「肉や魚を買ってきたけれど、臭みが気になって美味しく仕上がらない」「生姜やねぎを入れても、なぜか臭いが残る」そんな経験はありませんか。肉や魚の臭みは、鮮度や処理の仕方だけでなく、調理の順番や使う食材によって大きく変わります。
薬膳の視点から見ると、臭みは「気の滞り」や「腐敗のサイン」であり、単に消すだけでなく、体の巡りを整える香味食材を使うことで、美味しく健康的に仕上がります。この記事では、肉と魚の臭みが出る科学的なメカニズムから、下処理の基本、科学的に正しい臭み消し法、薬膳香味の使い方、保存・再加熱のコツまで、完全網羅してお届けします。
そもそも”臭み”はなぜ出る? 肉と魚のにおいの正体
肉と魚では原因が違う ― 血・脂・アミン類の働き
肉と魚の臭みは、それぞれ異なる原因から生じます。
魚の臭み:魚の臭みの主な原因は、「トリメチルアミン(TMA)」という物質です。魚には「トリメチルアミンオキシド(TMAO)」という無臭の物質が含まれており、これが鮮度の低下や細菌の働きによって分解されると、TMAという生臭い物質に変わります。TMAはアルカリ性のため、酸性の物質(酢、レモン汁)で中和できます。
また、魚の血液や内臓に含まれる「ヘム鉄」も、酸化すると生臭いにおいを発します。特に血合いの部分は、臭みが強くなりやすいです。
肉の臭み:肉の臭みは、主に「脂質の酸化」と「血液の残留」が原因です。肉に含まれる脂質は、空気に触れると酸化し、古い油のようなにおいを発します。特に豚肉や羊肉は、脂質が酸化しやすいため、臭みが出やすいです。
また、肉に残った血液は、加熱すると鉄の臭いが強くなります。血抜きが不十分だと、臭みが残ります。
アミン類の影響:肉や魚が鮮度を失うと、タンパク質が分解されて「アミン類」という物質が生成されます。これが腐敗臭の原因です。新鮮なうちに調理するか、適切に保存することが、臭みを防ぐ第一歩です。
鮮度・温度・時間で変わる臭いのメカニズム
臭みの強さは、鮮度、温度、時間によって大きく変わります。
鮮度:新鮮な肉や魚は、臭みが少ないです。鮮度が落ちると、細菌が繁殖し、タンパク質や脂質が分解されて、臭いが強くなります。購入時は、目、エラ、身の弾力、臭いをチェックして、新鮮なものを選びましょう。
温度:肉や魚は、温度が高いほど細菌の繁殖が進み、臭みが強くなります。購入後はすぐに冷蔵庫(0〜4℃)に入れ、使わない分は早めに冷凍(−18℃以下)しましょう。常温に放置する時間を最小限にすることが大切です。
時間:肉や魚は、時間が経つほど臭みが増します。購入後は2日以内に調理するか、すぐに冷凍保存しましょう。冷凍しても、2〜3週間以内に使い切ることが理想です。
鮮度、温度、時間を管理することが、臭みを防ぐ基本です。
薬膳で見る”臭い”は「気の滞り」と「腐敗のサイン」
薬膳では、食材の臭いは「気の状態」を示すサインと考えます。
良い香り=気が巡っている:新鮮で良質な食材は、自然な香りがします。この香りは、食欲を増進させ、気を巡らせる働きがあります。薬膳香味(生姜、ねぎ、陳皮など)も、香りによって気を巡らせます。
悪い臭い=気が滞っている:臭みの強い食材は、気が滞り、腐敗が始まっているサインです。このような食材を食べると、体内でも気の滞りが起こり、消化不良、お腹の張り、不快感などが生じます。
腐敗のサイン:強い腐敗臭は、食材がすでに腐っていることを示します。このような食材は、絶対に食べてはいけません。食中毒のリスクがあります。
薬膳では、食材の臭いを嗅ぐことで、その食材が体に良いか悪いかを判断します。五感を使って食材を選ぶことが、健康への第一歩です。
臭みを消す=巡りを整える、という考え方
薬膳では、臭みを単に消すのではなく、「気の巡りを整える」という考え方をします。
臭みの原因となる物質は、体内でも気の滞りを引き起こします。生姜、ねぎ、陳皮、山椒といった香味食材は、臭みを消すだけでなく、気を巡らせ、消化を助ける働きがあります。
たとえば、生姜は体を温め、消化液の分泌を促し、気の巡りを良くします。これにより、肉や魚の臭みが気にならなくなるだけでなく、胃腸への負担も軽減されます。
臭みを消すことと、体を整えることは、薬膳では同じ意味を持ちます。香味食材を上手に使うことで、美味しく健康的な料理が完成します。
肉・魚別!プロが教える下処理の基本ステップ
【魚】ぬめり・血合い・内臓を除く黄金ルート
魚の臭みを最小限にするための下処理の手順です。
ステップ1:ぬめりを取る
- 魚を流水で軽く洗い、表面のぬめりを取ります。
- 手に塩をつけて、魚の表面をこすります。ぬめりが取れやすくなります。
- 再び流水で洗い流します。
ステップ2:内臓を取る
- 魚のお腹に包丁を入れ、内臓を取り出します。
- お腹の中の血合い(黒い部分)を、スプーンや指でこすり取ります。血合いは臭みの原因です。
- 流水でお腹の中をきれいに洗います。
ステップ3:エラを取る
- エラは臭みが強いため、取り除きます。
- エラぶたを開き、エラをはさみで切り取ります。
ステップ4:水気を拭く
- キッチンペーパーで魚の表面と内側の水気をしっかり拭き取ります。
- 水気が残ると、臭みが出やすくなります。
ステップ5:塩を振る
- 魚の両面に軽く塩を振り、10〜30分置きます。
- 塩が水分と臭み成分を引き出します。
- 出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取ります。
この手順を守ることで、魚の臭みが大幅に減ります。
【肉】血抜き・膜取り・脂落とし ― 臭いを残さない順番
肉の臭みを最小限にするための下処理の手順です。
ステップ1:血抜き
- 肉をボウルに入れ、流水に10分ほどさらします。
- 血液が水に溶け出して、臭みが減ります。
- 水気をキッチンペーパーでしっかり拭き取ります。
ステップ2:膜取り
- 肉の表面にある白い膜や筋は、臭みの原因になります。
- 包丁で丁寧に取り除きます。
- 鶏むね肉の場合、皮も臭みが出やすいため、取り除くとさっぱりします。
ステップ3:脂落とし
- 肉の余分な脂肪を包丁で切り取ります。
- 特に豚肉や羊肉の脂は、酸化しやすく臭みが出やすいです。
- 適度に脂を残すことで、ジューシーさは保てます。
ステップ4:塩を振る
- 肉の両面に軽く塩を振り、10〜30分置きます。
- 塩が水分と臭み成分を引き出します。
- 出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取ります。
ステップ5:下味をつける
- 酒、生姜、ねぎなどで下味をつけることで、臭みがさらに減ります。
- 15分〜30分漬けてから調理します。
この手順を守ることで、肉の臭みが大幅に減ります。
流水は使いすぎ注意!洗う・拭くの最適バランス
肉や魚を流水で洗いすぎると、うま味成分や栄養素が流れ出てしまいます。また、水気が残ると、臭みが出やすくなります。
洗う場合:
- 魚のぬめりや血合い、内臓を取るときは、流水で洗います。
- 肉の血抜きをするときは、短時間(10分程度)流水にさらします。
- 洗った後は、必ずキッチンペーパーで水気を拭き取ります。
拭く場合:
- 基本的には、キッチンペーパーで拭くことを優先します。
- 水気を拭き取ることで、臭みの原因となる水分を除去できます。
- 塩を振った後に出てくる水分も、しっかり拭き取ります。
最適バランス:
- 洗う回数は最小限にし、拭く回数を増やすことが理想です。
- 洗う→拭く→塩を振る→拭く、という流れを守りましょう。
洗いすぎず、拭きすぎず、適度なバランスが大切です。
買ってから調理まで ― 臭みを出さない保管ルート
肉や魚を買ってから調理するまでの保管方法も、臭みに大きく影響します。
買い物直後:
- 肉や魚は、最後に買います。買い物かごの一番上に置き、保冷剤やドライアイスを添えてもらいましょう。
- 保冷バッグに入れて持ち帰ります。
帰宅後すぐ:
- すぐに冷蔵庫(0〜4℃)に入れます。
- その日または翌日に使う分は、冷蔵庫の最も冷たい場所(チルド室)に入れます。
- 使わない分は、すぐに下処理をして冷凍します。
冷蔵保存(2日以内に使う場合):
- キッチンペーパーで水気を拭き取ります。
- 密閉容器またはラップで包み、空気に触れないようにします。
- チルド室に入れ、2日以内に使い切ります。
冷凍保存(2日以内に使わない場合):
- 下処理をして、水気を拭き取ります。
- 下味をつけるか、そのままジッパー付き保存袋に入れます。
- 空気を抜いて密閉し、冷凍庫(−18℃以下)に入れます。
- 2〜3週間以内に使い切ります。
保管ルートを守ることで、臭みを最小限に抑えられます。
素材別・科学的に正しい臭み消し法
塩・砂糖・酸で中和する ― 臭みを引き出さずに除く比率
塩、砂糖、酸は、科学的に臭みを消す効果があります。
ふり塩(10〜30分):
- 塩を軽く振ることで、浸透圧によって水分と臭み成分が引き出されます。
- 肉や魚100gに対して、塩小さじ1/4〜1/2を振ります。
- 10〜30分置いた後、出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取ります。
- 塩を振りすぎると、塩辛くなるので注意しましょう。
ブライン液(塩:砂糖=1:0.5):
- ブライン液は、塩と砂糖を水に溶かした液体で、肉を柔らかくし、臭みを減らします。
- 水200mlに対して、塩小さじ1、砂糖小さじ1/2を溶かします。
- 肉を30分〜1時間漬けます。
- 取り出して水気を拭き取り、調理します。
酢・レモン汁でTMA(魚臭の原因)を中和するメカニズム:
- 魚の臭みの原因であるトリメチルアミン(TMA)は、アルカリ性です。
- 酸性の酢やレモン汁を加えることで、TMAが中和され、臭みが減ります。
- 魚を調理する前に、酢水(水200mlに酢大さじ1)に10分ほど漬けるか、レモン汁を振りかけます。
- 調理時にも、仕上げに酢やレモン汁を加えることで、臭みが和らぎます。
科学的に正しい比率を守ることで、臭みを効果的に消せます。
牛乳・酒・ヨーグルト ― 成分が働く”におい吸着”の理屈
牛乳、酒、ヨーグルトには、臭み成分を吸着または分解する働きがあります。
牛乳のカゼイン:
- 牛乳に含まれるカゼインというタンパク質が、臭み成分を包み込んで吸着します。
- 肉や魚を牛乳に30分〜1時間漬けることで、臭みが減ります。
- 特にレバーや羊肉など、臭みの強い肉に効果的です。
- 漬けた後は、牛乳を洗い流し、水気を拭き取ります。
酒のアルコール:
- 酒に含まれるアルコールは、臭み成分を揮発させます。
- また、酒は肉や魚を柔らかくする効果もあります。
- 下味に酒を加える(肉や魚100gに対して酒大さじ1〜2)ことで、臭みが減ります。
- 日本酒だけでなく、紹興酒、ワイン、焼酎も使えます。
ヨーグルトの乳酸:
- ヨーグルトに含まれる乳酸と酵素が、タンパク質を分解し、肉を柔らかくします。
- また、臭み成分も分解されます。
- 肉をプレーンヨーグルトに30分〜一晩漬けることで、臭みが減り、柔らかくなります。
- 特に鶏むね肉や豚肉に効果的です。
これらの成分の働きを理解することで、効果的に臭みを消せます。
“重曹・塩麹・発酵調味”で臭いを抑えて旨味アップ
重曹、塩麹、発酵調味料は、臭みを抑えるだけでなく、うま味もアップさせます。
重曹:
- 重曹(炭酸水素ナトリウム)は、アルカリ性で、酸性の臭み成分を中和します。
- 肉を柔らかくする効果もあります。
- 水200mlに重曹小さじ1/2を溶かし、肉を30分漬けます。
- 取り出して水で洗い、水気を拭き取ります。
- 使いすぎると苦味が出るので、少量にします。
塩麹:
- 塩麹に含まれる酵素が、タンパク質を分解し、肉を柔らかくします。
- また、発酵の力で臭みも減り、うま味が増します。
- 肉100gに対して、塩麹大さじ1〜2を揉み込み、30分〜一晩漬けます。
- そのまま調理できます。
発酵調味料(味噌・醤油麹など):
- 味噌や醤油麹も、塩麹と同じく酵素と発酵の力で、臭みを減らし、うま味を増します。
- 肉や魚を味噌床に漬ける、醤油麹で下味をつけるといった使い方ができます。
発酵の力を活用することで、臭みを消しながら、味わいも深くなります。
臭み消しでやりがちなNG例(例:漬けすぎ・塩の濃度ミス)
臭み消しで失敗しないために、やりがちなNG例を知っておきましょう。
漬けすぎ:
- 牛乳、ヨーグルト、酢水などに長時間漬けすぎると、肉や魚の食感が悪くなります。
- 適切な時間(30分〜1時間、長くても一晩)を守りましょう。
塩の濃度ミス:
- 塩を振りすぎると、塩辛くなり、肉が硬くなります。
- 肉や魚100gに対して、塩小さじ1/4〜1/2が目安です。
水気の拭き取り不足:
- 塩を振った後や、漬け液から取り出した後、水気を拭き取らないと、臭みが残ります。
- キッチンペーパーでしっかり拭き取りましょう。
香味の入れすぎ:
- 生姜やにんにくを入れすぎると、逆に料理のバランスが崩れます。
- 適量を守りましょう。
下処理の順番ミス:
- 塩を振る前に水気を拭き取らないと、塩が効きません。
- 順番を守ることが大切です。
NG例を避けることで、失敗なく臭みを消せます。
薬膳で香りを操る ― 消化を助けて臭いを包む香味食材
生姜・ねぎ・にんにく ― 温中・理気で臭みを立たせず整える
薬膳では、生姜、ねぎ、にんにくは「温中・理気(おんちゅう・りき)」の働きがあり、体を温め、気を巡らせます。
生姜:
- 温性で、体の中心を温め、消化を助けます。
- 肉や魚の臭みを消し、風味を加えます。
- 薄切り、千切り、すりおろしのいずれでも使えます。
- 下味に加えるか、調理時に入れます。
ねぎ:
- 温性で、気を巡らせ、体を温めます。
- 特に長ねぎの白い部分は、臭み消し効果が高いです。
- 薄切り、斜め切り、白髪ねぎなど、料理に合わせて切り方を変えます。
- 風邪の初期症状にも効果的です。
にんにく:
- 温性で、気を巡らせ、体を温める力が強いです。
- 肉の臭みを消し、食欲を増進させます。
- 薄切り、みじん切り、すりおろしで使います。
- 炒め物の最初に油で炒めて香りを出します。
これらの香味は、臭みを消すだけでなく、消化を助け、体を整えます。
陳皮・山椒・花椒 ― 巡りを促し胃を守るスパイス使い
陳皮、山椒、花椒は、気の巡りを促し、胃腸を守る薬膳スパイスです。
陳皮(ちんぴ):
- みかんの皮を乾燥させたもので、温性、辛味・苦味を持ちます。
- 理気作用があり、お腹の張りを解消します。
- 肉や魚の臭みを消し、風味を加えます。
- 煮物やスープに加えるか、粉末にして振りかけます。
山椒(さんしょう):
- 温性で、気を巡らせ、体を温めます。
- ピリッとした辛味が食欲を増進させます。
- 魚の臭み消しに特に効果的です。
- 粉末を仕上げに振りかけるか、実をそのまま使います。
花椒(ホアジャオ):
- 温性で、しびれるような辛味が特徴です。
- 気を巡らせ、体を温める力が強いです。
- 豚肉や羊肉の臭み消しに効果的です。
- 油で炒めて香りを出すか、粉末を振りかけます。
これらのスパイスを使うことで、肉や魚の臭みが気にならなくなり、薬膳効果も高まります。
黒酢・紹興酒・クミン ― においをマスキングする調理例
黒酢、紹興酒、クミンは、臭みをマスキング(覆い隠す)する効果があります。
黒酢:
- 活血作用があり、血の巡りを良くします。
- 酸味が臭みを中和し、コクを加えます。
- 肉や魚を黒酢で煮込むか、仕上げにかけます。
- 豚肉の黒酢煮、魚の黒酢あんかけなど。
紹興酒:
- 温性で、血の巡りを良くし、体を温めます。
- アルコールが臭みを揮発させ、深い風味を加えます。
- 中華料理の下味や煮込みに使います。
- 日本酒よりもコクがあり、肉料理に向いています。
クミン:
- 温性で、気を巡らせ、消化を助けます。
- 独特の香りが、羊肉や牛肉の臭みをマスキングします。
- 中東料理やインド料理でよく使われます。
- 炒め物や煮込みに加えます。
これらの調味料やスパイスを使うことで、臭みが気にならなくなり、料理の幅が広がります。
香味は”炒め始め”と”仕上げ”のW使いで最大効果
香味食材を最大限に活かすためには、「炒め始め」と「仕上げ」のW使いがおすすめです。
炒め始め(香りの土台を作る):
- フライパンまたは鍋に油を熱し、生姜、にんにく、ねぎ、花椒などを炒めます。
- 香りが立ったら、肉や魚を投入します。
- この段階で香りの土台ができ、臭みが抑えられます。
仕上げ(香りを立たせる):
- 調理の最後に、再び生姜の千切り、ねぎの白髪切り、陳皮の粉末、山椒などを加えます。
- 仕上げの香りが、料理全体を引き立てます。
- 香りは揮発しやすいため、加熱時間は短くします。
W使いの例:
- 豚肉の生姜焼き:炒め始めに生姜のすりおろし、仕上げに生姜の千切り。
- 魚の煮付け:煮始めに生姜の薄切り、仕上げに山椒の粉末。
- 鶏肉の炒め物:炒め始めににんにくと花椒、仕上げにねぎの白髪切り。
W使いをすることで、香りが多層的に重なり、臭みが気にならなくなります。
保存・再加熱でも臭わせない!日持ちと衛生のコツ
冷蔵・冷凍・解凍での臭い戻りを防ぐポイント
保存や解凍の方法を間違えると、せっかく臭みを消した肉や魚が、再び臭くなることがあります。
冷蔵保存(0〜4℃で2日以内):
- 下処理をして、水気を拭き取ります。
- キッチンペーパーで包み、ラップまたは密閉容器に入れます。
- キッチンペーパーが水分を吸収し、臭みの発生を防ぎます。
- チルド室に入れ、2日以内に使い切ります。
冷凍保存(−18℃で2〜3週間):
- 下処理をして、水気を拭き取ります。
- 下味をつけるか、そのままジッパー付き保存袋に入れます。
- 空気を抜いて密閉します。空気に触れると酸化し、臭みが出ます。
- 平らにして冷凍することで、解凍時間が短縮されます。
- 2〜3週間以内に使い切ります。
ドリップ対策にはペーパー+密閉袋:
- ドリップ(解凍時に出る赤い液体)には、血液や水分、臭み成分が含まれています。
- 冷凍する前に、キッチンペーパーで肉や魚を包み、その上からジッパー付き保存袋に入れることで、ドリップを最小限に抑えられます。
- 解凍時にドリップが出た場合は、すぐにキッチンペーパーで拭き取ります。
解凍のポイント:
- 冷蔵庫でゆっくり解凍するのが理想です。前日の夜に冷蔵室に移しておきます。
- 急ぐ場合は、ジッパー付き保存袋のまま流水で解凍します。
- 電子レンジの解凍モードは、ムラができやすいため、注意が必要です。
- 解凍しすぎると水分が出て臭みが増すため、半解凍の状態で調理を始めるのも良い方法です。
保存と解凍の方法を工夫することで、臭い戻りを防げます。
再加熱時に香味を重ねる ― 「酒+生姜+柚子皮」でリセット
調理済みの肉や魚を再加熱するときは、香味を重ねることで、臭みをリセットできます。
再加熱の基本手順:
- 冷蔵庫から取り出し、常温に戻します(15分程度)。
- フライパンまたは蒸し器で再加熱します。
- 再加熱時に、酒大さじ1、生姜の千切り少々、柚子皮(またはレモン皮)を加えます。
- 蓋をして、弱火〜中火で温めます。
酒の働き:
- アルコールが臭み成分を揮発させます。
- 肉や魚に水分を与え、パサつきを防ぎます。
生姜の働き:
- 温性で、体を温め、臭みを消します。
- 再加熱時の生姜の香りが、古い臭いをリセットします。
柚子皮(またはレモン皮)の働き:
- 柑橘の香りが、臭みをマスキングします。
- 爽やかな風味が加わり、食欲を増進させます。
再加熱の応用例:
- 焼き魚の温め直し:フライパンに酒と生姜を入れ、魚を入れて蓋をして蒸し焼きにします。
- 煮物の温め直し:鍋に煮物を入れ、酒と柚子皮を加えて温めます。
- 蒸し鶏の温め直し:蒸し器に酒と生姜を入れ、鶏肉を蒸し直します。
再加熱時に香味を重ねることで、作りたてのような風味が戻ります。
薬膳的に見る”悪い匂い”=気滞・血瘀のサインと防ぎ方
薬膳では、食材の悪い匂いは「気滞(きたい)」や「血瘀(けつお)」のサインと考えます。
気滞とは:
- 気の巡りが滞った状態です。
- 食材が古くなり、気が滞ると、臭みが出ます。
- 気滞を起こした食材を食べると、体内でも気が滞り、お腹の張り、イライラ、不快感が生じます。
血瘀とは:
- 血の巡りが滞り、血が固まった状態です。
- 肉や魚の血液が酸化すると、鉄臭いにおいが出ます。これが血瘀のサインです。
- 血瘀を起こした食材を食べると、体内でも血の巡りが悪くなり、肩こり、生理痛、肌のくすみなどが生じる可能性があります。
防ぎ方:
- 新鮮な食材を選び、早めに調理します。
- 下処理で血液や水分をしっかり取り除きます。
- 香味食材(生姜、ねぎ、陳皮、山椒など)を使うことで、気の巡りを整えます。
- 酢やレモン汁といった酸味を加えることで、血瘀を防ぎます。
- 保存方法を守り、臭い戻りを防ぎます。
悪い匂いは、体に良くないサインです。五感を使って食材の状態を見極め、気滞・血瘀を防ぐことが、薬膳的な健康法です。
さらに深めたい人へ ― 季節と体質で選ぶ肉・魚の使い分け
冬は羊・鮭で温補、夏は白身魚で清熱!季節別ローテーション
季節に合わせて肉や魚を選ぶことで、体のバランスが整います。
春(木・肝):
- 気の巡りを整える食材が向いています。
- 鶏肉、アジ、タイなどの平性の食材がおすすめです。
- 香味食材(陳皮、三つ葉、パクチーなど)を多めに使い、気を巡らせます。
夏(火・心):
- 体の余分な熱を冷ます食材が向いています。
- 白身魚(タイ、ヒラメ、カレイ)、豚肉など、平性または涼性の食材がおすすめです。
- 臭み消しに、レモン、梅干し、酢を使い、さっぱりと仕上げます。
秋(金・肺):
- 乾燥を防ぎ、肺を潤す食材が向いています。
- 豚肉、イカ、ホタテなど、滋陰潤燥の働きがある食材がおすすめです。
- 臭み消しに、生姜や白胡椒を使い、体を穏やかに温めます。
冬(水・腎):
- 体を温め、腎を補う食材が向いています。
- 羊肉、鮭、エビ、ブリなど、温性の食材がおすすめです。
- 臭み消しに、生姜、にんにく、ねぎ、花椒、桂皮などをたっぷり使い、体を芯から温めます。
季節に合わせたローテーションを意識することで、体のリズムが整います。
気虚・血虚・陽虚タイプ別おすすめタンパク源表
体質に合わせてタンパク質源を選ぶことで、より効果的に体を整えられます。
気虚タイプ(疲れやすい・息切れしやすい・食欲がない):
- 補気作用のある食材を選びましょう。
- おすすめ:鶏肉、牛肉、アジ、サバ、鮭、卵
- 臭み消し:生姜、ねぎ、陳皮
- 調理法:蒸す、煮る、スープにするなど、消化に優しい方法
血虚タイプ(顔色が悪い・めまいがする・爪が割れやすい):
- 養血作用のある食材を選びましょう。
- おすすめ:牛肉、レバー、イカ、タコ、カツオ、マグロ、卵
- 臭み消し:生姜、にんにく、黒酢
- 調理法:煮る、炒める、焼くなど、しっかり火を通す
陽虚タイプ(冷え性・寒がり・お腹が冷える):
- 温陽作用のある食材を選びましょう。
- おすすめ:羊肉、鶏肉、エビ、鮭、アナゴ
- 臭み消し:生姜、にんにく、ねぎ、花椒、桂皮
- 調理法:炒める、煮込む、鍋にするなど、体を温める調理法
陰虚タイプ(体がほてる・喉が渇く・肌が乾燥する):
- 滋陰作用のある食材を選びましょう。
- おすすめ:豚肉、白身魚、ホタテ、牡蠣、イカ
- 臭み消し:レモン、梅干し、酢、陳皮
- 調理法:蒸す、煮る、スープにするなど、潤いを保つ調理法
自分の体質を知り、適した食材を選ぶことが、薬膳の基本です。
調理法で”温め食”にも”冷やし食”にも変わる理由
同じ食材でも、調理法によって体への働きかけが変わります。
火を通すほど温める力が強まる:
- 薬膳では、火を加えることで「陽」のエネルギーが増すと考えます。
- 生→蒸す→茹でる→焼く→炒める→揚げる、の順に、温める力が強まります。
- 冷え性の人は、炒める、焼く、煮込むといった調理法を選びましょう。
- 体に熱がこもりやすい人は、蒸す、茹でる、生(刺身)といった調理法を選びましょう。
油を使うと温める力が増す:
- 油は温性のものが多く、体を温めます。
- 炒め物や揚げ物は、体を温める力が強いです。
- 体に熱がこもりやすい人は、油を控えめにしましょう。
酢や柑橘を加えると冷やす力が増す:
- 酢やレモン汁は、体の余分な熱を冷まします。
- 南蛮漬けや酢の物は、夏の養生にぴったりです。
香辛料を加えると温める力が増す:
- 生姜、にんにく、ねぎ、花椒、桂皮といった香辛料は、温性で体を温めます。
- 冷え性の人は、これらをたっぷり使いましょう。
調理法を工夫することで、同じ食材でも体への働きかけが変わります。季節や体質に合わせて、調理法を選びましょう。
まとめ
肉や魚の臭みは、鮮度の低下、血液や脂質の酸化、細菌の繁殖によって生じます。薬膳では、臭みは「気の滞り」や「腐敗のサイン」と考え、単に消すだけでなく、体の巡りを整える香味食材を使うことが大切です。
下処理の基本は、魚ならぬめり・血合い・内臓を取り除き、肉なら血抜き・膜取り・脂落としを行うことです。流水で洗いすぎず、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取ることが、臭みを防ぐポイントです。
科学的に正しい臭み消し法として、塩・砂糖・酢を使った中和、牛乳・酒・ヨーグルトを使った吸着、塩麹・発酵調味料を使ったうま味アップがあります。適切な比率と時間を守ることが、失敗しないコツです。
薬膳香味(生姜・ねぎ・にんにく・陳皮・山椒・花椒・黒酢など)を、炒め始めと仕上げのW使いで加えることで、臭みが気にならなくなり、消化も助けられます。保存や再加熱の際も、香味を重ねることで、臭い戻りを防げます。
季節や体質に合わせて肉や魚を選び、調理法を工夫することで、体のバランスが整います。臭みを消すことは、美味しさを引き出すだけでなく、体を整えることでもあります。
今日から、科学と薬膳の知恵を活かして、臭みのない美味しい肉・魚料理を作ってみてください。小さな工夫の積み重ねが、やがて大きな健康となって返ってきます。
