「食欲が湧かない」「胃が冷えて重い」「お腹が張って苦しい」そんな悩みを抱えていませんか。薬膳では、八角(スターアニス)は「香りと温めで巡りを整えるスパイス」として古くから重宝されてきました。胃腸を温め、気を巡らせ、食欲を回復させる働きがあります。

この記事では、八角がなぜ食欲増進に効くのかを薬膳理論と科学的根拠の両面から解説し、簡単なレシピ、相性の良い食材、注意点、季節・体質別の活用法まで、八角を使いこなすための知識を完全網羅してお届けします。


八角(スターアニス)とは?香りと温めで巡りを整えるスパイス

八角=Illicium verum の基本プロフィール(形・香り・味)

八角は、シキミ科トウシキミ属の常緑樹の果実で、学名は「Illicium verum(イリシウム・ベルム)」です。中国南部原産で、英語では「Star Anise(スターアニス)」と呼ばれます。星型の8つの突起が特徴的で、見た目の美しさから「八角」という名前がつきました。

形状

  • 直径2〜3cmの星型
  • 8つの突起(袋果)があり、それぞれに光沢のある種子が1つずつ入っています
  • 乾燥すると茶褐色になり、硬くなります

香り

  • 甘く濃厚な香りで、アニス(西洋ハッカ)に似ています
  • スパイシーで温かみのある香りです
  • 料理の香り付けに最適です

  • 甘味と辛味があります
  • 少しほろ苦い風味もあります
  • 舌に残る独特の余韻があります

八角は、中華料理では欠かせないスパイスで、五香粉(ごこうふん)の主要成分でもあります。ベトナム料理のフォーにも欠かせません。

薬膳での性味・帰経(温・辛/脾・胃)と主な効能

薬膳では、八角は次のように分類されます。

性味:温性

  • 体を穏やかに温める性質です
  • 冷えによる胃腸の不調を改善します
  • 長時間加熱しても温性が保たれます

五味:辛味・甘味

  • 辛味:発散作用があり、気を巡らせます
  • 甘味:脾に働きかけ、体を養います

帰経:脾・胃・腎

  • 脾・胃:消化器系に働きかけ、消化吸収を助けます
  • 腎:生命力の源である精を補い、冷えを根本から改善します

八角の主な働きは、「温中理気(おんちゅうりき)」「散寒止痛(さんかんしつう)」です。

温中理気

  • 体の中心(胃腸)を温め、気の巡りを良くします
  • 冷えによる食欲不振、消化不良、お腹の張りを改善します

散寒止痛

  • 冷えを追い出し、痛みを止めます
  • 冷えによる腹痛、胃痛、生理痛を和らげます

八角は、胃腸を温めながら気を巡らせる、食欲回復に最適なスパイスです。

伝統的に”食欲がない””冷えた胃”に用いられてきた背景

八角は、中国で2000年以上前から薬用として使われてきました。漢方薬の古典『本草綱目(ほんぞうこうもく)』にも記載され、胃腸の冷えによる不調の治療に用いられてきました。

伝統的な用例

食欲不振

  • 冷えや気の滞りによる食欲不振に、八角を煎じて飲む習慣がありました
  • 食前に八角茶を飲むことで、胃が温まり、食欲が湧きます

胃腸の冷え

  • 冷たいものの摂りすぎや、体質的に胃腸が冷えやすい人に効果的です
  • 八角を入れたスープや煮込み料理で、胃腸を温めます

腹痛・吐き気

  • 冷えによる腹痛や吐き気に、八角を煎じて飲みます
  • 即効性があり、痛みが和らぎます

肉の臭み消し

  • 豚肉や羊肉の煮込み料理に八角を入れることで、臭みが消え、消化が良くなります
  • これも八角の理気作用によるものです

中華料理で八角が頻繁に使われる理由は、味だけでなく、消化を助ける薬効を活かすためです。


なぜ八角が食欲増進に効く?香り×温め×消化の三角構造

香り成分(アネトール・リモネン等)が胃腸をどう刺激する?

八角の食欲増進効果は、香り成分によるものです。

アネトール(トランス‐アネトール)

  • 八角の主要香気成分で、甘く濃厚な香りの元です
  • 全体の80〜90%を占めます
  • 胃液の分泌を促進し、消化酵素の働きを活性化します
  • 胃腸の蠕動運動を促進し、食べ物の移動をスムーズにします
  • 抗菌作用があり、食品の腐敗を防ぎます
  • エストロゲン様作用があり、ホルモンバランスを整えます

リモネン(精油成分)

  • 柑橘系の爽やかな香りの成分です
  • リラックス効果があり、副交感神経を活性化します
  • 血流を改善し、胃腸の働きを良くします
  • ストレスを和らげ、ストレス性の食欲不振を改善します

リナロール(精油成分)

  • フローラルな香りの成分です
  • 鎮静作用があり、不安を和らげます
  • 自律神経のバランスを整えます

香りが食欲を刺激するメカニズム

  1. 八角の香り成分が、鼻から脳の嗅覚中枢に届きます
  2. 嗅球から大脳辺縁系(感情を司る部分)に信号が送られます
  3. 視床下部が刺激され、食欲中枢が活性化されます
  4. 消化液の分泌が促され、胃腸が「食べる準備」を始めます
  5. 副交感神経が活性化され、リラックス状態になり、消化が良くなります

料理の香りを嗅ぐだけで、お腹が空く経験は誰にでもあります。八角の香りは、この食欲増進効果が特に強いのです。

温性スパイスとしての作用 ― 脾胃を温めて”めぐり”を促す

薬膳では、胃腸が冷えると、次のような症状が現れます。

  • 食欲不振
  • 消化不良
  • お腹の冷え、腹痛
  • 下痢、軟便
  • お腹の張り
  • 疲れやすい

八角の温性は、胃腸を温めることで、これらの症状を改善します。

温めるメカニズム

  • アネトールが、体内の代謝を活性化し、熱を産生します
  • 血管が拡張し、胃腸への血流が増加します
  • 胃腸の筋肉が温まり、蠕動運動が活発になります
  • 消化液の分泌が増え、消化が促進されます

気を巡らせるメカニズム

  • 八角の辛味が、滞った気を動かします
  • お腹の張りやゲップが解消されます
  • 気の巡りが良くなることで、食欲が回復します

薬膳では、「脾胃は後天の本」といって、胃腸の健康が全身の健康の基本とされています。八角は、胃腸を温めることで、体の中心から全身を整えます。

消化不良・膨満・ガスを和らげ→食欲を後押しする流れ

八角は、消化不良の悪循環を断ち切ります。

消化不良の悪循環

  1. 胃腸が冷える、または気が滞る
  2. 消化が悪くなり、食べ物が停滞する
  3. お腹が張り、不快感が増す
  4. 食欲が落ち、さらに消化力が低下する
  5. 悪循環が続く

八角が悪循環を断ち切る流れ

  1. 八角の香りが食欲を刺激し、消化液の分泌を促します
  2. 八角の温性が胃腸を温め、蠕動運動を活発にします
  3. 八角の辛味が気を巡らせ、お腹の張りを解消します
  4. 食べ物がスムーズに消化され、停滞が解消されます
  5. 胃が軽くなり、食欲が回復します
  6. 栄養がしっかり吸収され、体力がつきます
  7. 好循環が始まります

八角は、香り、温め、気の巡りの三角構造で、食欲を根本から回復させます。


料理で活かす!八角を使った食欲増進レシピ3選

① 八角白湯 ― 冷えた朝に胃を目覚めさせる一杯

材料

  • 八角:1個
  • 熱湯:200ml
  • はちみつ:小さじ1(お好みで)
  • 生姜:1片(薄切り、お好みで)

作り方

  1. カップに八角を入れます(生姜を加える場合は一緒に入れます)
  2. 熱湯を注ぎます
  3. 5分蒸らします
  4. お好みではちみつを加えます
  5. 温かいうちに飲みます(八角は取り出してもそのままでも可)

効果

  • 胃腸を温め、朝の冷えを解消します
  • 食欲を増進させ、朝食が美味しく食べられます
  • 気の巡りを良くし、一日のスタートを快適にします
  • 香りでリラックスし、心が落ち着きます

おすすめのタイミング

  • 朝起きてすぐ
  • 食欲がないとき
  • 胃が冷えているとき
  • 食前30分前

② 八角香味油 ― 香りで巡りをつくる万能調味料

材料

  • 八角:3個
  • ごま油:100ml
  • 生姜:2片(薄切り)
  • にんにく:2片(薄切り)
  • 花椒:小さじ1/2(お好みで)

作り方

  1. フライパンにごま油、八角、生姜、にんにく、花椒を入れます
  2. 弱火で10〜15分、香りが出るまで温めます(温度は60〜80℃を保ちます)
  3. 焦がさないように注意しながら、香りを油に移します
  4. 火を止めて完全に冷まします
  5. スパイスを濾して、油を保存容器に入れます

効果

  • 料理の仕上げに数滴垂らすだけで、食欲が湧きます
  • 胃腸を温め、消化を助けます
  • 気血の巡りを良くし、冷えを改善します

使い方

  • 炒め物の仕上げに
  • 麺類(ラーメン、うどん、そば)にトッピング
  • チャーハンに混ぜる
  • 餃子のタレに加える
  • 蒸し鶏や豆腐にかける

保存

  • 冷蔵庫で約1ヶ月保存できます

③ 八角スパイス煮込み ― 冬の疲れた胃に温めの一皿

材料(2〜3人分)

  • 豚肉(バラ肉または肩ロース):300g
  • 大根:200g
  • にんじん:1本
  • 長ねぎ:1本
  • 八角:2個
  • 生姜:3片(薄切り)
  • にんにく:2片(潰す)
  • 醤油:大さじ3
  • 酒:大さじ2
  • 黒糖:大さじ1
  • 水:400ml
  • ごま油:大さじ1

作り方

  1. 豚肉は一口大に切ります。大根、にんじんは乱切りにします。長ねぎは3cm幅に切ります
  2. 鍋にごま油を熱し、豚肉を炒めます
  3. 肉の色が変わったら、生姜、にんにく、八角を加えて香りを出します
  4. 大根、にんじんを加えて軽く炒めます
  5. 水、醤油、酒、黒糖を加えて沸騰させます
  6. 弱火にして、蓋をして30〜40分煮込みます
  7. 長ねぎを加えて、さらに5分煮ます
  8. 味を確認し、必要なら塩や醤油で調整します

効果

  • 体を芯から温め、冷えを解消します
  • 豚肉の補陰作用と八角の温中作用が協力し、胃腸を整えます
  • 根菜の食物繊維が、腸内環境を整えます
  • 疲労回復、免疫力向上に効果的です

おすすめのタイミング

  • 冬の寒い日
  • 食欲がないとき
  • 体が疲れているとき
  • 風邪の引き始め

組み合わせで効果を高める―八角×薬膳食材のベストペア

【冷え×食欲低下タイプ】=八角+生姜+陳皮

このタイプの特徴

  • 手足が冷たい
  • お腹が冷える
  • 食欲がない
  • 疲れやすい
  • 下痢しやすい

八角+生姜+陳皮の効果

  • 八角:温中理気、散寒止痛
  • 生姜:温中散寒、発汗解表
  • 陳皮:理気健脾、燥湿

この3つの温性と辛味が協力して、胃腸を強く温めます。気の巡りを良くし、食欲を回復させ、消化を促進します。

おすすめレシピ

  • 八角生姜陳皮茶:八角1個、生姜3片、陳皮2片、熱湯200ml、はちみつ小さじ1で5分蒸らします
  • 八角生姜陳皮入り鶏スープ:鶏肉、根菜、八角、生姜、陳皮を煮込みます

【脂っこい食事後の胃もたれタイプ】=八角+山楂子(さんざし)+黒酢

このタイプの特徴

  • 脂っこいものを食べると胃がもたれる
  • お腹が張る
  • ゲップが多い
  • 便秘がち

八角+山楂子+黒酢の効果

  • 八角:温中理気、散寒止痛
  • 山楂子:消食化積、活血化瘀(食べ物の停滞を解消し、血の巡りを良くする)
  • 黒酢:活血化瘀、消食(血の巡りを良くし、消化を助ける)

この組み合わせは、特に脂質の消化を助けます。食べ物の停滞を解消し、胃を軽くし、血流を良くします。

おすすめレシピ

  • 八角山楂子黒酢ドリンク:八角1個、山楂子5個、黒酢大さじ1、はちみつ小さじ1、水200mlで煮出します
  • 八角入り豚肉の黒酢炒め:豚肉と野菜を炒め、黒酢と八角で味付けします

【ストレス胃/むくみも気になるタイプ】=八角+ねぎ+にんにく(香味野菜)

このタイプの特徴

  • ストレスで胃が痛くなる
  • イライラしやすい
  • お腹が張る
  • むくみやすい
  • 疲れやすい

八角+ねぎ+にんにくの効果

  • 八角:温中理気、散寒止痛
  • ねぎ:発汗解表、通陽(気を巡らせ、陽気を通す)
  • にんにく:温中行気、活血(体を温め、気を巡らせ、血を活性化する)

この3つの辛味が、気の滞りを解消し、ストレスを和らげます。胃腸の働きを正常に戻し、むくみを解消します。

おすすめレシピ

  • 八角ねぎにんにく炒め:鶏肉または豚肉と野菜を炒め、仕上げに八角の香りを移した油をかけます
  • 八角入り鶏肉のねぎにんにくスープ:鶏肉、ねぎ、にんにく、生姜、八角を煮込みます

使う前に知っておきたい注意点と選び方

どんな体質なら控えるべき?冷えすぎ・熱証・胃炎の人へ

八角が適している体質(冷え性・陽虚タイプ)

  • 手足が冷たい
  • お腹が冷える
  • 食欲がない
  • 寒がり、温かいものを好む
  • 顔色が青白い
  • 疲れやすい

このような体質の人には、八角が最適です。

八角を控えめにすべき体質(のぼせ・陰虚タイプ)

  • 体がほてる、のぼせる
  • 暑がり、冷たいものを好む
  • 顔が赤い
  • 口が渇く、喉が渇く
  • 便秘(乾燥による)
  • イライラしやすい
  • 寝汗をかく

このような体質の人は、八角を摂りすぎると、体に熱がこもり、症状が悪化することがあります。控えめにするか、白きくらげやはちみつなど、潤いを補う食材と一緒に摂りましょう。

その他の注意が必要な人

胃炎・胃潰瘍

  • 八角の辛味が、胃の粘膜を刺激することがあります
  • 胃炎や胃潰瘍がある人は、控えめにするか、医師に相談します

妊娠中・授乳中

  • 八角にはエストロゲン様作用があるため、妊娠中は控えめにします
  • 大量摂取は避け、料理の香り付け程度なら問題ありません
  • 心配な場合は、医師に相談してください

アレルギー

  • まれにアレルギー反応を起こすことがあります
  • 初めて使う場合は、少量から試してください

服薬中

  • 一部の薬と相互作用する可能性があるため、医師や薬剤師に相談します

丸ごとホール・粉末・精油の違いと用途使い分け

ホール(丸ごと)

  • 八角の実をそのまま乾燥させたものです
  • 香りが長持ちし、保存性が高いです
  • 煮込み料理、スープ、お茶に入れます
  • 使用後は取り出すこともできます
  • 保存:密閉容器に入れ、冷暗所で約2年

粉末

  • 八角を細かく挽いたものです
  • 香りが立ちやすく、使いやすいです
  • 五香粉の主成分です
  • 炒め物、煮物、焼き物に振りかけます
  • 保存:密閉容器に入れ、冷蔵庫で約6ヶ月(香りが飛びやすい)

精油(エッセンシャルオイル)

  • 八角から抽出した精油です
  • 香りが非常に強いです
  • 料理には使わず、アロマテラピーに使います
  • 注意:食用ではありません。皮膚に直接塗らないでください

用途別の使い分け

  • 煮込み料理、スープ:ホール
  • 炒め物、焼き物:粉末またはホール(後で取り出す)
  • お茶、ドリンク:ホール
  • 五香粉の自作:粉末
  • アロマ:精油

品質チェック:産地・学名表示・混入リスク(日本産シキミとの違い)

品質の良い八角の見分け方

1. 産地

  • 中国(広西チワン族自治区、雲南省)産が高品質です
  • ベトナム産も品質が良いです

2. 学名の確認

  • 必ず「Illicium verum(イリシウム・ベルム)」と表示されているものを選びます
  • これが本物の八角(スターアニス)です

3. 形状

  • 星型が整っていて、突起が8つあるものが良質です
  • 色は茶褐色で、光沢があります
  • 割れや欠けが少ないものを選びます

4. 香り

  • 甘く濃厚な香りがします
  • 香りが弱い、または変な臭いがするものは避けます

危険な混入:日本産シキミとの違い

日本産シキミ(Illicium anisatum)

  • 日本に自生するシキミは、有毒植物です
  • 八角(Illicium verum)とは別種です
  • 見た目が似ているため、誤食事故が起こることがあります

見分け方

  • 日本産シキミ:突起が10〜13個、香りが弱い、やや小さい
  • 八角(スターアニス):突起が8個、甘く強い香り、やや大きい

安全のために

  • 必ず信頼できる店で購入します
  • パッケージに「Illicium verum」「スターアニス」「八角」と明記されているものを選びます
  • 山で採取したシキミを食べないでください

さらに深めたい人へ―季節・体質別の八角活用ガイド

春・夏・秋・冬それぞれで巡りを高める八角の使い方

春(3〜5月)

  • 気の巡りが滞りやすい季節です
  • おすすめの使い方:八角と陳皮のお茶、八角入り春野菜炒め
  • 八角の役割:気を巡らせ、デトックスを促す

夏(6〜8月)

  • 体に熱がこもりやすい季節です
  • おすすめの使い方:八角は控えめに、涼性食材と組み合わせる
  • 八角の役割:食欲増進(ただし少量のみ)

秋(9〜11月)

  • 体が乾燥しやすい季節です
  • おすすめの使い方:八角と白きくらげのスープ、八角入り豚肉煮込み
  • 八角の役割:温めながら、乾燥を悪化させないよう潤い食材と組み合わせる

冬(12〜2月)

  • 体が冷えやすい季節です
  • おすすめの使い方:八角生姜シナモン茶、八角入り鍋、八角スパイス煮込み
  • 八角の役割:体を強く温め、食欲を回復させる

気滞・血瘀・冷え体質別のスパイスローテーション

気滞タイプ(気の巡りが悪い)

  • 症状:お腹の張り、ゲップ、イライラ、ため息、胸のつかえ
  • おすすめスパイス:陳皮、八角、ミント、パクチー
  • ローテーション:陳皮(朝)→八角(昼)→ミント(夜)

血瘀タイプ(血の巡りが悪い)

  • 症状:肩こり、腰痛、生理痛、顔色の悪さ、シミ
  • おすすめスパイス:八角、にんにく、シナモン、サフラン
  • ローテーション:八角(朝)→にんにく(昼)→シナモン(夜)

冷えタイプ(陽虚)

  • 症状:手足の冷え、お腹の冷え、食欲不振、疲れやすい
  • おすすめスパイス:八角、生姜、シナモン、クローブ、花椒
  • ローテーション:八角(朝)→生姜(昼)→シナモン(夜)

関連スパイス紹介(桂皮・陳皮・クミン)と”香り薬膳”としての広がり

桂皮(シナモン)

  • 熱性・甘味・辛味で、体を強く温めます
  • 血の巡りを良くし、冷えによる痛みを和らげます
  • 八角と組み合わせることで、温補効果が高まります

陳皮(みかんの皮)

  • 温性・辛味・苦味で、気を巡らせます
  • 胃腸を整え、消化を促進します
  • 八角と組み合わせることで、理気効果が強化されます

クミン

  • 温性・辛味で、気を巡らせます
  • 羊肉や牛肉の臭み消しに効果的です
  • 八角と組み合わせることで、消化促進効果が増します

**”香り薬膳”としての広がり**

八角は、食べるだけでなく、香りを活用することで、さらに効果が広がります。

八角入浴法

  • 八角5個を布袋に入れ、お風呂に浮かべます
  • 香りを楽しみながら、体が温まります
  • 血行が促進され、肩こりや腰痛が和らぎます
  • リラックス効果で、よく眠れます
  • 注意:肌が敏感な人は、少量から試してください

八角アロマ(嗅ぐだけ薬膳)

八角サシェ(香り袋)

  • 八角2〜3個を小さな布袋に入れます
  • クローゼットや引き出しに入れて、防虫・芳香剤として使います
  • 枕元に置いて、就寝前に香りを嗅ぎます
  • リラックス効果で、よく眠れます

八角蒸気吸入

  • 熱湯をボウルに入れ、八角2個を加えます
  • タオルで頭を覆い、蒸気を吸い込みます
  • 鼻づまり、頭痛、呼吸器の不調に効果的です
  • 注意:やけどに注意してください

八角ティーのバリエーション

基本の八角茶

  • 八角1個、熱湯200ml、はちみつ小さじ1
  • 5分蒸らして、温かいうちに飲みます

八角生姜陳皮茶

  • 八角1個、生姜3片、陳皮2片、熱湯200ml
  • 冷えと気滞を同時に改善します

八角シナモン茶

  • 八角1個、シナモンスティック1本、黒糖小さじ1、熱湯200ml
  • 強い温補効果で、冬の冷えに最適です

八角ナツメクコ茶

  • 八角1個、ナツメ3個、クコの実5粒、熱湯200ml
  • 血を補いながら、巡らせます

五香粉を自作して香りを楽しむ

五香粉は、中華料理に欠かせないミックススパイスです。八角を主成分として、家庭で簡単に作れます。

材料

  • 八角:5個
  • シナモンスティック:2本
  • 花椒:大さじ1
  • クローブ:小さじ1
  • フェンネルシード:小さじ1

作り方

  1. すべてのスパイスをフライパンで弱火で2〜3分炒ります(香りを引き出すため)
  2. 冷ましてから、ミルまたはすり鉢で細かく挽きます
  3. 密閉容器に入れて保存します

使い方

  • 炒め物、煮物、焼き物に振りかけます
  • 肉の下味に使います
  • チャーハンに混ぜます

保存

  • 冷蔵庫で約3ヶ月保存できます

八角を日常に取り入れる”3つの習慣”

朝の習慣:八角白湯

  • 起きてすぐ、八角白湯を飲みます
  • 胃腸が温まり、食欲が湧き、一日が快適にスタートします

昼の習慣:八角香味油

  • ランチの仕上げに、八角香味油を1滴垂らします
  • 消化が促進され、午後の眠気を防ぎます

夜の習慣:八角入浴

  • お風呂に八角を入れる、または八角茶を飲みます
  • 一日の疲れが取れ、ぐっすり眠れます

この3つの習慣を続けることで、体の巡りが良くなり、冷えや食欲不振が改善されます。

香り薬膳の相乗効果

香りを嗅ぐ+食べる+入浴するの3つを組み合わせることで、八角の効果が最大化されます。

  • 嗅覚から:自律神経を整え、リラックスし、食欲中枢を刺激します
  • 消化器から:胃腸を温め、消化を助け、気を巡らせます
  • 皮膚から:血行を促進し、体全体を温めます

香り薬膳は、体の内側と外側の両方から働きかけ、全身を整えます。

八角と他のスパイスの組み合わせ例

温めの最強トリオ

  • 八角+シナモン+生姜
  • 冬の冷えに最適です

消化促進トリオ

  • 八角+陳皮+山楂子
  • 食べすぎ、胃もたれに効果的です

香りの巡りトリオ

  • 八角+クミン+コリアンダー
  • 気の巡りを良くし、デトックスを促します

血行促進トリオ

  • 八角+花椒+にんにく
  • 血の巡りを良くし、肩こりや生理痛を和らげます

組み合わせを工夫することで、効果がさらに高まります。


まとめ

八角(スターアニス)は、薬膳で「香りと温めで巡りを整えるスパイス」として古くから重宝されてきました。温中理気・散寒止痛の働きがあり、食欲不振、胃腸の冷え、消化不良、お腹の張りに効果的です。

アネトールやリモネンといった香り成分が、科学的にも食欲増進・消化促進効果を裏付けています。八角白湯、八角香味油、八角スパイス煮込みなど、簡単に日常に取り入れられます。

生姜、陳皮、山楂子、ねぎ、にんにくといった相性の良い食材と組み合わせることで、効果がさらに高まります。ホール1〜2個、または粉末小さじ1/4〜1/2の適量を守り、香りを活かす調理法を工夫することで、八角の力を最大限に引き出せます。

入浴、ティー、香味油、五香粉など、香り薬膳としての応用も豊富です。食べる、嗅ぐ、入浴するの3方向から八角を活用することで、胃腸が温まり、食欲が回復し、体の巡りが良くなります。

ただし、日本産シキミ(有毒)との混同に注意し、必ず「Illicium verum」と表示されているものを選びましょう。のぼせやすい体質の人は控えめにし、妊娠中や胃炎がある人は医師に相談してから使用してください。

今日から、八角を日常に取り入れて、香りで食欲を回復させ、体を内側から温め、巡りを取り戻してみてください。