薬膳の甘草とは?「緩和・調和薬」と呼ばれる理由や期待できる働き・注意点を解説

「甘草って名前は聞いたことあるけど、どんな生薬なんだろう?」
そんな疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
甘草は、薬膳や漢方の世界で古くから「調和薬」として重宝されてきた生薬です。
のどの痛みや胃腸の不快感をやわらげたり、他の生薬の働きを整えたりと、さまざまな場面で活躍します。
この記事では、甘草の基本的な特徴から期待できる働き、取り入れ方、注意点まで幅広くお伝えしていきます。
甘草を日々の食事に取り入れてみたいと感じている方は、ぜひ最後まで読んでみてください!
甘草とは?薬膳で「調和薬」と呼ばれる理由

薬膳や漢方において、甘草は非常に重要な位置を占める生薬のひとつです。
ここでは甘草の基本的な特徴と、なぜ「調和薬」と呼ばれるのかについてお伝えしていきます。
甘草はどんな生薬?名前の由来も解説
甘草とは、マメ科に属する多年草植物の根や根茎を乾燥させた生薬のことです。
中国・モンゴル・ロシアなどの乾燥した地域に自生しており、日本では生薬として輸入されるものが一般的に流通しています。
名前の由来は、その名の通り「甘い草」にあります。
根を噛むと感じる独特の甘みが名前の由来となっており、甘み成分であるグリチルリチンはショ糖の約150倍もの甘さを持つとされています。
日本薬局方にも収載されており、漢方薬や薬膳だけでなく、食品・医薬品・化粧品など幅広い分野で活用されている生薬です。
薬膳で甘草が「調和薬」とされる理由
薬膳の世界で甘草が「調和薬」と呼ばれる理由は、他の食材や生薬の働きを整え、まとめる役割を担うからです。
単独で使うよりも、複数の食材・生薬と組み合わせることで真価を発揮するとされています。
具体的には、強すぎる生薬の刺激をやわらげたり、複数の食材の性質をバランス良くまとめたりする働きが期待されています。
薬膳では「使臣薬(しかんやく)」とも呼ばれ、全体の調和を保つ役割を担う生薬として位置づけられています。
このような特性から、甘草は単なる食材としてではなく、薬膳全体のバランサーとして重用されてきました。
甘草の「甘味」が持つ薬膳的な意味
薬膳では、食材の味それぞれに意味があると考えられています。
甘草が持つ「甘味」は、薬膳において「補う・緩和する・調和する」という働きを持つとされています。
甘味の食材は、気を補い体力を回復させる働きや、緊張をほぐしてリラックスを促す作用があると考えられています。
また、辛味や苦味といった刺激の強い味を緩和する役割も担うとされており、この性質が調和薬としての甘草の特徴を形成しています。
甘草の甘味は単なる風味づけではなく、薬膳的に意味のある性質として扱われている点が興味深いところです。
五性・五味・帰経から見る甘草の特徴
薬膳では、食材を「五性・五味・帰経」という3つの観点で分類します。
甘草のそれぞれの特徴を確認していきます。
五性とは食材の温熱寒涼平という5つの性質のことで、甘草は「平性」に分類されます。
平性とは体を温めも冷やしもしない中庸な性質を指し、体質を選ばず広く活用できることを意味します。
五味における甘草は「甘味」に属し、先述の通り補う・緩和する働きと結びついています。
帰経は食材が特に作用する臓腑を示すもので、甘草は「心・肺・脾・胃」に帰経するとされており、消化器系や呼吸器系への働きかけが期待されています。
甘草にはどんな緩和作用がある?期待される働きを解説

甘草は「緩和薬」とも呼ばれるように、さまざまな不快な症状をやわらげる働きが期待されています。
ここでは、具体的にどのような場面で活用されてきたかを取り上げていきます。
のどの痛みや咳をやわらげる働き
甘草が帰経する「肺」は、薬膳において呼吸や皮膚・のどと深い関わりを持つ臓腑です。
そのため、のどの痛みや乾燥、咳といった呼吸器系の不快感に対するアプローチとして、甘草は長く活用されてきました。
甘草の甘みと潤す性質が、乾燥したのどをやさしくケアするとされています。
風邪の引き始めや、季節の変わり目にのどの違和感を感じやすい方にとって、取り入れやすい選択肢のひとつです。
のどのケアには、甘草茶として飲む方法が特に手軽でおすすめです。
胃腸の不快感を整えるサポート
甘草が帰経する臓腑には「脾・胃」も含まれており、消化器系への働きかけも期待されています。
薬膳では脾胃は消化吸収の要とされており、ここが乱れると食欲不振・胃もたれ・下痢・便秘などの不調が現れやすいと考えられています。
甘草の補う・緩和するという性質が、胃腸への刺激をやわらげ、消化機能を整えるサポートをするとされています。
食べすぎや胃腸の疲れが気になる時期に、食事の中に甘草を取り入れてみることも一つの方法です。
ただし、胃腸の不調が強い場合や長引く場合は、医療機関への相談を優先することが大切です。
筋肉の緊張やこむら返りとの関係
甘草は筋肉の緊張をほぐし、けいれんをやわらげる働きも期待されている生薬です。
薬膳・漢方では「緩急止痛(かんきゅうしつう)」といって、急な痛みや引きつりを緩和する作用があるとされています。
代表的な活用例として知られるのが、こむら返り(足がつる)への対応です。
芍薬甘草湯という漢方薬は、この筋肉のけいれんをやわらげる目的で広く使われており、甘草はその重要な構成生薬のひとつです。
薬膳として日常的に取り入れることで、筋肉の緊張をやわらげるサポートが期待できますが、強い痛みや頻繁なこむら返りが続く場合は医師への相談も大切です。
他の生薬の刺激をやわらげる役割
甘草の調和薬としての特徴が最も発揮される場面のひとつが、他の生薬の刺激をやわらげる役割です。
漢方処方の多くに甘草が含まれているのは、この「緩和」の性質が大きく関係しています。
強い発汗作用や利尿作用を持つ生薬、あるいは体への刺激が強い生薬と組み合わせることで、甘草はその作用を過剰にならないよう整える働きをするとされています。
また、甘草自身が持つ甘みは、苦みや辛みの強い生薬の飲みやすさを改善する効果もあります。
このように、甘草は主役として働くというよりも、全体のバランスを保つ「縁の下の力持ち」的な存在といえます。
薬膳での甘草の取り入れ方|お茶・料理への使い方

甘草は日常の食事やお茶に取り入れやすい生薬のひとつです。
ここでは具体的な活用方法とポイントをお伝えしていきます。
甘草茶として取り入れる方法
甘草を最も手軽に取り入れる方法が、お茶として飲む形です。
乾燥した甘草の根(スライス状)をお湯で煎じるだけで、自然な甘みを持つお茶が出来上がります。
作り方はシンプルで、水500ml に対して甘草3〜5g を加え、弱火で10〜15分ほど煮出すだけです。
そのままでも十分な甘みがありますが、生姜やなつめを加えると風味が豊かになります。
毎日継続することが大切なので、無理なく飲み続けられる量と濃さで取り入れてみてください!
スープや煮込み料理で使うコツ
甘草はスープや煮込み料理にも活用できる生薬です。
だし代わりに数枚加えるだけで、料理全体にやさしい甘みと薬膳らしい風味が加わります。
鶏肉・なつめ・生姜と合わせた薬膳スープに甘草を加えると、全体の味が丸みを帯びてまとまりやすくなります。
ただし、甘草は甘みが強いため入れすぎには注意が必要です。
スープへの使用量は2〜3g 程度を目安にして、他の食材とのバランスを見ながら調整してみてください。
甘草と相性が良い薬膳食材
甘草は調和薬としての性質を持つため、さまざまな食材と相性良く組み合わせられます。
特におすすめの組み合わせとして、生姜・なつめ・陳皮・はちみつが挙げられます。
生姜は体を温めて巡りをサポートし、甘草と合わせることで冷えや胃腸の不快感へのアプローチが期待できます。
なつめは気と血を補う食材として甘草との相性が良く、疲れやすさや気力不足が気になる方に向いています。
陳皮は気の巡りを整える食材で、甘草の補う性質と組み合わせることで消化機能のサポートが期待できます。
はちみつはのどをやさしく潤す性質があり、甘草茶にひとさじ加えるだけでのどケアの効果が高まります。
毎日取り入れる際に意識したいポイント
甘草を日常に取り入れる際に特に意識してほしいのが、摂りすぎないことです。
甘草に含まれるグリチルリチンという成分は、過剰摂取によって血圧上昇やむくみを引き起こす可能性があるとされています。
食品として摂取する場合の目安は、1日1〜2g 程度が安全とされており、薬膳茶や料理への使用量もこの範囲内に収めることが大切です。
また、現在漢方薬や市販薬を服用している方は、そちらにも甘草が含まれている可能性があるため注意が必要です。
少量を継続的に取り入れることを基本として、体調の変化を観察しながら活用してみてください。
甘草を摂る際の注意点|副作用や摂りすぎリスクについて

甘草は幅広く活用されてきた生薬ですが、摂りすぎや体質によっては注意が必要な場合があります。
ここでは特に知っておいてほしい注意点を取り上げていきます。
甘草の摂りすぎで起こる可能性がある不調
甘草に含まれるグリチルリチンは、過剰摂取によって「偽アルドステロン症」と呼ばれる状態を引き起こすリスクがあります。
これは、体内のホルモンバランスに影響を与えることで起こる不調で、むくみ・血圧上昇・低カリウム血症・筋力低下などの症状が現れる可能性があります。
一般的に、グリチルリチンの1日摂取量が200mg を超えると副作用のリスクが高まるとされています。
食品として甘草を少量使う分には問題が少ないとされていますが、複数の食品・サプリメント・医薬品から甘草を同時に摂取している場合は総量に注意が必要です。
むくみ・高血圧との関係
甘草の過剰摂取で特に注意してほしい症状が、むくみと血圧の上昇です。
グリチルリチンはナトリウムを体内に貯留させる働きがあるとされており、その結果として体のむくみや血圧の上昇が起こりやすくなると考えられています。
もともと高血圧やむくみの傾向がある方は、甘草の摂取量に特に気をつけることが重要です。
また、利尿薬を服用している方もカリウムのバランスが乱れやすくなるリスクがあるため、使用前に必ず医師や薬剤師に相談してみてください。
むくみや血圧の変化に気づいた場合は、すぐに使用を中止して医療機関を受診することが大切です。
漢方薬や市販薬との重複摂取に注意
甘草は非常に多くの漢方薬・市販薬に配合されている生薬です。
薬膳として甘草を食事に加える場合、すでに服用中の薬に甘草が含まれていると、意図せずグリチルリチンを過剰摂取してしまうリスクがあります。
特に葛根湯・芍薬甘草湯・加味逍遙散など、身近な漢方薬の多くに甘草が含まれています。
また、甘草エキスを含む市販の胃腸薬・かぜ薬・トローチなどにも注意が必要です。
現在何らかの薬を服用中の方は、薬膳として甘草を取り入れる前に必ず担当医や薬剤師に確認してみてください!
持病がある人や妊娠中の注意点
高血圧・心疾患・腎疾患・肝疾患などの持病がある方は、甘草の使用について医師に相談することが必須です。
これらの疾患がある場合、甘草による血圧上昇やむくみのリスクが通常よりも高まる可能性があります。
妊娠中の方も、甘草の過剰摂取は避けることが推奨されています。
グリチルリチンが胎盤を通過する可能性や、子宮への影響が懸念されることがあるため、使用する場合は必ず産婦人科医に確認してみてください。
授乳中の方も同様に、使用前に医師への相談を優先することが大切です。
甘草が多くの漢方薬に使われる理由|代表的な漢方薬も紹介

甘草は日本で最も多くの漢方処方に含まれる生薬のひとつとされています。
ここでは、なぜそれほど多用されるのかとその背景についてお伝えしていきます。
なぜ多くの漢方薬に甘草が配合されるのか
甘草が多くの漢方薬に配合される最大の理由は、調和薬としての性質にあります。
複数の生薬を組み合わせる漢方において、それぞれの働きを過不足なくまとめる役割を担う存在が必要とされます。
甘草はその役割を果たしながら、同時に補う・緩和するという独自の薬効も発揮します。
平性(体を温めも冷やしもしない)という性質も、体質を選ばず広く使える理由のひとつです。
複数の役割を一度に担えるという点が、甘草が漢方処方において不可欠な存在となった背景といえます。
葛根湯や芍薬甘草湯にも含まれる理由
日本で広く知られる漢方薬のひとつである葛根湯にも、甘草は配合されています。
葛根湯は風邪の引き始めや肩こりに使われることが多い処方で、甘草は他の生薬の強い発汗作用をやわらげ、全体のバランスを整える役割を担っています。
また、こむら返りや筋肉の緊張に用いられる芍薬甘草湯は、芍薬と甘草のたった2種類の生薬で構成されており、甘草が主要な構成成分のひとつです。
この処方においては、甘草が筋肉の緊張をほぐす「緩急止痛」の作用を芍薬と共に担っています。
これらの例からも、甘草が単なる脇役ではなく、漢方処方において重要な役割を持つ存在であることがわかります。
甘草が担う「まとめ役」の働き
漢方の世界では、処方中の生薬を「君臣佐使(くんしんさし)」という4つの役割に分類します。
甘草はこの中の「使薬(しやく)」に該当することが多く、処方全体のまとめ役として機能します。
使薬の役割は、他の生薬の副作用を緩和したり、全体の働きを調整したりすることです。
甘草が持つやわらげる・調和させるという性質はまさにこの役割に合致しており、多くの処方で使薬として活用されてきました。
漢方の観点から見ても、甘草は縁の下の力持ちとして処方全体のクオリティを支える存在といえます。
薬膳と漢方における甘草の違い
薬膳と漢方は同じ東洋医学の思想を背景に持ちますが、甘草の扱われ方には違いがあります。
漢方では甘草は処方薬の構成成分として、医師や薬剤師の指導のもとで使用されるものです。
一方、薬膳においては食材のひとつとして日々の食事やお茶に取り入れるものとして扱われます。
同じ甘草でも、医薬品として使う場合と食として取り入れる場合では量や管理方法が大きく異なります。
薬膳での活用はあくまで食事の延長であり、治療を目的とした漢方薬の使用とは区別して理解することが大切です。
甘草と相性が良い薬膳食材|不調をやさしく整えたい人向けの組み合わせ

甘草は調和薬という性質から、他の食材との組み合わせで相乗効果が期待できます。
ここでは特におすすめの組み合わせ食材を取り上げていきます。
生姜|冷えや巡りが気になる人向け
まず甘草と組み合わせてほしいのが、生姜です。
生姜は薬膳において「温裏薬」として分類され、体の内側から温める働きがあるとされています。
甘草の平性(温めも冷やしもしない)という性質と、生姜の温める性質を合わせることで、冷えが気になる方に向いたバランスの取れた組み合わせになります。
胃腸を温めながら消化機能を整えるサポートも期待できるため、冷えからくる胃腸の不快感が気になる方にも向いている組み合わせです。
甘草茶に生姜を数枚加えるだけで手軽に取り入れられるので、ぜひ試してみてください!
なつめ|気力不足や疲れが気になる人向け
次におすすめしたいのが、なつめとの組み合わせです。
なつめは薬膳で「気と血を補う」食材として知られており、甘草の補う・緩和するという性質と非常に相性が良いとされています。
慢性的な疲れやすさ、気力がわかない、食欲が低下しているといった不調が気になる方に向いている組み合わせです。
なつめ自体に自然な甘みがあるため、甘草と合わせることでお茶や薬膳スープがぐっと飲みやすくなります。
甘草・なつめ・生姜の3つを組み合わせた薬膳茶は、疲れが溜まりやすい時期に特におすすめです。
陳皮|胃腸の重さや気分の滞り対策に
陳皮は乾燥させたみかんの皮を使った薬膳食材で、気の巡りを整える「理気薬(りきやく)」として活用されてきました。
甘草が補う・緩和する働きを持つのに対し、陳皮は滞った気を動かして流れを整える働きが期待されています。
食後の胃の重さや膨満感、気分がすっきりしない時などに、この組み合わせが向いています。
甘草と陳皮を合わせたお茶は、消化機能のサポートと気の巡り改善を同時に狙えるバランスの良い組み合わせです。
陳皮は乾燥みかんの皮で代用できることもあるため、手軽に試してみることもできます。
はちみつ|のどをやさしくケアしたい時に
のどのケアに甘草を取り入れたい場合は、はちみつとの組み合わせが特におすすめです。
はちみつは薬膳において「肺を潤し、のどをやさしくケアする」食材として活用されており、甘草ののどへの働きかけと相乗効果が期待できます。
甘草茶にはちみつをひとさじ加えるだけで、のどへのやさしいアプローチが期待できる飲み物になります。
乾燥が気になる季節や、のどに違和感を覚える時期に取り入れてみることをおすすめします。
ただし、はちみつは1歳未満の乳幼児には与えてはいけないため、お子さんへの使用には注意してみてください!
まとめ

この記事では、薬膳における甘草の特徴と期待できる働き、取り入れ方、注意点についてお伝えしてきました。
甘草は「調和薬・緩和薬」として、のどや胃腸の不快感をやわらげ、他の食材の働きをまとめる役割を担う生薬です。
平性という体質を選ばない性質と、補う・緩和するという甘味の働きが、甘草を幅広い場面で活用できる食材にしています。
一方で、摂りすぎによるむくみや血圧上昇のリスク、漢方薬・市販薬との重複摂取への注意も欠かせません。
持病がある方や妊娠中の方は、必ず医師に相談してから取り入れることを優先してみてください。
日々の食事にやさしく取り入れながら、体の調和を整える一助として甘草を活用してみてください!