「薬膳の正確な定義を知りたい!中医学とどう関係しているの?薬膳の歴史についても詳しく教えてほしい!」
薬膳という言葉を耳にすることは多くても、その正確な定義を知る方は少ないのではないでしょうか。
薬膳を正しく理解するには、定義や中医学との関係、歴史を知ることが大切です。
・薬膳の正確な定義を知りたい
・中医学と薬膳の関係を理解したい
・薬膳の歴史や成り立ちについて知りたい
など、薬膳の定義や歴史について知りたいこともあるでしょう。
そういうわけで今回は、『薬膳の定義』から、『中医学との関係』、そして『薬膳の歴史』まで詳しくお伝えしていきます。それでは早速みていきましょう!
薬膳の定義とは?正確な意味を理解しよう

薬膳とは、中医学の理論に基づいて作られた食事で、健康維持や病気の予防、病気の回復を目的とした料理のことです。
単に生薬を使った料理という意味ではなく、体質や体調、季節に合わせて食材を選び、中医学理論に基づいて施膳する食事療法を兼ね備えた料理方法といえます。薬膳を学ぶということは中医学理論を学ぶに等しく、この理論なくして薬膳はありません。
中国で1992年に出版された『中国薬膳大辞典』では、薬膳を明確に定義しています。
それによると、薬膳とは中医薬学の理論に基づいて、食物の性質と成分を応用し、一定の臓腑に作用し、気血を調和し、陰陽を平衡し、疾病の予防や健康延年を目的とするものとのこと。つまり、中医学理論に基づいているということが薬膳の定義の核心なのです。
また、薬膳には「狭義の薬膳」と「広義の薬膳」という2つの考え方があります。
狭義の薬膳は、病気の治療のために中医学理論をもとに食材と中薬(生薬)を入れて作った料理のこと。一方、広義の薬膳は、健康維持や病気の予防・治療のため、中医学理論をもとに作った料理で、中薬は入らなくてもよいとされています。
現在では広義の薬膳の考え方が一般的です。
どちらにしても共通しているのは「中医学理論に基づいている」ことであり、これが薬膳の最も重要な定義といえるでしょう!
中医学と薬膳の深い関係

薬膳を理解する上で欠かせないのが、中医学との関係です。
ここでは、中医学とは何か、そして薬膳とどのように結びついているのかをお伝えしていきます。
中医学とは何か
中医学とは、中国伝統医学のことで、世界三大伝統医学の一つに数えられています。
約3000年以上の歴史を持ち、長い年月をかけて発展してきた医学体系です。時代を生きた名医たちの病気と闘い続けた経験と治療成果を克明に記録した多くの医学書などが総括され、医療体系化した経験医学であり予防医学でもあります。
西洋医学では、病気の患部に注目して診断し、投薬治療で早く治すことを目指します。
一方、中医学では体全体のバランスや患者の体質を診て、普段の生活の中から病気にかからないよう予防をしていきます。すぐに病気を治すというより、健やかな体をじっくり芯から作っていくイメージなのです。
中医学理論は「陰陽五行説」「気・血・津液(水)」「臓象学説」などの古代思想を基本としています。
これらの基本理論に基づき、四診と呼ばれる診断法を用いて証や治療方法を導き出し、中薬(生薬)を組み合わせた方剤を処方するのです。この一連のプロセスを「弁証論治」といいます。
中医学の特徴は、個々の体質や体調、病状、季節、住んでいる環境などを考慮した上で治療するのが原則である点。
同じ病気でも人によって処方が異なることがあるのは、このためなのです!
薬膳における弁証施膳とは
薬膳では、中医学の「弁証論治」と同じプロセスを経て料理を作ります。
これを「弁証施膳」といいます。四診から証を決定し、治療方法を導き出して適当な食材や中薬を使って料理を作るのです。
弁証論治と弁証施膳を比べると、方剤を使うか料理を使うかの違いだけで、使うまでのプロセスは同じ。
つまり、中医学も薬膳も治療内容を決めるプロセスは同じであり、中医学は方剤を使い、薬膳では料理を使うという関係になっています。薬膳師は「食の医者(食医)」であり、中医学理論を深く理解していることが求められるのです。
また、もともとは薬と食べ物の区別はなかった(薬食同源)といわれています。
長い年月をかけて、美味しいものが「食材」として、味はよくないが薬効の強いものが「薬(中薬)」として治療に使われるようになりました。ですが、基本的な考え方はどちらも同じなのです。
このように、薬膳は中医学理論と深く結びついており、中医学を学ぶことが薬膳を理解する近道といえるでしょう!
中医学理論の基本概念
薬膳を実践するには、中医学の基本概念を理解することが大切です。
中医学には「陰陽」「五行」「気・血・水」という3つの基本的な考え方があります。これらが薬膳の理論的な土台となっているのです。
「陰陽」とは、世の中にあるすべてのものは陰と陽でできているという考え方のこと。
太陽が昇って朝がきて、太陽が沈んで夜が始まり1日が終わるように、昼と夜の移り変わりから生まれた思想です。体の状態もこの二つで表現され、そのどちらにも偏らず、バランスが良い状態を「健康」としています。
「五行」とは、自然界に存在する物質を「木・火・土・金・水」の5つの性質に分けたものです。
五行には「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」と「五味(酸・苦・甘・辛・鹹)」、「季節(春・夏・梅雨・秋・冬)」が対応しています。この関係性を理解することで、季節や体質に合った食材選びができるのです。
「気・血・水(津液)」とは、人の体を構成し、臓腑・組織・器官の機能活動の最も基本となる物質のこと。
これらが臓腑・経絡の生理機能によりつくられ、相互に影響を及ぼしあっているとされています。この3つのバランスが崩れると、体に様々な不調が現れるのです!
薬膳の歴史:紀元前から現代まで

薬膳の歴史は非常に古く、約3000年前に遡ります。
ここでは、薬膳がどのように生まれ、どう発展してきたのかをお伝えしていきます。
周王朝時代の「食医」
薬膳の起源は、紀元前1000年頃の周王朝の時代にあるとされています。
「周礼」という古典書には、「食医」という医師のことが書かれており、これが歴史に現れる薬膳の始まりです。当時、医師は「食医」「疾医(内科)」「傷医(外科)」「獣医」の4つの種類に分かれていました。
その中で最も高いランクにあったのが、食医でした。
食医とは皇帝のための宮廷医のことで、日々膳食をとおして帝王の健康を管理調整する者として、医療職の中では最も高い位とされていました。季節の陰陽の調和や味の配合などを考え、食物によって病気の治療や予防を行っていたことが記されています。
古代中国では、医者を工と呼び、上工・中工・下工という分け方をしていました。
上工は病気にかかりそうなことを事前に察し、未病のうちに健康の調整をする医者のこと。中工は病気になってから治療を施し、下工は重病になってから手を施す医者です。
つまり、日常の食事で健康を調整し、未病にあたる食医が最も位が高く敬意が注がれていました。
当時からすでに普段の食事による健康管理が重要視されていたことがわかります!
医学書による理論の確立
薬膳の理論は、様々な医学書によって確立されてきました。
春秋戦国時代には、すでに中医基礎理論とならび食物の五味と五臓の相関関係や食の禁忌などを記述した書物もあり、薬膳の理論化体系は確立されていたのです。
「黄帝内経」は、春秋戦国時代に手がけられたといわれ、完成は漢代です。
この書では、「食療」「食養」に関することが初めて整理されて述べられています。「どんな病気を治療するにせよ、必ず日常の食事に関しての問診が必要」「病気の根源を正してこそ治療ができる」「薬は病気を劇的に取り除くが、食は病気を徐々に治していく」などと、食の重要性が説かれているのです。
「神農本草経」は中国最古の薬学書とされ、漢の時代に成立しました。
この本では、食物または生薬を上品(じょうぼん)・中品(ちゅうぼん)・下品(げぼん)に分類し、その効能、用い方を記しています。上品は生命を養う薬で長く食べられるもの、中品は健康を保つための薬で病気の治療に利用するもの、下品は病気の治療に利用される薬で長期間服用できないものと考えられました。
また、唐の時代の「備急千金要方」では、食事療法が独立した巻になっています。
ここには、病気治療はまず食事療法で対処すべき、それで効果が見られなかった場合に限り薬を投与する、といった記述があるのです。つまり、軽い不調であれば食事で改善できるという考え方が示されています!
「薬膳」という言葉の誕生
薬膳の考え方自体は約3000年前からありましたが、「薬膳」という言葉自体は新しいものです。
この言葉が最初に使用されたのは1980年頃の北京のレストランだといわれています。中国医学で食療、食補、食養と呼ばれたものが、薬膳という名称になり、より多くの人に親しまれるようになったのです。
1982年には、中国の医学研究者「翁維健」が薬膳という呼称を提唱しました。
そして、1992年に出版された『中国薬膳大辞典』で、薬膳に明確な定義が付けられました。これにより、薬膳は正式な医学の一分野として認識されるようになったのです。
日本でも、同じように薬膳という言葉が使われ始めます。
ですが、正しい薬膳を理解せず、漢方薬の原料となる高価な生薬を料理に入れただけのものが広がりました。その結果、薬膳は体には良いが高価で美味しくない、といったイメージが定着することになったのです。
現在では、薬膳の正しい理解が進み、中医学理論に基づいた食事療法として認知されています。
中国では今でも各家庭で毎日の食事に薬膳の考え方が取り入れられており、薬膳は生活の一部として根付いているのです!
医食同源という薬膳の根本思想

薬膳を語る上で欠かせないのが「医食同源」という考え方です。
この思想こそが、薬膳の根本にある哲学といえます。
医食同源の意味
「医食同源」とは、食べ物と薬の源は同じという意味の言葉です。
昔から食材には薬と同じような効能があると考えられてきました。食物は薬と同じ天然由来であり、自身に性質や効能を持っているという考え方なのです。
この言葉は、紀元前2000年以上も前の古代中国文化から発祥した概念です。
実際、私たちが普段料理に使っている生姜や大根、ネギなども漢方薬の成分として使われています。生姜は風邪薬として知られる葛根湯にも含まれており、食材と薬の境界線は曖昧なのです。
医食同源の考え方では、毎日食べるものは薬にもなれば毒にもなると考えます。
そのため、食べ物を五感で感じて食べることが医学的にも重要で、また毎日続けられなければ意味がありません。なぜなら、未来の自分をつくるのは今日の自分が作る家庭料理であり、これこそが薬膳の本質だからです!
五穀・五果・五畜・五菜の考え方
「黄帝内経」の「素問」には、食の医療作用を明確に説明した文があります。
「五穀為養、五果為助、五畜為益、五菜為充、気味合而服之、以補益精気」というもので、これは様々な食材をバランスよく組み合わせることで身体の精気を補うことができるという意味です。
五穀は麦、黍、稗、稲、豆で、穀類は主な食材として五臓を養います。
五果は梨、杏、棗、桃、栗で、果物は五臓の働きを助けるもの。五畜は鶏、羊、牛、鴨、豚で、肉類は五臓を補います。
五菜は葵、藿、薤、葱、韮で、野菜により五臓を充実させるのです。
このように、多くの食材をバランスよく組み合わせることが大切とされてきました。さらに食材によってそれぞれ対応する臓腑に特定の効果があることも経験的に認められてきたのです。
この考え方は、現代の栄養学にも通じるバランスの良い食事の原則といえるでしょう!
未病を治すという予防医学
薬膳の重要な思想の一つが「未病を治す」という考え方です。
未病とは、病気ではないけれど何となく不調を感じる状態のこと。体がだるい、よく眠れない、疲れが取れない、手足が冷えるといった症状が該当します。
中国最古の漢方医書『黄帝内経』には「巳病ヲ治セズシテ、未病ヲ治ス」と記されています。
これは、発病後の治療ではなく未病を治すことを重視するという意味で、この「治未病」という概念こそが予防医学理論の起源といえるでしょう。薬膳では、この未病の状態を食事によって改善していくことを重視しているのです。
なぜなら、体のバランスが崩れた軽い段階であれば、食事療法で十分対処できると考えられているからです。
実際、古い医学書には「病気治療はまず食事療法で対処すべき」と記されています。中国医学はバランスを重視し、病気とは身体のバランスがとれなくなった状態で、その崩れが軽ければ薬も軽いもの、つまり食事療法で十分対処できるという考え方なのです。
このように、薬膳は病気になってから治療するのではなく、日常の食事を通じて健康を維持する予防医学として位置づけられています!
現代における薬膳の定義と実践

ここまで歴史的な定義をお伝えしてきましたが、現代における薬膳の定義と実践についても触れていきます。
時代とともに薬膳の解釈も広がっているのです。
薬膳は料理のジャンルではない
薬膳を理解する上で重要なのは、薬膳は料理のジャンルではないということです。
薬膳とは中医学理論による食の組み立てと、その調理法を指すものなので、薬膳イコール中国料理というわけではありません。薬膳は日本料理でもイタリア料理でもすべての料理に展開できる食事療法なのです。
例えば、日本料理で薬膳を実践することも十分可能。
味噌汁に体を温める生姜を加えたり、煮物に気を補う鶏肉と血行を促進するネギを使ったりするのも薬膳の考え方。冷奴に生姜を添えるという日本の食文化も、実は薬膳の知恵が活きている例といえます。
イタリア料理でも薬膳の考え方を取り入れられます。
トマトは体の熱を取り除く性質を持つため、夏のパスタ料理に最適な食材。ニンニクとオリーブオイルは血行を促進する働きがあるので、これらを使ったペペロンチーノも薬膳的な観点から理にかなっているのです。
つまり、薬膳とは料理のジャンルではなく、食材の性質を理解して体に合わせて組み合わせる「考え方」や「方法論」。
世界中のあらゆる料理で実践できるのが薬膳の素晴らしさなのです!
身近な食材で実践できる薬膳
薬膳には特別な中国食材や生薬が必要だと思われがちですが、実はそうではありません。
スーパーで買える身近な食材だけでも、十分に薬膳を実践できます。なぜなら、すべての食物に薬膳の効果があるというのが薬膳の思想だからです。
例えば、ネギやショウガ、大根、唐辛子などには体を温める効果があります。
風邪や冷え性への効き目が期待されるもの。また、ハッカやなつめなどにはストレス解消効果があると考えられています。基本の効果を理解すれば、身近な食材で十分薬膳を取り入れられるのです。
季節の食材をスーパーで買って食すことも立派な食養生。
クコの実やなつめ、八角などスパイスのような独特の風味がある食材だけが薬膳料理ではありません。薬膳料理は中医学に基づき食材の性質とバランスを組み合わせて作るので、身近な食材でも体によい薬膳料理を手軽に作れます。
地元の物産館などではその土地で栽培されている季節の農産物が多数販売されています。
このような地元産で季節食材を選択することが薬膳食養生へとつながっていくのです!
美味しさも薬膳の定義の一部
薬膳師はこう答えます。
「薬膳は、目的を持って美味しく調理した料理です」と。薬くさいのなら、薬として煎じ薬で飲めばよいのであって、わざわざ調理する必要はありません。
不味ければ毎日食べていけるものではないからです。
薬膳は、肉も魚も油も使い、味付けもしっかり行います。健康とは、心身ともに健やかで元気に活動できる状態を言うもの。
薬膳は、気力、体力を増強するスタミナ食という一面も兼ね備えているのです。
中国の文献には、薬膳を「中医学理論に基づいて作られた食事で、その目的は疾病の予防、病気の回復、そして健康を保つための美味しい食事である」と定義しています。これは薬膳の本質であり、最大の特徴です。
この定義を欠いてしまったものは薬膳とは呼べません。
季節やその日の体調などに合わせて選んだ食材を美味しく摂取することで、体を内側から整える。美味しさも薬膳の重要な定義の一部なのです!
まとめ

今回は、薬膳の定義から、中医学との関係、そして歴史までお伝えしてきました。
薬膳とは、中医学の理論に基づいて作られた食事で、健康維持や病気の予防、病気の回復を目的とした料理のこと。中医学理論に基づいているということが薬膳の定義の核心であり、単に生薬を使った料理という意味ではありません。
中医学と薬膳は深く結びついており、薬膳では「弁証施膳」という中医学と同じプロセスを経て料理を作ります。
中医学理論の「陰陽」「五行」「気・血・水」という基本概念が、薬膳の理論的な土台となっているのです。薬膳を学ぶということは中医学を学ぶということであり、中医学を学ぶということは中国哲学の基本理論を学ぶということといえます。
薬膳の歴史は約3000年前に遡り、周王朝時代の「食医」が起源とされています。
様々な医学書によって理論が確立され、「薬膳」という言葉自体は1980年頃に誕生しました。「医食同源」という思想が薬膳の根本にあり、「未病を治す」予防医学として発展してきたのです。
現代における薬膳は、料理のジャンルではなく食材の性質を理解して体に合わせて組み合わせる考え方や方法論です。
スーパーで買える身近な食材だけでも実践でき、美味しさも薬膳の重要な定義の一部とされています。
薬膳の定義を正しく理解し、その歴史と理論を知ることで、より効果的に日常生活に取り入れられます。
中医学理論に基づいた食材の組み合わせを意識しながら、美味しく楽しい食事を通じて健康を維持していきましょう!
