む考え方についてお伝えしていきます。
なぜ体質を見ないと薬膳はうまくいかないのか
薬膳において、体質を見ることは最も重要なステップです。
なぜなら、同じ食材でも、体質によっては効果が出なかったり、かえって不調を招いたりすることがあるから。
たとえば、冷え性で陽虚タイプの人が体を冷やす食材(トマトやきゅうり)を多く摂ると、さらに冷えが悪化してしまいます。逆に、ほてりやすく陰虚タイプの人が温める食材(生姜やにんにく)ばかり食べると、余計に熱がこもって不調が増すのです。
したがって、薬膳理論を使う際には、まず自分が「陰陽どちらに傾いているか」「気血水のどれが不足・停滞しているか」を見極めることが大切です!
薬膳理論を日常の食事に落とし込む考え方
薬膳理論を日常に活かすコツは、「完璧を目指さず、少しずつ意識する」ことです。
というのも、毎食すべての理論を適用しようとすると、かえって続かなくなってしまうから。
まずは、自分の体質や今の季節を意識して、食材を1〜2品選ぶところから始めてみてください。たとえば、冷えが気になるなら温性の生姜をスープに加える、乾燥が気になるなら潤す働きのある白キクラゲをデザートに取り入れる、といった小さな工夫で十分です。また、四気五味や帰経をすべて覚える必要はなく、「この食材は体を温める」「この食材は気を補う」といった大まかな分類だけでも、日々の選択が変わってきます。
このように、薬膳理論は完璧にこなすものではなく、日常の中で少しずつ意識を向けることで効果を実感できるものなのです!
まず意識すべき「温める・潤す・巡らせる」
薬膳を始める際、最初に意識したいのが「温める・潤す・巡らせる」という3つの軸です。
なぜなら、多くの不調はこの3つのどれかが不足していることで起こるから。
まず「温める」は、冷え・だるさ・消化不良など陽の不足に対応します。生姜・ネギ・鶏肉などを取り入れることで改善が期待できるのです。次に「潤す」は、乾燥・便秘・肌荒れなど陰の不足に対応します。白キクラゲ・梨・豆乳などが役立ちます。そして「巡らせる」は、むくみ・イライラ・肩こりなど気血水の停滞に対応します。大葉・セロリ・玉ねぎなどが有効です。
ですから、まずは自分の不調が「温める・潤す・巡らせる」のどれに当てはまるかを考え、それに合った食材を1つ選ぶところから始めてみてください!
まとめ

薬膳理論は、陰陽・五行・気血水という基礎用語を軸に、体質や季節に合わせた食材選びを可能にする考え方です。
これらの用語を暗記するのではなく、「体のどこが偏っているか」「どんな食材がその状態に合うか」を整理するための”地図”として活用することで、日常の食事が健康管理の手段へと変わっていきます。
まずは、自分の体質や今の季節を意識しながら、「温める・潤す・巡らせる」という3つの軸で食材を選んでみてください。小さな工夫の積み重ねが、やがて体調の変化として実感できるはずです。
薬膳理論を学ぶことで、あなた自身が自分の体と向き合い、食を通じて健やかな毎日を築いていけることを願っています!




