「何を食べれば体に良いのか」と悩むことはありませんか。薬膳では、単品の食材よりも「組み合わせ」が大切です。肉、魚、野菜、香味を上手に組み合わせることで、体を温め、気血を巡らせ、バランスを整えることができます。

この記事では、薬膳の基本的な考え方から、肉×野菜、魚×野菜、香味の使い方、季節・体質別の応用パターン、食べ合わせのNGと応用テクニックまで、日常に活かせる知識を完全網羅してお届けします。


薬膳で考える「食材の組み合わせ」とは?バランスの基本を知ろう

薬膳の考え方 ― 五性・五味・帰経で食材の働きを理解する

薬膳では、すべての食材を「五性(ごせい)」「五味(ごみ)」「帰経(きけい)」で分類します。

五性:食材が体に与える温度的な影響です。熱性・温性(体を温める)、平性(どちらでもない)、涼性・寒性(体を冷やす)の5段階に分けられます。

五味:食材の味の性質です。酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味(かんみ・塩辛い味)の5つがあり、それぞれ異なる臓器に働きかけます。

帰経:食材がどの臓器に働きかけるかを示します。肝・心・脾・肺・腎の五臓に対応します。

食材の性質を理解することで、体質や季節に合わせた組み合わせができます。

「単品で健康」ではなく「組み合わせで整える」が薬膳の本質

薬膳では、どんなに優れた食材でも、単品で食べ続けることは推奨されません。体のバランスは、複数の食材が協力して働くことで保たれます。

たとえば、肉は温性で体を温めますが、そればかり食べると体に熱がこもります。野菜を組み合わせることで、熱を調整し、消化を助けます。魚は平性または涼性のものが多いですが、生姜やねぎといった温性の香味を加えることで、冷えを防げます。

組み合わせの基本は、「陰陽のバランス」「寒熱のバランス」「補瀉(ほしゃ)のバランス」を取ることです。

肉・魚・野菜をどう組み合わせるとバランスが取れるのか?

肉(主に温性):体を温め、気と血を補います。脂質が多く、消化に時間がかかります。

魚(主に平性または涼性):補気健脾の働きがあり、消化しやすいです。平性の魚は体質を選びません。

野菜(寒涼〜温性まで多様):食物繊維が豊富で、消化を助け、体の余分な熱や湿を取り除きます。

基本の黄金比

  • 肉または魚:1
  • 野菜:2〜3
  • 香味:適量

この比率を守ることで、栄養バランスが整い、消化も良くなります。

補う・巡らせる・排出する ― 3つの方向性で考える食べ合わせ

薬膳の食べ合わせは、次の3つの方向性で考えます。

1. 補う(補)

  • 不足している気・血・陰・精を補います。
  • 肉、魚、卵、豆類、ナツメ、クコの実などを使います。

2. 巡らせる(理)

  • 滞っている気・血・水を巡らせます。
  • 生姜、ねぎ、陳皮、山椒、大根、ごぼうなどを使います。

3. 排出する(瀉・しゃ)

  • 余分な熱、湿、毒素を排出します。
  • 海藻、きのこ、緑茶、苦味のある野菜などを使います。

この3つのバランスを取ることで、体が整います。


【肉×野菜】温め&滋養の基本ペア|体を中から整える食べ合わせ

鶏肉×ねぎ×生姜 ― 冷えを防ぎ、消化を助ける「温中・解表」コンビ

薬膳的な働き

  • 鶏肉:温性・甘味、補気養血
  • ねぎ:温性・辛味、発汗解表(風邪の初期症状を改善)
  • 生姜:温性・辛味、温中散寒(体を温め、冷えを追い出す)

効果

  • 体を芯から温め、冷え性を改善します。
  • 風邪の初期症状(寒気、鼻水、頭痛)を和らげます。
  • 消化を助け、胃腸を整えます。

おすすめレシピ

  • 鶏肉と長ねぎの生姜炒め
  • 鶏むね肉の生姜スープ
  • 鶏鍋に長ねぎと生姜をたっぷり入れる

冷え性の人、風邪をひきやすい人に最適です。

豚肉×白菜×黒酢 ― 潤いを補い、乾燥・疲労を癒す「滋陰・養血」コンビ

薬膳的な働き

  • 豚肉:平性または涼性・甘味、滋陰潤燥
  • 白菜:平性・甘味、清熱利水
  • 黒酢:温性・酸味、活血化瘀(血の巡りを良くする)

効果

  • 体を潤し、乾燥肌、喉の渇き、便秘を改善します。
  • 疲労回復を促し、体力をつけます。
  • 血の巡りを良くし、肩こりや生理痛を和らげます。

おすすめレシピ

  • 豚肉と白菜の黒酢炒め
  • 豚肉と白菜の重ね蒸し
  • 豚肉と白菜のミルフィーユ鍋

乾燥が気になる人、疲れやすい人に最適です。

牛肉×にんじん×にんにく ― エネルギー不足を回復する「補気・活血」組み合わせ

薬膳的な働き

  • 牛肉:平性・甘味、補気養血
  • にんじん:平性・甘味、補気健脾
  • にんにく:温性・辛味、温中行気

効果

  • 気と血を同時に補い、体力をつけます。
  • 疲労回復、貧血予防に効果的です。
  • 血の巡りを良くし、顔色を良くします。

おすすめレシピ

  • 牛肉とにんじんのにんにく炒め
  • 牛肉とにんじんのビーフシチュー(薬膳アレンジ)
  • 牛肉とにんじんの炊き込みご飯

体力が落ちている人、貧血気味の人に最適です。

【コラム】肉の脂質を”巡り”に変える薬膳の知恵

肉の脂質は、体を温めエネルギーを補いますが、摂りすぎると体に湿(余分な水分や脂肪)が溜まります。

湿を溜めない工夫

  • 大根おろしや梅干しなど、消化を助ける食材を添えます。
  • 陳皮や山椒など、理気作用のある香味を加えます。
  • 野菜を多めに摂り、食物繊維で脂質の吸収を穏やかにします。

脂質を”巡り”に変えることで、体に優しく栄養が摂れます。


【魚×野菜】巡り・潤い・代謝をサポートする理想の組み合わせ

鮭×白きくらげ×ねぎ ― 冬の乾燥・肌荒れ対策に◎「潤肺・温中」レシピ

薬膳的な働き

  • 鮭:温性・甘味、補気養血
  • 白きくらげ:平性・甘味、滋陰潤肺
  • ねぎ:温性・辛味、温中解表

効果

  • 体を潤し、乾燥肌、喉の乾き、空咳を改善します。
  • 体を温め、冷えを防ぎます。
  • 免疫力を高め、風邪を予防します。

おすすめレシピ

  • 鮭と白きくらげのスープ
  • 鮭の蒸し物に白きくらげとねぎを添える

冬の乾燥と冷えに悩む人に最適です。

鯖×大根×陳皮 ― 脂の多い魚もすっきり消化「理気・化痰」効果

薬膳的な働き

  • 鯖:平性・甘味、補気健脾
  • 大根:涼性・甘味・辛味、消食化痰(消化を助け、痰を取り除く)
  • 陳皮:温性・辛味・苦味、理気健脾

効果

  • 脂の多い鯖を消化しやすくします。
  • お腹の張りを解消し、気の巡りを良くします。
  • 痰や湿を取り除き、体をすっきりさせます。

おすすめレシピ

  • 鯖の味噌煮に大根おろしと陳皮を添える
  • 鯖と大根の煮物

脂質が気になる人、胃腸が弱い人に最適です。

鯛×ほうれん草×しょうが ― 冷えを防ぎ、血流を促す「補血・温陽」コンビ

薬膳的な働き

  • 鯛:平性・甘味、補気健脾
  • ほうれん草:涼性・甘味、養血潤燥
  • しょうが:温性・辛味、温中散寒

効果

  • 血を補い、貧血を予防します。
  • 体を温め、冷えを防ぎます。
  • 血流を良くし、顔色を良くします。

おすすめレシピ

  • 鯛とほうれん草の生姜蒸し
  • 鯛とほうれん草のスープ

貧血気味の人、冷え性の人に最適です。

【コラム】魚の”臭み消し”と”薬膳香味”の使い方

魚の臭みを消すためには、薬膳香味が欠かせません。

生姜:臭みを消し、体を温めます。 ねぎ:臭みを消し、気を巡らせます。 :臭みを揮発させます。 陳皮:臭みを消し、理気作用で消化を助けます。 山椒:臭みを消し、気を巡らせます。

これらを組み合わせることで、臭みのない美味しい魚料理ができます。


【香味×肉魚】”臭み消し”だけじゃない!香りがもたらす薬膳効果

香味は「理気」と「健脾」― 巡りを助け、消化を整えるカギ

薬膳では、香味食材は単なる風味づけではなく、「理気(りき)」と「健脾(けんひ)」という重要な働きを持ちます。

理気:気の巡りを良くし、お腹の張り、ゲップ、イライラ、ため息といった気滞の症状を改善します。

健脾:脾(消化器系)の働きを助け、消化吸収を良くします。

香味を上手に使うことで、肉や魚の消化が良くなり、体の巡りも整います。

代表香味3種の効果と活用例(生姜・陳皮・山椒)

生姜

  • 温性・辛味、温中散寒
  • 体を温め、冷えを追い出します。
  • 肉や魚の臭みを消し、消化を助けます。
  • 薄切り、千切り、すりおろしで使います。

陳皮(みかんの皮を乾燥させたもの)

  • 温性・辛味・苦味、理気健脾
  • 気の巡りを良くし、お腹の張りを解消します。
  • 肉や魚の臭みを消し、風味を加えます。
  • 煮物やスープに加えるか、粉末にして振りかけます。

山椒

  • 温性・辛味、温中行気
  • 体を温め、気を巡らせます。
  • 魚の臭み消しに特に効果的です。
  • 粉末を仕上げに振りかけるか、実をそのまま使います。

調理タイミングで変わる香味の力 ― 炒め始めと仕上げの使い分け

香味を最大限に活かすためには、調理のタイミングが重要です。

炒め始め(香りの土台を作る)

  • フライパンに油を熱し、生姜、にんにく、ねぎを炒めます。
  • 香りが立ったら、肉や魚を投入します。
  • この段階で香りの土台ができ、臭みが抑えられます。

仕上げ(香りを立たせる)

  • 調理の最後に、再び生姜の千切り、ねぎの白髪切り、陳皮の粉末、山椒などを加えます。
  • 仕上げの香りが、料理全体を引き立てます。

このW使いをすることで、香りが多層的に重なり、風味豊かな料理になります。

【応用】クミン・八角・花椒などスパイスを使ったアレンジ薬膳

クミン

  • 温性・辛味、温中行気
  • 羊肉や牛肉の臭み消しに最適です。
  • 中東料理やインド料理で使われます。

八角(スターアニス)

  • 温性・辛味・甘味、温中理気
  • 肉の臭み消しと風味づけに使います。
  • 中華の煮込み料理に欠かせません。

花椒(ホアジャオ)

  • 温性・辛味、温中散寒
  • しびれるような辛味が特徴です。
  • 豚肉や羊肉との相性が抜群です。

これらのスパイスを使うことで、薬膳料理の幅が広がります。


季節と体質に合わせて変える!”肉魚×野菜”の応用パターン

冬は温補(羊肉×長ねぎ×クミン)で体温キープ

冬の特徴:寒さで体が冷え、体力を消耗しやすい季節です。

おすすめの組み合わせ

  • 羊肉(熱性)×長ねぎ(温性)×クミン(温性)
  • 鮭(温性)×生姜(温性)×にんにく(温性)
  • 鶏肉(温性)×ねぎ(温性)×黒胡椒(熱性)

効果:体を強く温め、冷えを防ぎ、免疫力を高めます。

おすすめレシピ

  • 羊肉と長ねぎのクミン炒め
  • 鮭の生姜にんにく焼き
  • 鶏鍋に長ねぎと黒胡椒をたっぷり入れる

春は理気(鶏肉×菜の花×山椒)で巡りを促す

春の特徴:気温の変動が大きく、気の巡りが滞りやすい季節です。

おすすめの組み合わせ

  • 鶏肉(温性)×菜の花(平性・理気)×山椒(温性・理気)
  • 鯛(平性)×三つ葉(温性・理気)×陳皮(温性・理気)

効果:気の巡りを良くし、お腹の張り、イライラ、ため息を解消します。

おすすめレシピ

  • 鶏肉と菜の花の山椒炒め
  • 鯛と三つ葉の陳皮蒸し

夏は清熱(白身魚×トマト×青じそ)でほてり対策

夏の特徴:暑さで体に熱がこもりやすく、食欲が落ちやすい季節です。

おすすめの組み合わせ

  • 白身魚(涼性)×トマト(涼性・清熱)×青じそ(温性・理気)
  • 豚肉(平性または涼性)×きゅうり(涼性・清熱)×酢(酸味・収斂)

効果:体の余分な熱を冷まし、ほてり、のぼせ、口の渇きを改善します。

おすすめレシピ

  • 白身魚とトマトの青じそ蒸し
  • 豚肉ときゅうりの酢の物

秋は潤い補給(豚肉×れんこん×梨)で乾燥ケア

秋の特徴:乾燥しやすく、肺を傷めやすい季節です。

おすすめの組み合わせ

  • 豚肉(平性または涼性・滋陰)×れんこん(涼性・潤肺)×梨(涼性・潤肺)
  • 白身魚(平性)×百合根(平性・滋陰)×白きくらげ(平性・滋陰)

効果:体を潤し、乾燥肌、喉の乾き、空咳を改善します。

おすすめレシピ

  • 豚肉とれんこんの梨入りスープ
  • 白身魚と百合根、白きくらげの蒸し物

【タイプ別】気虚・血虚・陰虚の人に合う食材組み合わせ早見表

気虚タイプ(疲れやすい・息切れしやすい)

  • 鶏肉、牛肉、タイ、アジ、山芋、きのこ、ナツメ

血虚タイプ(顔色が悪い・めまいがする)

  • 牛肉、マグロ、カツオ、ほうれん草、黒きくらげ、ナツメ、クコの実

陰虚タイプ(体が乾燥する・ほてる)

  • 豚肉、白身魚、ホタテ、豆腐、白きくらげ、百合根、梨

体質に合わせた組み合わせを選ぶことで、より効果的に体が整います。


さらに深めたい人へ ― 食べ合わせNGと応用テクニック

「薬膳NG食べ合わせ」って本当?誤解されがちな例を解説

よく言われる「食べ合わせNG」には、誤解が多いです。

例:スイカと天ぷら

  • 根拠:スイカは体を冷やし、天ぷらは油で体に負担をかけるため、同時に食べると消化不良を起こすとされます。
  • 実際:適量であれば問題ありません。ただし、大量に食べると、どちらも消化に負担がかかります。

例:うなぎと梅干し

  • 根拠:脂の多いうなぎと酸味の強い梅干しは相性が悪いとされます。
  • 実際:梅干しの酸味は、うなぎの脂の消化を助けます。むしろ相性が良い組み合わせです。

薬膳では、極端な組み合わせを避け、バランスを取ることが大切です。

体質・調理法・摂取量で変わる”OK/NGの境界線”

食べ合わせのOK/NGは、体質、調理法、摂取量によって変わります。

体質

  • 冷え性の人は、涼性の食材を大量に摂るのは避けます。
  • 体に熱がこもりやすい人は、温性の食材を大量に摂るのは避けます。

調理法

  • 涼性の食材でも、火を通すことで性質が穏やかになります。
  • 温性の食材でも、酢や涼性の食材と組み合わせることでバランスが取れます。

摂取量

  • どんなに良い組み合わせでも、食べすぎは体のバランスを崩します。
  • 適量を守ることが大切です。

柔軟に判断することが、薬膳の知恵です。

【応用】薬膳的に見る鍋・スープ・炒め物の黄金バランス

  • 肉または魚:野菜=1:3の割合
  • 温性の肉や魚に、平性または涼性の野菜を多めに入れます。
  • 生姜、ねぎ、陳皮などの香味をたっぷり加えます。

スープ

  • 肉または魚のだしに、滋陰食材(白きくらげ、百合根、山芋)を加えます。
  • 補気食材(きのこ、ナツメ、クコの実)も入れると、滋養効果が高まります。

炒め物

  • 肉または魚:野菜=1:2の割合
  • 最初に香味(生姜、にんにく、ねぎ)を炒めて香りを出します。
  • 仕上げに理気作用のある香味(陳皮、山椒)を加えます。

この黄金バランスを守ることで、美味しく健康的な料理ができます。

一皿で”陰陽・寒熱・虚実”を整えるコツまとめ

陰陽:温性と涼性をバランス良く組み合わせます。

寒熱:体を温める食材と冷ます食材を、季節と体質に合わせて調整します。

虚実:補う食材(肉、魚、卵、豆類)と、巡らせる食材(香味、野菜)、排出する食材(海藻、きのこ)をバランス良く取り入れます。

一皿の中に、これらのバランスが取れていることが、理想的な薬膳料理です。


まとめ

薬膳では、食材の組み合わせがバランスの鍵です。肉、魚、野菜、香味を上手に組み合わせることで、体を温め、気血を巡らせ、バランスを整えることができます。

鶏肉×ねぎ×生姜で冷えを防ぎ、豚肉×白菜×黒酢で潤いを補い、鮭×白きくらげ×ねぎで乾燥をケアする。香味は理気と健脾の働きがあり、炒め始めと仕上げのW使いで効果が高まります。

季節と体質に合わせて、食材の組み合わせを変えることで、体のリズムが整います。今日から、食材の組み合わせを意識して、体に優しい食卓を作ってみてください。