薬膳はメディカルフードなのか?定義から整理する違いと正しい位置づけ

「薬膳ってメディカルフードなの?」「医療食品とは何が違うの?」そんな疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

薬膳という言葉は広く知られているものの、その正確な位置づけについては曖昧な理解のまま過ごしている人が少なくありません。特に「医食同源」という言葉の影響で、薬膳が医療的な食品だと誤解されることもあります。

この記事では、薬膳とメディカルフードの定義をそれぞれ整理しながら、両者の違いと正しい位置づけについて詳しくお伝えしていきます。定義を正しく理解することで、薬膳の適切な活用法が見えてくるはずです!

薬膳とは何か?まず押さえるべき基本的な定義と考え方

 

「薬膳って結局何なの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

メディカルフードとの違いを理解するには、まず薬膳の定義をしっかり押さえておく必要があります。

ここではまず、薬膳の基本的な定義と考え方を整理していきます。土台を固めることで、後半の比較がより明確に理解できるはずです!

薬膳は中国伝統医学(中医学)に基づく食養生という位置づけ

薬膳とは、中国伝統医学(中医学)の理論に基づいて、食材を選び、体調や体質に合わせて組み立てる食養生のこと。

つまり、特定の食品や料理を指すのではなく、「どのような考え方で食事を組み立てるか」という思想そのものが薬膳です。

たとえば、体を温める食材を選ぶのか、熱を冷ます食材を選ぶのか、気を補う食材を選ぶのかといった判断は、すべて中医学の理論に基づいて行われます。

このように、薬膳は中医学という体系の中で、食を通じて体を整えるアプローチとして位置づけられているのです。

「健康食」や「滋養食」とは何が違うのか

「健康食」や「滋養食」というと、栄養バランスが良い食事や、体に良い食材を使った料理を思い浮かべる人が多いかもしれません。

しかし薬膳は、単に栄養価が高い食事を指すわけではありません。なぜなら、その人の体質や体調、季節や環境に合わせて食材を選ぶという「個別性」が重視されるからです。

たとえば、同じ「滋養がある」とされる鶏肉でも、体を温める作用があるため、熱がこもっている人には適さない場合があります。

このように、「誰にでも良い」という視点ではなく、「その人に合っているか」を判断する点が、一般的な健康食や滋養食との大きな違いといえます。

薬としての漢方と、食としての薬膳の違い

「漢方は薬で、薬膳は食事」という理解をしている人は多いかもしれません。

実際、中医学の世界では「薬食同源」という考え方があり、食材と生薬の境界は曖昧です。多くの食材が薬としても用いられてきました。

ただし、漢方薬は一般的に作用が強く、病気の治療を目的として処方されます。一方、薬膳は日常的に摂取できる食材を使い、予防や養生を目的とするものです。

つまり、両者は中医学という同じ理論に基づいていますが、目的や使い方、作用の強さが異なるのです。薬膳はあくまで「食」の範疇に留まり、医薬品ではありません。

メディカルフードとは?医療分野で使われる食品の定義を整理する

薬膳との違いを理解するためには、メディカルフードがどのようなものかを正確に把握しておく必要があります。

メディカルフードという言葉は、医療の現場で使われる特定の食品を指す言葉です。

ここからは、メディカルフードの定義と、どのような場面で使われるのかについてお話ししていきます!

メディカルフード(医療食品)という言葉の一般的な定義

メディカルフードとは、一般的に「医療管理下で使用される、特定の疾患や症状を持つ人のための食品」を指します。

アメリカでは、FDA(アメリカ食品医薬品局)がメディカルフードを「医師の監督下で、特定の疾患の栄養管理のために摂取される食品」と定義しています。

日本では、メディカルフードという明確な法的定義はないものの、医療機関で使用される栄養管理食品や、特定疾患用の食品を指す言葉として使われることが多いです。

いずれにしても、メディカルフードは一般の食品とは異なり、医療的な目的を持った食品として扱われるのが特徴といえます。

医療管理下で使われる食品が前提になる理由

メディカルフードが医療管理下で使われることを前提としているのには、理由があります。

それは、特定の疾患を持つ人にとって、食事は治療の一環として非常に重要だからです。たとえば、腎臓病の人はタンパク質や塩分の摂取量を厳密に管理する必要があります。

このような場合、医師や管理栄養士の指導のもとで、適切な食品を選び、摂取量をコントロールすることが求められます。

つまり、メディカルフードは自己判断で使うものではなく、専門家の管理下で使用されることが前提となっているのです。

特定疾患用食品・栄養管理食品との関係

日本では、「特定疾患用食品」や「栄養管理食品」といった言葉も使われます。

特定疾患用食品とは、腎臓病、糖尿病、嚥下困難など、特定の病気や症状に対応した食品のこと。たとえば、低タンパク質食品や、とろみ調整食品などが該当します。

栄養管理食品は、医療機関や介護施設で使われる、栄養管理を目的とした食品を指します。これらは、患者や利用者の状態に合わせて選ばれ、管理されます。

メディカルフードは、これらの食品を包括する広い概念として理解されることが多く、いずれも医療や介護の現場で専門家の管理下で使われる点が共通しています。

薬膳はメディカルフードなのか?定義から見る共通点と違い

ここまで、薬膳とメディカルフードそれぞれの定義を整理してきました。

では、薬膳はメディカルフードと呼べるのでしょうか。ここからは、両者の共通点と違いを比較していきます!

両者に共通する「健康状態に合わせた食」という考え方

薬膳とメディカルフードには、確かに共通する部分があります。

それは、どちらも「その人の健康状態に合わせて食を選ぶ」という考え方です。一律に「これが良い」というのではなく、個別の状態に応じて適切な食を提供するという点で、両者は似ています。

たとえば、メディカルフードでは腎臓病の人には低タンパク質食品を、薬膳では冷え性の人には温性の食材を選ぶといった具合です。

このように、個別性を重視するという姿勢は、薬膳とメディカルフードに共通する特徴といえます。

決定的に異なるポイント|医療管理の有無と目的の違い

しかし、薬膳とメディカルフードには決定的な違いがあります。

第一に、メディカルフードは医療管理下で使用されることが前提ですが、薬膳は日常の食養生として、個人が自由に取り入れるものです。

第二に、目的が異なります。メディカルフードは特定の疾患の治療や症状の管理を目的としていますが、薬膳は予防や体質改善、日常的な体調管理を目的としています。

たとえば、糖尿病の人が医師の指導のもとで使う糖質管理食品はメディカルフードですが、「甘いものを食べすぎたから胃腸を休めよう」と薬膳的に食材を選ぶのは、あくまで日常の養生です。

このように、使用される文脈と目的が大きく異なるのです。

定義上、薬膳をメディカルフードと呼べない理由

以上の違いから、定義上、薬膳をメディカルフードと呼ぶことはできません。

なぜなら、メディカルフードは医療管理下で特定疾患の栄養管理に使われる食品であり、薬膳は中医学に基づく日常の食養生だからです。

もちろん、薬膳の中には病気の予防や回復期のサポートに役立つ考え方もありますが、それは医療行為ではなく、あくまで食を通じた養生の範囲に留まります。

したがって、薬膳とメディカルフードは別のカテゴリーに属するものと理解すべきです。両者を混同せず、それぞれの役割を正しく認識することが大切といえます。

なぜ薬膳は”医療食品”と誤解されやすいのか|医食同源の考え方

「薬膳は体に良い」「薬膳は病気を防ぐ」といった表現から、薬膳が医療食品のように捉えられることがあります。

この誤解はなぜ生まれやすいのでしょうか。その背景には、「医食同源」という思想があります。

ここでは、医食同源の本来の意味と、誤解が生まれやすいポイントについてお話ししていきます!

「医食同源」という思想が持つ本来の意味

「医食同源」とは、「医療と食事は同じ源から生まれたもの」という意味の言葉。

中国では古くから、病気を治す薬と、日常の食事は、どちらも体を健やかに保つための手段として捉えられてきました。両者は別々のものではなく、連続的なものと考えられていたのです。

ただし、これは「食事が薬と同じ効果を持つ」という意味ではありません。むしろ、「日頃の食事を大切にすることで、病気を予防できる」という予防の思想が込められています。

つまり、医食同源とは、食の重要性を説く考え方であり、食事を医療行為と同一視する思想ではないのです。

薬と食の境界が曖昧に語られてきた歴史的背景

中医学では、食材と生薬の境界が曖昧です。

たとえば、生姜やナツメ、クコの実などは、日常の食材としても使われますが、漢方薬の材料としても用いられます。このように、同じものが「食」としても「薬」としても扱われてきた歴史があります。

この背景から、「食材にも薬のような効果がある」という表現がされることがあり、薬膳が医療的なものとして捉えられやすくなったのです。

しかし、食材として使う場合と、生薬として処方される場合では、使用量や目的、作用の強さが異なります。この違いを理解せずに、両者を同一視することが誤解を生む原因となっています。

現代において誤解が生まれやすいポイント

現代では、健康志向の高まりとともに、薬膳が注目されるようになりました。

しかし、その過程で「薬膳を食べれば病気が治る」「薬膳には薬のような効果がある」といった誇張された表現がされることもあります。

また、「医食同源」という言葉が独り歩きして、食事が医療の代わりになるという誤解を生むこともあるのです。

さらに、薬膳が「薬」という字を含むため、医療的なイメージを持たれやすいという側面もあります。こうした言葉のイメージが、誤解を助長している面も否定できません。

大切なのは、薬膳はあくまで日常の食養生であり、医療行為ではないという前提を正しく理解することです。

定義を正しく理解すると分かる、薬膳でできること・できないこと

薬膳とメディカルフードの違いを理解すると、薬膳にできることとできないことが明確に見えてきます。

ここでは、薬膳の役割と限界について、整理してお伝えしていきます!

薬膳で期待できる役割|日常の体調管理・予防

薬膳が得意とするのは、日常的な体調管理と予防です。

たとえば、季節の変化に合わせて体を整える、疲れやすい体質を改善する、冷えやすい体を温める、胃腸の調子を整えるといった目的には、薬膳の考え方が役立ちます。

また、病気になる前の「未病」の段階で、小さな不調に気づいて食事で対処することも、薬膳の重要な役割です。

このように、健康な状態を維持し、不調を未然に防ぐという点で、薬膳は大きな価値を持っています。日常生活の中で無理なく取り入れられる点も、薬膳の強みといえます。

薬膳では代替できない医療行為の領域

一方で、薬膳では代替できない領域もあります。

それは、急性の病気や重篤な症状の治療です。たとえば、感染症、怪我、臓器の重大な疾患などは、医療機関での適切な治療が必要です。

また、慢性疾患の管理についても、医師の指導のもとで行うべきものであり、薬膳だけで対処できるものではありません。

薬膳はあくまで食養生であり、医薬品のような治療効果を期待するものではないのです。したがって、病気の治療が必要な場合は、必ず医療機関を受診することが前提となります。

不調がある場合に気をつけるべき考え方

「なんとなく調子が悪い」という程度の不調であれば、薬膳の考え方で食事を整えることは有効です。

しかし、不調が長引く場合や、症状が重い場合は、自己判断で薬膳だけに頼るのは危険です。なぜなら、背後に重大な病気が隠れている可能性もあるからです。

また、持病がある方や薬を服用している方は、食材によっては薬の効果に影響を与えることもあります。

このような場合は、医師や薬剤師に相談しながら、適切な範囲で薬膳を取り入れることが大切です。薬膳は医療を補完するものであり、代替するものではないという認識を持っておきましょう。

薬膳を紹介・実践する際に知っておきたい注意点と正しい表現

薬膳の定義を正しく理解したら、次に大切なのは、適切な表現で紹介・実践することです。

特に、薬膳を他者に伝える立場にある人は、誤解を与えない表現を心がける必要があります。

ここでは、薬膳を扱う際の注意点と、正しい表現の考え方についてお伝えしていきます!

「治る」「効く」と言い切らないための表現の考え方

薬膳を紹介する際、「〇〇が治る」「〇〇に効く」といった断定的な表現は避けるべきです。

なぜなら、薬膳は医薬品ではなく、病気を治療する効果を保証するものではないからです。また、このような表現は薬機法に抵触する可能性もあります。

代わりに、「体を整えるサポートになる」「日常的な体調管理に役立つ」「予防的なアプローチとして取り入れられる」といった表現を使うことをオススメします。

たとえば、「冷え性が治る」ではなく「体を温める食材を取り入れることで、冷えにくい体づくりをサポートする」といった言い方です。このように、可能性や方向性を示す表現を選ぶことが大切といえます。

発信者・実践者が意識すべき線引き

薬膳を発信する立場にある人は、医療との線引きを明確にすることが重要です。

具体的には、薬膳はあくまで食養生であり、病気の診断や治療を目的とするものではないことを、常に明示しておく必要があります。

また、「この食材を食べれば病気が治る」といった誤解を与えるような表現は避け、あくまで日常的な体調管理や予防の範囲であることを伝えましょう。

実践者としても、不調が続く場合や症状が重い場合は、自己判断で薬膳だけに頼らず、医療機関を受診することが大切です。薬膳は医療を補完するものであるという認識を持ち、適切な範囲で活用することが求められます。

初心者が安心して薬膳を取り入れるためのポイント

初心者が薬膳を始める際は、まず「完璧を目指さない」ことが大切です。

薬膳の理論は奥深いため、最初からすべてを理解しようとすると、かえって混乱してしまいます。まずは、「季節に合った食材を選ぶ」「体を冷やしすぎない」「温かいものを摂る」といった簡単なことから始めてみることをオススメします。

また、自分の体質や状態を正確に判断するのは難しいため、不安な場合は専門家に相談するのも良い方法です。

そして何より、薬膳を楽しむ気持ちを大切にしてください。「これを食べなければいけない」という義務感ではなく、「体に合った食事を選ぶと気持ちいい」という感覚で取り組むことで、無理なく続けられます。

焦らず、少しずつ薬膳の考え方を生活に取り入れてみてください!

まとめ

薬膳とは、中国伝統医学に基づく食養生であり、日常的な体調管理や予防を目的としたアプローチです。一方、メディカルフードは医療管理下で特定疾患の栄養管理に使われる食品を指します。

両者には「健康状態に合わせた食」という共通点がありますが、医療管理の有無や目的が大きく異なるため、定義上、薬膳をメディカルフードと呼ぶことはできません。

薬膳は「医食同源」という思想から、医療食品と誤解されやすい面がありますが、あくまで日常の食養生であり、医療行為ではないという前提を正しく理解することが大切です。

薬膳でできるのは、日常の体調管理と予防。病気の治療が必要な場合は、必ず医療機関を受診しましょう。

正しい定義を理解した上で、無理なく薬膳を取り入れることをオススメします!